BUNKA X PERSON

■インタビュー・「悩んでいるのは自分だけではない」と実感できました
・東京の人混みのなかで、時おり孤独を感じることがある
・「mixi」を通じて初めて映画に出演
・決断さえすれば新しいことを始めるのは決して難しくはない

■プロフィール青山華子さん 1986年東京都東村山市生まれ。千葉大学工学部デザイン工学科2年(現在は休学中)。子どもの頃からの夢は、「ロボットをつくること」。19歳の時にmixiをきっかけに映画『アディクトの優劣感』のオーディションを受け、200人の中から主演に抜擢される。


「変わりたい」という願望を抱きながら東京で暮らす8人の若い女性たち。有名でも特別でもない、“普通”の日常を送る彼女たちの内面をリアルに照らし出したドキュメンタリー映画『東京ソーダ水』が、1月12日よりUPLINK Xで上映されます。この映画を鑑賞したのは、“普通”の女子大生から、ある偶然をきっかけに『アディクトの優劣感』に出演し、女優への道を歩み始めた青山華子さん。映画の登場人物と同じ女性として、青山さんならではの視点から感想を語っていただくとともに、初主演を果たした今の心境や将来へのビジョンなどを伺いました。
「悩んでいるのは自分だけではない」と実感できました

--『東京ソーダ水』をご覧になった感想をお聞かせください。

これから変わろうとしている女性、そして変わったばかりの女性の本音がリアルに描かれていて、私自身の夢や悩みに重ね合わせながら観られました。女優の仕事を始める前までは、中学・高校・大学と、普通に進学してきた延長上で、このまま就職するんだろうなと漠然と考えていました。周りから見れば、きちんとレールに乗った問題のない人生なのでしょうが、「このまま何もなく人生が終わるのは寂しい」「新しいことを始めてみたい」といった、もやもやとした気持ちが少なからずあったのも事実です。この映画ではプロのサックス奏者を目指して会社を辞めた32歳の女性が登場しますが、この方は20歳でサックスを始めたとのこと。「遅れを取り戻さなければ」という焦りがあると話されていましたが、それでも大胆な決断によって前進していく姿からは、新しいことを始めるのに年齢は関係ないし、決断さえすれば道は開けるんだ、という勇気をもらいました。私も20歳になる直前で女優の仕事を始めましたが、これは一般的にはかなり遅い時期ではないでしょうか。そのぶん、普通のやり方じゃダメだろうなとあれこれ考えていましたが、この映画を見て少し肩の力が抜けて、好きなことをやれているのだから、今を楽しめば良いのかなという気持ちになりました。

--特に印象的だったシーンはありますか?

私自身が大学生ですから、伝統芸能の狂言に夢中になっている女子大生の方にも共感しましたね。結局、彼女はプロの狂言師になることは諦め、何かしら日本文化に携わる仕事をしたいと思っているようでした。いかにして夢と現実の折り合いを付けるかということは、私を含めて大学生の多くが直面する悩み。それだけに切実な思いで見入りました。どうも私は周囲から気楽な人間に見られるようで、「悩みがなさそう」などとしょっちゅう言われます(笑)。でも、意外と深く悩む性格なんですよ。もともとお喋りで、他の人に対しても心を開いて話すタイプだと自覚していますが、本気で悩んでいることに関しては極端に何も話せなくなってしまう面もあります。そうやって一人で悩んでいると、どうしてもどんどん気分が沈んでしまう。しかし、作中である女性が「みんな、どうしているんだろう」とポツリと言ったように、こんなに悩んでいるのは自分だけではないか、と誰もが思ってしまうんですよね。しかし実際は、多かれ少なかれ、誰もが悩みながら生きていることが、この映画から伝わってきました。

東京の人混みのなかで、時おり孤独を感じることがある

--作中で描かれていた「東京」のイメージは、どのように受け止めましたか。

私は東京の東村山市で生まれ、中学・高校は都心の学校に通いました。だから、中学時代から渋谷や新宿などで長い時間を過ごしましたが、東京には「楽しい」「賑やか」といったポジティブな言葉だけでは言い表せない何かがあるのを感じていました。この作品では「東京には色々なものがあるように見えて、実は空虚な空間なのかもしれない」といったメッセージが語られていましたが、これは私の東京に対する思いも代弁してくれたような気がします。東京には大勢の人が歩いていて、みんなが妙に楽しそうな顔をしている。そんな街なかを歩いていると、時おり、自分一人が浮いているような気になって、強い孤独感におそわれることがあります。そういう時に感じる寂しさは、まさに「空虚」という言葉がぴったりだな、と。私は友達と一緒に過ごすのが好きなので、普段はそうやって誰かと一緒にいることに安心しているのですが、ふとした瞬間に、やっぱり自分と他の人たちは別の人間なんだと気付いて寂しくなることがあります。東京という都市の空虚さは、そういう時に抱く感情にも似ていると思います。

上下とも映画『東京ソーダ水』より

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