SHIBUYA BUNKA BOOKMARK

常磐松小学校周辺

渋谷の「文学」が生まれる場所

神谷さんは実践女子学園大学院では日本文学を専攻し、特に写生文や滝井孝作などの研究をしていたとのこと。
氷川神社と金王神社の間の交差点付近には、神谷さんが学生当時からあったお店が今も営業を続けている。
同館で販売している『新・渋谷の文学』(写真左・渋谷区教育委員会発行・1000円)と常設展示図録(800円)。

白根記念渋谷区郷土博物館・文学館 神谷早苗さんのbookmarkは「常磐松小学校周辺」
國學院大学前の交差点を少し上ったところにある白根記念渋谷区郷土博物館・文学館。リニューアルオープンしてからちょうど1年ほどの小綺麗な建物では、特別展「文芸評論家 奥野健男の仕事」(6月6日〜7月30日)が開催されている。同館で非常勤の学芸員をしている神谷早苗さんのbookmarkは、同館の側にある「常磐松小学校周辺」。高校、大学、大学院と同館近くの実践女子学園で過ごした神谷さんにとって、氷川神社から金王神社へ抜ける通りのあたりは思い入れの深い場所。「学生の時によく通った喫茶店や、老舗の和菓子屋『千本堂』、楽器店などが今もまだ営業していて懐かしかった。特に交差点にある魚屋さんは当時のままの店構えで残っていて驚いた」とこの場所との縁を語る。また、博物館地下に併設されている文学館では、志賀直哉や三島由紀夫、竹久夢二、与謝野鉄幹・晶子夫妻など、渋谷にゆかりのある文学者の居住期間や住居の場所がグラフや地図で示されていたり、当時の渋谷に関する記述が紹介されており、著名作家たちの暮らしぶりを身近に感じることができる。「志賀直哉の家も当館の近所にあり、志賀邸は文学者が、奥野邸は『文学青年たちの巣だった』という記述がある。与謝野夫妻の『明星』や伊藤左千夫の『アララギ』、奥野健男の『現代批評』なども渋谷から生まれた。そういう意味では文化の発信地と言えるのでしょう」と神谷さん。

MUSEUM'S INFORMATION

白根記念渋谷区郷土博物館・文学館は「渋谷区立白根記念郷土文化館」として1975年に開館し、昨年の7月に文学館を併設する形でリニューアルオープンした。渋谷の歴史や文学に関する様々な資料を所有・保存しており、その時々の企画展や講演会などのほか、テーマに沿って渋谷の街を歩くツアーなども開催している。現在は、生涯を渋谷で過ごした文芸評論家でもあり、演劇・美術・科学など多彩なジャンルで活躍した奥野建男(写真)の生涯を紹介する展示が行われている。奥野の文壇デビュー作が『太宰治論』であることから、太宰の誕生日でもある桜桃忌にちなんでの開催となった。特別展示室には自筆の原稿や写真、数々の記念品のほか、親交の深かった三島由紀夫から贈られたというアンティーク風のランプなどが展示されており、地下の文学館の一角には奥野の書斎がそのまま再現されている。同展の企画に携わった神谷さんは「奥野さんの演劇・美術・科学など異なるジャンルを結びつける活動こそが、評論の視点にも現れているように感じる」と解説してくれた。

白根記念渋谷区郷土博物館・文学館
渋谷区東4-9-1

TEL.03-3486-2791

(2006年07月21日 14:10:00)

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