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駅から至近の緑地として人々に憩いの空間と時間を提供してきた宮下公園。副都心線の開業により、この公園を中心とした「宮下パークエリア」に新しい人の流れが生まれ、新陳代謝が加速している。戦前、「梨本宮邸」が存在したこのエリアは、これまでにどのような変遷を辿り、さらに今後、どのような道を進んでいくのだろうか。

派手さはないものの随所に個性が光る街

緑が繁る宮下公園

JR渋谷駅から最も近い“オアシス”といえば、駅から徒歩約5分、山手線沿いに位置する宮下公園だ。広さ1万808平方メートルの園内には木々がうっそうと茂り、昼間でも少し薄暗いほど。買い物途中の若者や近隣で働く人々が一休みする姿が目立つほか、スポーツを楽しむサークルや子供たちも集まり、駅近くの貴重な緑地として幅広く利用されている。その宮下公園と並走する明治通りを渡ると、駅前の商業地域とは趣の異なる落ち着いた街並みが現れる。このエリアは文教地区に指定され高校や多くの専門学校が点在するほか、会社が多く、団地やマンションもあるため、通りを歩く人々の年齢層は幅広い。緩やかな坂を上り、青山に近づいていくほど街並みは落ち着きを増し、たびたび、感度の高いショップやカフェを目にする。そのどれもが駅前とは違い、“オトナ”のセンスに彩られている。そのように街全体に派手さはないが、随所に個性の光るスポットが点在するのがこのエリアの特性だ。

新しい人の流れが生まれる

メトロビルのふもとに出来た渋谷駅13番出口

6月14日の副都心線の開業により、渋谷を行き交う人々の動線は大きく変化した。なかでも注目されているエリアが、宮下公園、および明治通り沿いの地域からなる「宮下パークエリア」だ。その起点となっているのが、「宮下公園」の信号のある交差点、渋谷地下鉄ビルディングのふもとに設置された副都心線渋谷駅の13番出口だ。この出口に利用により、渋谷駅から青山や原宿に向かう際、駅前の雑踏を通り抜ける必要がなくなり、利便性が格段に高まった。それにより、駅前の混雑が緩和されるだけでなく、新しい人の流れが生まれることが期待されている。

大人が居心地良く過ごせる空間へ

1951年の宮下公園周辺
(白根記念渋谷郷土博物館・文学館所蔵)

まずは、宮下パークエリアの成り立ちを紐解いてみよう。渋谷1丁目にある東京都児童会館や旧渋谷小学校の一帯は、戦前、梨本宮家の本邸だった。その広さは2万坪に及び、現在の青山通りの「第一園芸」のあたりに表門、さらに「青山ツインタワー」の位置に御殿の玄関があったという。しかし第二次大戦で戦災に遭い、さらに戦後はGHQの指令により巨額の財産税を支払う必要が生じ、敷地の大半の処分を余儀なくされた。今も宮下公園に残る「宮下」という地名は、梨本宮家の“下”に位置していたことに由来する。一方、宮下公園が誕生したのは、戦後間もない1948年。当時、駅前の東横百貨店を除いて周囲には高い建物はなく、渋谷川と宇田川に挟まれた野原が整備された程度の公園だった。それが1964年の東京オリンピック開催に伴って河川が暗渠化され、さらに近い将来に訪れるであろう自動車社会を予測し、1966年に公園の敷地内に駐車場が建設された。明治通り宮下パーク商店会会長の小林俊一さんは、「日本で2番目の空中公園とあって、完成した当時は大いに話題になり、わざわざ電車に乗って親子で遊びに来る人たちも多かったですね」と、当時を振り返る。1960年代から70年代にかけては、宮下公園は学生運動の拠点になった。その背景には、「公園の使用料が安かったことから、学生団体が目を付けたようです」(小林さん)といった事情があったようだ。また明治通りには、1955年からトロリーバスが走り、渋谷と池袋を結ぶルートの一部となっていた。このルートは都バス「池86」に引き継がれ、さらに現在の副都心線に重なっている。

加速する新陳代謝

取り壊しの決まっている
東京都児童会館

今後、宮下パークエリアはどのような変遷を辿るのか。まずは1964年に開館した東京都児童会館だ。施設の充実ぶりから児童会館の“カリスマ”といわれるほどの人気の高さを誇るが、建物の老朽化により閉館が決まり、2009年に開設予定の「子ども家庭総合センター」(仮称・新宿区)に移転統合される予定だ。さらに他にも取り壊しの計画が進んでおり、今後このエリアの開発に注目が集まる。一方、2004年、路面店の多いこのエリアには珍しい大型商業施設「PICASSO347」がオープン、2006年に「cocoti(ココチ)」へとリニューアルされた。飲食店やショップのほか、映画館やフィットネス施設など、多彩な店舗・施設が入居する。cocotiを運営する東急モールズデベロップメントの青木隆さんは、「渋谷は『若者の街』というイメージが強いが、もちろん大人の方もたくさんいる。なかでも大人が多いこのエリアで、大人が居心地良く過ごせる時間や空間を提案していきたいと思います」と語る。副都心線開業後の初の土日の売上、客数とも前年を大きく上回る数字だったという。副都心線効果により人が増えているのは明らかなようだ。さらに2012年、東急東横線と副都心線の相互乗り入れが開始されるタイミングに合わせて、東急文化会館跡地に劇場などが入る地上33階の複合高層ビルが完成する予定だ。インフラの整備という追い風に乗り、今後、渋谷駅東口から宮下パークエリアの新陳代謝はますます加速していくに違いない。

宮下公園交差点
線路の奥には、タワレコ・OIOI・パルコパート2が見える。

小林俊一さん

1935年東京都生まれ。明治通り宮下パーク商店会会長。渋谷区商店会連合会中央ブロック長、NPO 渋谷・青山景観整備機構(SALF)の理事なども兼務する。

cocoti(ココチ)

TOMORROWLAND、HOTEL SLY、TOMMY HILFIGERなど、レディス&メンズのショップ9店舗に加え、インテリア2店舗、カフェ&レストラン4店舗、ほか映画館アミューズCQN、フィットネス&デイスパ ヴィラックス渋谷などが入居。旗艦店として商品・サービスを充実させるブランドショップが多い。

住所:
渋谷区渋谷一丁目23番16号
TEL:
03-5774-0124(受付時間:10:00〜18:00)
営業時間:
物販店/11:00〜21:00 (店舗により異なる)
休業日:
年中無休

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