BUNKA X PERSON

■インタビュー・生々しい証言が詰まった貴重な記録映画
・サルサは中南米諸国のアイデンティティの源
・オルケスタ・デル・ソルを聞いてラテン音楽に開眼
・ラテン音楽の魅力を若い人にも伝えたい

■プロフィール1962年生まれ。グラフィックデザイナーとしてフリーペーパー『SALSA120%』の制作に第1号から参加し、7号から編集長を務める。現在は『SALSA120%』の制作と並行し、広告やCDジャケット、Webサイトなど多彩なジャンルでデザイナーとして活動。1995年に立ち上げたWebサイト『Samurai Latino Web』は、ラテン音楽関連の情報を発信するWebサイトの草分け的な存在として多くの読者を持つ。
http://www.s-latino.com/

オルケスタ・デル・ソルを聞いてラテン音楽に開眼

--日本国内でのサルサの歴史についてレクチャーしてください。

日本初の本格的なサルサバンドは、78年に結成されたオルケスタ・デル・ソル。僕も十代後半頃にこのバンドの音楽を聴き、サルサのカッコ良さを知ってラテン音楽に開眼しました。オルケスタ・デル・ソルに牽引される形で、日本でも本格的なサルサバンドが現れるようになり、84年に結成されたオルケスタ・デ・ラ・ルスはビルボード誌のラテン・チャートで11週連続1位を獲得する快挙を成し遂げています。その後、プエルトリコ出身の歌手であるリッキー・マーティンのヒット、キューバのミュージシャンの姿を描いたドキュメンタリー映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の上映などにより、ここ日本でも何度かラテン音楽が流行し、徐々にリスナーが拡大しました。現在はブームとは無関係に、一定のリスナーが定着している状況ですね。もともと昭和歌謡にはラテンの要素を取り入れた曲が多いですし、日本人には親しみ深い音楽だと思いますよ。

--サルサ初心者におすすめのミュージシャンを教えていただけますか。

オルケスタ・デル・ソルにはやはり思い入れがあります。サルサ・スインゴサ、コンキスタンドも良いバンドです。そもそも、サルサは小難しく考える必要のないダンス音楽ですから、初心者でも入りやすいと思いますよ。サルサと一口に言っても、国や地域によりテイストはかなり異なりますから、まずはコンピレーションアルバムを買い、好きなミュージシャンを見つけると良いのではないでしょうか。

ラテン音楽の魅力を若い人にも伝えたい

--山口さんが編集長を務める『SALSA120%』について、お話ください。

サルサをはじめとした幅広いラテン音楽や周辺情報を紹介する月刊のフリーペーパーとして、1998年に創刊しました。僕は第1号目から制作に参加していましたが、グラフィックデザイナーという仕事柄、パブリッシングに関する知識もあり、ラテン音楽に多少詳しかったことが買われて、7号から編集長を務めています。ラテン音楽はCDで聴くのも良いのですが、もともとダンス音楽ですから生音に身を委ねて踊れば、一層、魅力が伝わってくる。そんな考えからCDレビューやミューシャンへのインタビューだけではなく、日本各地のクラブやライブハウスでのイベント情報も充実させています。現在3万部を発行し、全国の大型CD店や、サルサクラブ、ラテン系レストランなどに設置していますから、ぜひお手に取ってみてください。

--『Samurai Latino Web』というWebサイトも運営されていますよね。

現在、『SALSA120%』と並行し、情報発信の手段としているのが、個人的に運営している『Samurai Latino Web』というWebサイト。これはCDレビューやショップ・スポットの紹介など、ラテン音楽に関する情報を掲載するサイトで、95年に立ち上げました。開設当初は日本にラテン音楽のリスナーが少なかったため、海外の人に向けて英語で運営していたのですが、著名なミュージシャンがフランクなメールをくれたり、世界中にラテン音楽ファンの知り合いが出来たりするのが大きな喜びで、現在まで続けています。一時期は、サイトを通じて知り合ったマイアミに住む翻訳者が、「オマエの英語はたどたどしいから」と英文を添削し、さらにスペイン語に翻訳してくれたため、3ヶ国語で運営していたこともありました。今後も、『SALSA120%』や、このWebサイトを通してラテン音楽の面白さを広めていきたいと考えています。とくにラテン音楽のリスナーには30・40代が多いので、もっと若い人にもアピールしたいと考え、あれこれと策を練っているところです。

渋谷という街への印象は?僕にとって渋谷は“仕事場”というイメージの強い街。というのも、初めて就職したデザイン会社が渋谷でしたし、今でも『SALSA120%』の編集部は桜丘町にあるうえに、その他のクライアントの多くが渋谷にオフィスを構えていますので。だから、社会人になってからは、日常的に訪れている街です。ラテン音楽系のクラブは六本木に多いのですが、神宮前の「CROCODILE(クロコダイル)」など、渋谷にもラテンに積極的なライブハウスはありますし、宮益坂のワールドミュージック専門店「EL SUR(エルスール)」はなかなか気の利いた品揃えで、ファンの間では定評があります。渋谷界隈は流行の発信地ですから、音楽とは切っても切り離せない関係にありますよね。

渋谷に改善を望むことは?編集部がある桜丘町は雰囲気が静かで、街並みもきれいなので好んで歩きますが、ハチ公前からセンター街にかけての人混みはかなり苦手。難しいのは承知で注文を付けさせていただけば、あの人の多さは何とかならないものでしょうか・・。それから、路上に落ちているゴミをなくすなどして全体的に清潔感をアップさせれば、もっと落ち着いた気分で過ごせる街になると感じますね。

SALSA120%

1998年9月創刊。サルサをはじめとしたラテン音楽や、周辺文化を紹介する日本唯一のフリーペーパー。新譜レビューやミュージシャンインタビューなどに加え、各地でのイベント情報も大量に掲載。毎月1日発行。全国の大型レコード店や公立図書館、ラテン系レストラン、イベント会場などに設置されているほか、定期購読も受け付けている。
http://www.salsa120.jp/

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