SHIBUYA BUNKA SPECIAL

ダンストリエンナーレ TOKYO 2006 〜参加ダンサー・ダンスカンパニー紹介〜

「ダンストリエンナーレ」に参加するダンサーや音楽家5名に、ダンスを始めた「きっかけ」やコンテンポラリーダンスの面白さ、今回の作品のコンセプトなどについて語っていただきました。演じる側から見たコンテンポラリーダンスの魅力とはどのあたりにあるのでしょうか?各カンパニーのダンサーは、振付やテーマ、ストーリーはもちろん、舞台美術や照明や音響、さらには「お客さんがどのように感じるか」に至るまで意識を配り、かつイメージした通りに実際に体を動かさなければなりません。総合芸術である「ダンス作品」が生まれるまでには、大変な試行錯誤がありそうです。

コンテンポラリー・ダンスの基本の『き』


  「ダンストリエンナーレ」参加ダンサー・音楽家に聞きました。 
遠田誠/まことクラヴ
遠田誠/まことクラヴ 2001年より各地に出没している部活集団。ダンス・パフォーマンス、諧謔、グラフィック・デザイン等を武器に、電車内/商店街/路地/駅のホーム/歴史建造物内等、公共空間で突発的に行われる“屋外活動”の映像と舞台作品とを対峙させた手法による「部活動報告会vol.1」、「迷宮神楽坂」、「please! peach boy.」他を発表。2005年東京コンペ #2にて、ダンスバザール大賞を受賞。

--ダンスを始めたきっかけを教えて下さい。

十数年前。我が道と決めたプロダクト・デザインの方向性に行き詰った当時の状況を打開すべく、闇雲に色んな事にチャレンジしてみようと片足突っ込んだところ、ダンスの底無し沼にズブズブはまり現在に至る。

--コンテンポラリーダンスの面白さ、魅力とは?

「コレをやっときゃいい」という鉄壁の方法論が無い為、やる側は常に暗中模索して時に喝采を浴び、時に信じられない位の大ハズシをやらかし顰蹙を買う。そのスリリングさ。当たりハズレの振れ幅のデカさ。しかも観客一人一人が、それぞれ当たりハズレのマイ基準を持っているというオソロシサ。そんなところでしょうか。

--今回のダンストリエンナーレで発表する作品の見どころを教えて下さい。

2005年12月末に青山劇場で行ったものの再演です。「バレエを学ぶ子供たちの為のクリスマス・プレゼント」という初演時の企画意図に沿って作られた作品が、再演ではどう変化していくのか? また、普通の四角い劇場用に作った作品を、どう半円形の舞台に当てはめていくのか?といった、作り手側の苦労をヒトゴトとして知っておくと、より楽しめるかも知れません。

上村なおか
上村なおか 石川県金沢市生まれ。お茶の水女子大学舞踊教育学科(現 芸術・表現行動学科)に在学中、木佐貫邦子に出会い、師事。néoの創立メンバーとして、木佐貫作品に数多く出演。その後、笠井叡にも師事。天使館にてダンスとオイリュトミーを学び、笠井作品に参加。1995年より自作のソロダンスを開始、次世代を担う若手ダンサーとして目覚しい飛躍をみせている2004年度第36回舞踊批評家協会新人賞受賞。2005年度より桜美林大学総合文化学群非常勤講師。

--ダンスを始めたきっかけを教えて下さい。

子供の頃、姉が喘息持ちでお医者さまから「ダンスでもやるといい」とすすめられバレエを習うことになりました。私はまだ幼く、家に置いて行く訳にもいかないので母に連れて行かれ、見ているうちに「自分もやりたい」と言い出したのがきっかけです。

--コンテンポラリーダンスの面白さ、魅力とは?

決まりごとがないだけに、自分のやりたいことの明確さ、強さが必要とされるところ。「型」が持つとてつもない強さに太刀打ちしようともがくところ。

--今回のダンストリエンナーレで発表する作品の見どころを教えて下さい。

毎回そうなのですが、身体が持つ力についてその謎を探る旅のような作品となっています。今回は女性のデュオということで、その違いと共有するものが呼吸のように現れたり消えたりするのではと期待しています。身体の在り方によって空間や時間が変容するのを感じていただけると嬉しいです。渋谷や青山は様々なことに敏感にアンテナをはっている方が多いのではないかと思います。こんなダンスもあるんだ、という出会いができるといいな、と思います。また、お客様にもそれぞれの身体がひとつずつあるので、身体を遊ぶつもりでダンスを見たり、やってみたりしてほしいと思います。ダンスは色んなところにあるのです。

種子田郷(たねだごう)
種子田郷(たねだごう) 音楽家。サウンドアートユニットproject suara主宰。ダンス・美術・映像との新しい関係性を創造するシリーズ公演「sound+dance+visual」では、作曲家で歌い手のさとうじゅんこと一緒に主催するなど、若手芸術家と数多く共演。Taguchi(音響開発・技術者)とともにジオグラフィカルでリアルなサウンドプロジェクションを実現し、自作品の発表を行っている。

--ダンスを始めたきっかけを教えて下さい。

私は音楽家として参加し、共演者はダンサーではなく俳優(女優)です。私はダンスを学んだことはありませんが、幼年から少林寺拳法や剛柔流空手道で、心と身体のバランスを整えてきました。身体表現にはとても興味があり憧れています。

--コンテンポラリーダンスの面白さ、魅力とは?

音響(スピーカーやサウンドシステム)を単なる再生や拡張のツールにとどまらない豊かな表現のための楽器としてとらえ、そのようにリアライズされたサウンドが空間芸術においては、主体性を帯びたもうひとりのパフォーマーとして最も重要なファクターのひとつであるとの考えから、音響開発・技術者との協力関係において独自の音場創成・ジオグラフィカルなサウンドプロジェクションを実現し、時空間の表現に取り組んでいます。

--今回のダンストリエンナーレで発表する作品の見どころを教えて下さい。

なぜ私がこうした作品公演を行うのかというと、コンピュータの普及によって、一見あらゆる音の表現を手にしたかのような錯覚に陥りがちなのですが、それらをプログラムする行為と表現との決定的な違いを見過ごすことが出来ないからです。我々のようなスタイルの作曲家は、記譜すると同時にプレイヤであり、それはつまりプロジェクションにも意欲を持つべきなのだと考えています。私は根気強いサウンドチェックをしながら本番直前まで音を編集し、そのテクスチュアの豊かで存在感のある音が作品へとフィードバックされる過程を大切にし、必ずライヴで演奏をします。音に耳を澄ますだけでなく、パフォーマンスや美術・照明などの要素と対等な関係において連綿と作品をつむぐ感覚は、あたかも [自分=音]が自由自在な身体を獲得して時間を描いているかのようです。

斉藤美音子/イデビアン・クルー
斉藤美音子 イデビアン・クルーの異能の振付家、井手茂太がメンバーの斉藤美音子に初めて振り付ける新作ソロ掌編。お互いの身体癖も性格も知り尽くした、付き合いの長い振付家とダンサーから生まれてくるもの。斉藤美音子は、ヘンな動きがカッコイイ、どこかユーモラスで、どこかハカナイ人間模様を描くダンスカンパニー、イデビアン・クルーのダンサー。バレエ、ジャズ、モダンなどいろいろなダンス・テクニックと柔軟な身体、とぼけたおヒメさまキャラで存在感を示している。

--ダンスを始めたきっかけを教えて下さい。

踊り子にあこがれて。

--今回のダンストリエンナーレで発表する作品の見どころを教えて下さい。

ひっぱってみたりくっつけたり、とりかえてみたりつねったり。整形したいけどでもしたくないようなウラハラな気持ちで、イデビアン・クルーのダンサー斉藤美音子が踊ります。スパイラルでダンスを観た後には、ウラ原宿やオモテ参道にお出かけくださいませ。

尹明希(ユン・ミョンフィ)
尹明希(ユン・ミョンフィ) 東京生まれ。幼い頃より朝鮮半島の民族舞踊をベースに、クラシック・バレエ、気功、ヨーガ、ミツバ・テクニークなど、東西の様々な身体技法を学び踊り続ける。母国の伝統舞踊・音楽に没入する中、その本質でもある「個」と「即興性」に開眼。1995年独自の活動を開始。1998年枇杷系ワークショップを経てメンバーとなる。特異な身体性と、ダンスの根源的なエネルギーを伝える踊りで注目を集め、国内外におけるダンス&アート・フェスティバルでの上演や、横浜トリエンナーレ2005など、劇場公演以外の作業も多い。

--ダンスを始めたきっかけを教えて下さい。

よくおぼえていませんが、6歳の春、いきなり一枚絵を描いたそうです。水彩で、舞台で踊っている女の絵。バックにはそびえ立つ岩山、滝、天女のカッコ。実際に始めたのは8歳のときに学校のクラブ活動。最初はヒドイ落ちこぼれで、いつも踊りたくなくて(虚弱体質)、自分の体が嫌いでした(中肉中背)。それが何故かしら今の今まで続いています。おそらく何かきっかけがあったのでしょう。

--コンテンポラリーダンスの面白さ、魅力とは?

当たり前なのでしょうが、イイものもあるし、トンデモナイものもある。「コンテンポラリーダンス」と括ってレコメンできるものではありませんが、同時代の/生きている・無手勝流の「時の花」と出逢えるかも!?という場所、でしょうか。こちらとしては、ケモノミチではありますが。

--今回のダンストリエンナーレで発表する作品の見どころを教えて下さい。

今回のテーマは「輪廻」で、キーワードは「変容=実体験としての生/死」「記憶」「出来事」など。…ホラーではありません(笑)。コンセプトとしては「寓話風」の質感を大切にすること。あとは、「繰り返し」の技法を選ぶこと。とはいっても、頭で整理して準備して、さあ!!とつくったのではありません。ノープランに近い状態で動き始めたところ、一気に踊りが到来した。というような、不思議な「出来事」からなのです。音楽は毎回ライブリミックスで、劇場自体を楽器として捉えることのできる牛川紀政さんなので、ダンスだけでなく、音楽に興味のある方々にも是非ご覧頂きたいです。


  「ダンストリエンナーレ」スケジュール・ダンサー紹介

A program 2006年10月22日(日)18:00開演 スパイラルホール

ローレンス・ヤディ、ニコラス・カンティロン/カンパニー7273 【スイス】
「Simple proposition」
>>本人のコメントはこちら上村なおか 【日本】
「最後の星」

B program 2006年10月29日(日)18:00開演 スパイラルホール

トンミ・キッティ/トンミ・キッティ&カンパニー 【フィンランド】
「Spiral」
>>本人のコメントはこちら斉藤美音子【日本】
「整形」振付:井手茂太

C program 2006年10月31日(火)19:00開演 青山円形劇場

チョン・ヨンドゥ/ドゥ・ダンスシアター 【韓国】
「私の持った空」
ソン・ジンジュ 【韓国】
「Keep in Touch -接触」
小池博史パパ・タラフマラ 【日本】
「三人姉妹」

D program 2006年11月2日(木)19:00開演 青山円形劇場

コンスタンツァ・マクラス/コンスタンツァ・マクラス&ドーキーパーク 【ドイツ】
「I’m not the only one」
>>本人のコメントはこちら尹明希(ユン・ミョンフィ) 【日本】
「交際とカナリア」

E program 2006年11月4日(土)19:00開演 青山円形劇場

ダニエル・デノワイエ/ル・カレデロンブ 【カナダ】
「Dous pour corps et instruments」
>>本人のコメントはこちら遠田誠/まことクラヴ 【日本】
「むつかしはなし」

F program 2006年11月6日(月)19:00開演 青山円形劇場

ダニエル・デノワイエ/ル・カレデロンブ 【カナダ】
「Dous pour corps et instruments」
ルイーズ・ルカバリエ 【カナダ】
新作・タイトル未定  振付:クリスタル・パイト
ルイーズ・ルカバリエ×今津雅晴 【カナダ・日本】
「Cobalt rouge Remix」 振付:テッド・ロビンソン

G program 2006年11月8日(水)19:00開演 青山円形劇場

アルコ・レンツ/コバルト・ワークス 【ベルギー】
「heroïne」
ルイーズ・ルカバリエ 【カナダ】
「“I” Is Memory」 振付:ブノワ・ラシャンブル
ルイーズ・ルカバリエ×今津雅晴 【カナダ・日本】
「Cobalt rouge Remix」 振付:テッド・ロビンソン

H program 2006年11月10日(金)19:00開演 青山円形劇場

ヤスミン・ゴデール 【イスラエル】
「i feel funny today」
ジュリ・ニオッシ 【フランス】
「La Sisyphe」

I program 2006年11月11日(土)19:00開演/12日(日)15:00開演 青山劇場

ギリェルメ・ボテリョ/アリアス 【スイス】
「I want to go home」
近藤良平/コンドルズ 【日本】
タイトル未定

J program 2006年11月19日(日)18:00開演 スパイラルホール

マシモ・モリコーネ 【イタリア】
「#06 & #07.2006 skin-fatman/ littlebastard」
>>本人のコメントはこちら美加理×種子田郷 【日本】
新作・タイトル未定

コンテンポラリー・ダンスの基本の『き』


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