渋谷文化 PROJECT

「お笑い業界の『今』に対し、常に敏感で未来を作れる人を育てたい」というコンセプトのもと、一流講師陣が本気で「笑い」を教えるヒューマンアカデミー渋谷校・お笑い芸人養成講座が開設されて5年。現在、構成作家としてTV業界の第一線で頭角を現しながら、演技の講師として当講座に携わる佐藤雄平さんに、東京を代表するお笑いスペース、シアターDが定期開催する、若手お笑い芸人の登竜門的イベント「なりあがりSUPER」チャンピオン大会の印象と、星の数ほど存在する若手芸人やお笑いの今後について、熱く語ってもらった。

--まずは本日の「シアターD・なりあがりSUPER」をご覧になった、率直な感想から。

お笑いライブに来たのは久しぶりなんですが、やはり色々と発見がありました。出演者の大半はまだ若いのに、ファミコンゲームの「スパルタンX」をネタにしたり、一方でオタクを扱ったアキバ・ネタが入ってきている。今日に限っていえば、古いものと新しいもの、ネタが二極化しているな、と感じました。それにしても、オタク文化愛好者のような人たちがお笑いに取り組んでいることには、正直驚きました。ステージに立つ人間の幅が広がったな、と実感しましたね。吉本興業や他の芸能事務所、そして僕らのやっているスクールも含め、観客がプレーヤーになれる機会が飛躍的に増えた、それが原因のひとつだとは思います。一方で最近の東京には、事務所に所属していない若手芸人のためのハコがほとんどない。そういう意味で、シアターDは東京でのお笑いの最後の牙城、といえます。中野にあるライブハウスTWLで修行を積んでシアターDに出演するというのは、一種のブランドになっているようですし。

--佐藤さんなりの、若手芸人の見るときのポイントがあれば、教えてください。

自分が元々演劇出身ということもあって、まずは演技力と滑舌に目がいきます。漫才やコントって、その雰囲気や臨場感を伝えるためにも、見えない部分や動作をきちんと演じる必要があると思うんです。今日出演したような若手の方々を見ていて思うのは、笑いを取ることに先に意識が集中してしまい、そこへたどり着くための演技力や滑舌といった重要な過程を抜かしてしまっているような気がしました。目を閉じて耳だけを頼りに台本を追ってみると、きちんとオチているのかそうでないのか、はっきりとわかるんですよね。自分たちのネタをもっと客観的に眺めることができれば、もっと面白くなると思います。

--では、若い人たちのここが凄いな、と思う点はありますか？

みんな度胸があると思いますね。僕もそうなんですが、まるでゲームをプレイするように芸の世界に飛び込んでくる人が結構いるから、きっと図太い性格しているんでしょう。始めてみて肌に合えば続けるし、ダメならさっさと辞める。かつてのように、覚悟を決めてお笑いの世界に入るような輩は少ないような気がします。「芸道を極めてやる！」みたいな、敷居の高い感覚がないのは、ある意味でとてもいいことだと思いますけど。

--渋谷という街とお笑いにはどのような関係性があると思いますか？

ここ20年位の間に「遊び呆けて女の子にもてたい」という、若い男の子誰にでもある願望を見事に体現したお笑い芸人が登場しはじめたと思います。渋谷には、そんな感覚を持った若くてオシャレで個性的な人材が今も続々と集まっているはずだし、地方から出てくる若い人たちも、現在では新宿よりも渋谷を目指す風潮があると聞きます。シアターDもヨシモト∞ホールもあるし、渋谷は人材の宝庫だと思いますよ。

ライブ「なりあがりSUPER」の第1回 チャンピオンに輝くゴーマン職人のお二人。