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渋谷区郷土博物館で「懐かしき昭和の暮らし」展―「とと姉ちゃん」と重なる当時の暮らし

昨年、人気を博したNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」を、毎朝楽しみにしていた人もきっと多いことだろう。主人公・小橋常子のモデルは、生活総合誌「暮らしの手帖」を創刊した大橋鎮子さんだ。「当たり前の暮らしを大切にすること」をモットーに同誌を立ち上げ、生活に役立つ情報をおくり届けて、戦後の貧しい庶民の暮らしを支えた功労者の一人として知られる。戦後昭和の暮らしは、決して物質的には豊かではなかったが、大橋さんらの趣向を凝らしたアイデアや知恵が、庶民の暮らしの向上に大いに貢献したことは言うまでもない。

戦後70年が過ぎ、白根記念渋谷区郷土博物館・文学館で現在、「とと姉ちゃん」が生きてきた「戦後昭和」を振り返る企画展「懐かしき昭和の暮らし」が開催されている。
同企画は「家電」「住宅」「流行」という3つの視点から、戦後昭和の庶民の暮らしを読み解くもの。展示方法は「家電」「住宅」「流行」のカテゴリーに合わせた展示資料と、その内容に連動する当時の「暮らしの手帖」の特集号を並べて展示し、「とと姉ちゃん」の劇中で描かれたエピソードと重ね合わせながら楽しめる趣向だ。

「暮らしと家電」−闇市の「電熱器」から高度経済成長期の「三種の神器」まで
まず、入り口を入って直ぐの展示コーナーは「暮らしと家電」。戦後、金属不足の中で、航空機用などに集められたジュラルミンが放出され、ジュラルミン製の商品が大量に出回ったという。今回の展示品の中にも、渋谷の闇市で売られていたという「ジュラルミン製の電熱器」(昭和20年頃)が公開。戦後、家電業界などの復興のきっかけは、そもそもワシントンハイツ(現在、代々木公園)など、進駐軍の軍人やその家族向けの住宅建設に伴い、家具や家電、什器などの需用が生まれてきたことが大きい。進駐軍から提供された設計図を元に、日本の各メーカーがアメリカの最新技術を学び、その後の家電業界の発展の手がかりとなった。
左写真は「進駐軍払い下げの革ジャン」(昭和20〜30年頃)。
ワシントンハイツの周辺には、進駐軍払い下げの商品を売る売店が数多くあったという

戦後、過重な家事労働から女性を解放したのは「洗濯機」だった。余暇を楽しむ時間が生まれ、女性の社会進出を促進にも大きな影響を与えた家電の一つだ。同スペースでは、当時、高級だった東芝製小型洗濯機「TYPE-P」(昭和27年製造)や、手動式洗濯機「カモメホーム洗濯機」(昭和32〜45年)などが並ぶ。「とと姉ちゃん」の劇中で、架空の電化製品メーカー「アカバネ電器製造」との熾烈な商品試験バトルが繰り広げられたのを記憶している人も多いと思うが、「暮しの手帖」が特集した「洗濯機12種」の商品テストの実際の記事も掲出されている。
そのほか、「洗濯機」と同じく、「三種の神器」として庶民の憧れ家電であった「テレビ」「冷蔵庫」なども展示されている。

「住宅と暮らし」−戦後焼け野原から宮益アパートなど「集合住宅」まで
「家電」に続き、「住宅と暮らし」コーナー。渋谷区は東京大空襲で総面積の77%を焼失し、一面焼け野原に。終戦後、人びとはバラックなど簡易的な小屋を建てて、生活し始める。特に昭和21年から10年間は統制経済の下で、建築資材の不足から12坪を超える住宅建設が許されず、家族で狭い住宅で身を寄せ合い生活する姿も珍しくなかったという。「とと姉ちゃん」の中でも、狭い住まいを模様替えする工夫を行い、片桐はいりさん演じる女学校時代の恩師・東堂チヨさん夫婦の心を癒やす、というエピソードがあった。戦後とはいえ、当時の人びとが狭い住まいに強い不満を募らせていたことがうかがえる。同スペースでは「12坪制限住宅」(昭和25年頃)や、統制解除後に「ダイニングキッチン」などを取り入れたアメリカンスタイルの住宅に増改築するなど、住宅事情の変化。さらに木造平屋で1棟を2軒分に区切った都営住宅「幡ヶ谷第2住宅」(昭和23年度)や、4階建ての集合住宅「参宮橋アパート」(昭和26年)、「代々木山谷アパート」(昭和27年)など、住宅不足を解決するために次々に建設された「公営住宅」の変遷を紹介している。

また見逃せないのは、日本で初めての鉄筋コンクリート造分譲集合住宅であった「宮益アパート」(昭和28年)だ。渋谷駅にほど近く、渋谷ヒカリエに隣接する築60年以上の同アパートは現在、建て直し工事が進められている。実はこのアパートが出来た当初は、エレベーターにエレベーターガールが同乗していたほどの超高級住宅であった。セントラルヒーティングが完備され、各階にはダストシュート、エレベーターホールには郵便を投函するメールシューターなど、当時の最先端設備が備えられていたという。
各階の部屋の間取りのほか、解体工事前に取り外された「エレベーター階表示板」や「トイレ・玄関兼用照明」「バスハンドル」「ガラス製トイレノブ」などの部品やプレートが展示されている。ちなみに「宮益アパート」は、2019年に地上15階地下2階建ての「複合用途型マンション」に生まれ変わるそうだ。

「流行と暮らし」−「直線裁ち」のワンピースから昭和レトロな玩具まで
最後は「流行と暮らし」コーナー。戦時中の衣類品制限への反動やアメリカ文化への憧れから、戦後、洋服の普及が一気に加速していく。進駐軍の軍人の妻たちの着こなしを手本として、昭和23年頃には和服を洋服風に仕立て直した「更生服」が登場。「とと姉ちゃん」の中でも、着物をリメイクした「直線裁ち」のワンピースなどが紹介されていた。
50年代は、映画「君の名は」(昭和28年)で岸恵子さんが着用していたストールが「真知子巻」として流行、「ローマの休日」(昭和28年)のオードリ・ヘップバーンの髪型が人気を集めるなど、映画がファッションに強い影響を与えたという。会場には、夏用の婦人服であるアッパッパやパンタロン、ベルボトムのパンツ、カミナリ族の革ジャンなど、懐かしいファッションアイテムが展示される。そのほか、衣類以外では「子どもと流行」として、仮面ライダーやウルトラマン、ゴジラなどのおもちゃ、当時の流行歌など昭和レトロを感じるアイテムが数多く並ぶ。
会場の一角には、昭和30〜40年頃の一般家庭の居間を再現。黒い固定電話や白黒テレビ、子どものチャンバラごっこの道具など、思わず郷愁感を誘う、懐かしい光景に出会える。

同時代を生きてきた人は当時を懐かしみ、当時を知らない世代の人びとは、今日に至るまでの歴史の変遷を知る貴重な機会になるのではないでしょうか。ぜひ会期中に足をお運びください。

企画展「なつかしき昭和の暮らし」
〇会期:平成29年1月31日(火)〜3月26日(日)
〇時間:11:00〜17:00
〇場所:白根記念渋谷区郷土博物館・文学館
〇住所:渋谷区東4丁目9−1
〇料金:一般100円、小中学生50円
〇公式:https://www.city.shibuya.tokyo.jp/edu/koza/12kyodo/kyodoindex.html#1

編集部・フジイ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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