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日本民藝館が教えてくれる「日常」の味わい

「日本民藝館」(目黒区駒場)で現在、柳宗悦の集めた民芸品からとくに「愛らしい」品々をピックアップした特別展「愛される民藝のかたちー館長 深澤直人がえらぶ」が開催されている。アクセスは京王井の頭線「駒場東大前駅」西口から徒歩7分、または東急本店横から山手通りを抜ければ、渋谷からでも徒歩25分くらい。ちょっとしたお散歩コースにちょうど良い距離といえるだろう。
日本民藝館本館の外観。旧館部分および画像手前の石塀は国の有形文化財に登録される。

日本民藝館は1936年、「民藝」という新しい美の概念の普及と「美の生活化」を目指す民藝運動の拠点として、思想家の柳宗悦を館長に開設。陶磁器・染織品・木漆工品・絵画・金工品・石工品・編組品など宗悦が集めた国内外の新古工芸品約17,000点を収蔵し、「民藝品の蒐集や保管」「民藝に関する調査研究」「民藝思想の普及」「展覧会」を主な仕事として活動している。
本館2階・第2室。柳宗悦と民藝運動を推進したバーナード・リーチ、河井寛次郎らの作品を中心に展示する。※展示品は現在展示中のものとは異なる

施設は有形文化財に登録される旧館部分を含む「本館」、宗悦が72歳で没するまで生活の拠点とした「西館(旧柳宗悦邸)」で構成される。本館では部屋ごとに染織、木漆工などのテーマを設けて工芸品を展示するほか、2階大広間では企画展を実施。1階には新作工芸品を取り扱うミュージアムショップも置く。旧館・西館ともに宗悦が設計を手がけており、和の意匠を施しながら随所に洋風を取り入れた建物独自の雰囲気も魅力。
本館1階・ミュージアムショップ。全国から集めた新作工芸品を取り扱う。

現在開催中の特別展「愛される民藝のかたちー館長 深澤直人がえらぶ」は、民藝館5代目館長にプロダクトデザイナーの深澤直人さんが就任し、3年目を迎えることをきっかけに企画されたもの。

黒板に朱で文字を入れたシンプルなキャプションも目を引く

宗悦の収蔵品に「人を拒絶しない愛くるしさ」を感じてきたという深澤さんが、収蔵品の中でもとくに「愛らしさ」を伝える品約150点を厳選。18世紀アメリカニューメキシコ州の祭壇画の聖人の表情、20世紀前半の沖縄の朱漆片口の丸みと艶、朝鮮時代の染付家形水滴の屋根の色合いなどを見どころに、職人たちの虚心な手仕事によって生まれた民藝品の数々が並ぶ。
本館2階・大展示室。現在開催中の「愛される民藝のかたち」。

民藝館には現在、企画展以外にも少数民族のお面から魚を採るかごまでが一堂に並んでいる。時代もジャンルもバラバラなそれらに共通するのは、作り手や使い手が品物に込めた「思い」が見るものにあたたかく伝わってくること。そしてそんな工芸品の魅力を味わって自宅に帰ってみると、キッチン用具や筆記用具などの使い慣れた雑貨の数々が、急に自分にとって特別な、自分の人生に潤いを与えてくれる品々のように見えてくるから不思議だ。民藝館が教えてくれるのは民藝品の魅力だけではなく、そんな身近な要素に美しさを見出し、味わおうとする生活態度そのもの。誰が評価しなくても、高価なものでなくたって、大切で愛しい物はもしかして自分の身近に隠れているのかも。

あなたも自分の日常を豊かにするためのヒントを、見つけに来てみては?

「日本民藝館」
◯住所:東京都目黒区駒場4-3-33
◯開館:10時〜17時(最終入館は16時30分まで)
※西館(旧柳宗悦邸)は展覧会開催中の第2水曜、第2土曜、第3水曜、第3土曜に公開 (10時〜16時30分、最終入館は16時まで)
◯休館:毎週月曜日(但し祝日の場合は開館し翌日休館)年末年始、陳列替え等に伴う臨時休館有り
◯料金:大人1,100円、高大生600円、小中生200円ほか
◯電話:03-3467-4527
◯公式:http://www.mingeikan.or.jp/

特別展「愛される民藝のかたち―館長 深澤直人がえらぶ」
〇開催:2015年3月31日(火)〜6月21日(日)

編集部・横田

1980年生まれ、神奈川県在住。大学進学を期に上京して以来渋谷はカルチャーの聖地です。現在は渋谷文化プロジェクト編集部に所属しながら、介護士として働くニ足のわらじ生活です。

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