現在、渋谷界隈では『ヴィクトリア アンド アルバート美術館 所蔵初公開浮世絵名品展』・『風俗画と肉筆浮世絵』と、浮世絵を扱った展示が同時期に開催されている。また、『特集 1960〜1970年代 日本のアヴァンギャルド アングラ時代のポスター展』に展示された60〜70年代を席巻した前衛的ポスターのデザインからも、どこか浮世絵的な色づかいや影響を認めることができるだろうし、『東京画─ささやかなワタシのニチジョウのフーケイ』で紹介されている新世代のアーティストたちによる作品展でも、平面的で背景の描き込みの少ないドローイングやペインティングが印象的だった。
平安時代の作とされる「鳥獣人物戯画」にはじまり、江戸時代に浮世絵に見られる日本の伝統的な絵画表現が、現在の漫画やアニメーションのルーツとして国内外から高く評価されているのは周知の通り。これらの展示を通して、村上隆が提唱した『スーパーフラット』という言葉に代表される、平板で描き込みの少ない日本独自の絵画表現に流れるDNAを垣間見ることができるだろう。また、『寓意の入れもの─AN ALLEGORICAL VESSEL』やギャラリーエスで開催中の2展の作品も、平面性や色彩感覚に注目して見るとまた違う印象を受けるかもしれない。この機会に、現代の漫画やアニメに共通する日本の伝統美術に息づく平面性と色彩感覚を改めて見直してみよう。

![]() 「冨嶽三十六景 凱風快晴」(6月展示)©V&A Images/Victoria and Albert Museum. |
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25,000点という世界有数の浮世絵コレクションを持つイギリスのヴィクトリア&アルバート美術館所蔵の浮世絵展。葛飾北斎、歌川広重、喜多川歌麿といった人気浮世絵師から、歌川国芳や河鍋暁斎といった型破りな浮世絵師による錦絵まで、貴重な名品が展示されている。「葛飾北斎の若い頃の美人画や肉筆画帖は、大変貴重な資料として高い評価をされています。滅多に現存することのない版下絵や団扇絵なども見どころです。」(太田記念美術館/担当者) |
![]() 写真:蚊帳美人喫煙図(前期展示) |
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たばこと塩の博物館が収蔵する19世紀までに描かれた肉筆絵画の中から、会期を前後期に分け、約60点を展示している。概ね時代を追った構成とし、塩を描いた作品(塩汲みや塩焼きなどの製塩風俗)の多くは後期にまとめられている。また、コンピュータを使って絵巻などの全段(図)をデジタルで取り込み、実物を巻き上げて鑑賞する雰囲気を作るなど、趣向を凝らしている。 |
![]() 会場展示風景 |
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1960〜70年代にかけて主に演劇公演のために作られたポスターは、単なる「告知」の枠を超え当時のカウンター・カルチャーの先導的役割を果たし一つの芸術として位置づけられている。「これらのポスターには、アングラならではの遊び心が詰まっていて、エネルギッシュな時代を反映した自由度の高い表現が特徴的です。ポスターに負けず劣らず公演自体がどれだけアヴァンギャルドだったのかと想像させられます。」(Bunkamuraギャラリー/担当者) |

左:細江英公+横尾忠則「薔薇刑(三島由紀夫)」2007年 シルクスクリーン 両者のサイン有り
右:宇野亜喜良「星の王子さま」演劇実験室 天井桟敷 1968年 シルクスクリーン

![]() 須藤由希子 「緑化マンション」 2004 |
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トーキョーワンダーサイト関連のアーティストサポートプログラムに携わった若手アーティストによる「東京」の今を映し出す展示。会期中も各作家がドローイングを持ち寄るなどして場(サイト)を作り続ける形式をとり、旬な感性を通じた東京の風景、心象、派生するイメージが会場につむがれる。「GEISAI#10」で金賞を獲得した奈良エナミに代表される、余白が多く不定形の塊で描かれた人物や群衆はまるで、東京の、渋谷の「現在地」を表す地図のようにも見えてくる。 |

奈良エナミ「fight」2007年 640×810mm 和紙に木版
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松井智惠の新作平面作品による展覧会。HACOの新しいアルバム『RISKA』のジャケット・アートワークを手がけた事がきっかけで産み出された一連の絵物語風作品を、数点の油彩を中心に水彩画も含め展示する。 |
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人間には思いもつかない色使いや形体を持つ動植物に触発され、生き物だけがもつ強烈な生命力をペンによって隙間なく編み込むように描いてきた金子健太郎の2度目の個展。愛らしさ、毒々しさ、不可思議さ、息づかい等、生命力に溢れた動物達を描いている。 |
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「日々暮らしている中で気づかぬうちに物事は変化してゆく。何も考えずにいると知らぬ間に時が経ってしまう。自然は季節によって変化をし成長をする。その変化を見つけたときに、私自身も変化や成長を遂げたのだろうか、そんな自問自答をしながら、植物や風景を描き続けている。」(作家コメント) |