BUNKA X PERSON

■インタビュー・アート性によって観る人をひきつけてから環境問題へのメッセージを伝える手法が見事
・ゴミを表舞台に昇華させるecopirikaの活動との共通点を感じた
・デザインの力によってゴミに新たな生命を吹き込む
・消費者の意識に訴えるだけではなくエコの視点を持つ作り手も増やしたい

■プロフィール大阪府生まれ、東京都育ち。中学校、高校はアメリカに留学。大学卒業後、約3年間、マーケティング会社に勤務後、2007年6月、リユースデザインブランド「ecopirika(エコピリカ)」の活動をスタート。2008年に男児を出産して1児の母に。
ecopirika公式HP
ecopirikaオンラインショップ

デザインの力によってゴミに新たな生命を吹き込む

--ecopirikaの活動について説明していただけますか。

デザインの力によって、捨てられていくゴミに新たな生命を吹き込むのが、ecopirikaのコンセプト。今のところ、オンラインショップで、他メーカーの商品の委託販売や、オリジナル商品の企画・制作・販売を行っています。たとえば、人気アイテムの一つが、小学校の体育館の床廃材を加工したフォトフレーム。また、芯の周りに古新聞を固く巻きつけた鉛筆は、動物柄のデザインがかわいいこともあって、企業のノベルティグッズなどにも好評です。商品化間近の企画には、ショップなどの紙バッグを特殊加工して耐久性を持たせたバッグなどもあります。オリジナル商品の開発は、ホームページ上などでの公募がメイン。立ち上げた直後、プロダクトデザイナーなどから約60件の応募があって、反応の大きさに驚きました。当初は、メインの購入者は20〜30代の女性と想定していましたが、蓋を開けてみると、3、4割が男性だったのは嬉しい誤算ですね。地方に住む方々の割合が多いのですが、きっとエコ関連の商品を扱うショップが大都市に比べて少ないからだと思います。

--ecopirikaのアイデアが生まれたきっかけは?

大学時代、ちょうど、渋谷のビットバレーなどが話題になった時期で、「若者でも気軽に起業できる空気ができつつあるな」と漠然と感じたのが、起業を意識した始まり。卒業後、マーケティング会社に3年ほど勤め、「独立したい」という思いが募って退社しました。が、その時点ではノーアイデア。追い詰められて動き始めるタイプですので・・。その後、起業のアイデアを模索するうちに、いわゆる社会起業家の方との出会い、私も社会を生き生きとさせるような仕事をしたいと思うように――。自分の生活に身近なテーマの方が興味は長続きすると考え、学生時代から関心があってボランティア活動にも参加していた環境問題についてリサーチしました。その結果、海外ではわりと一般的な「リユースブランド」が、日本にはあまりないことに気付き、2007年6月、リユースデザインブランド「ecopirika(エコピリカ)」を立ち上げました。かねがね、日本の「ものづくり」の技術を生かせるビジネスをしたいと思っていたことも決め手のひとつでした。

消費者の意識に訴えるだけではなくエコの視点を持つ作り手も増やしたい

--ecopirikaが取り組む「リユース」の考え方についてお話ください。

サトウキビの搾りかす「バカス」でできたノート

リユースの一例が、ヨーロッパなどで一般的に流通しているリターナルビン。飲料などのビンを使い回して、ゴミを減らすのがねらいです。日本でも、ジュースやビールのビンをお店に返すと、代金がいくらか返却されるしくみが昔はありましたが、缶やペットボトルが登場して姿を消しました。おそらくビンに限らず、同じようなことが色々とあるのでしょうが、「環境のために」と、以前の状態に戻すのは現実的には難しい。一度知った便利さは、なかなか手放せませんから。ですので、今の日本でリユースを促進するのなら、現状に楽しさや便利さなど新しい要素をプラスして、「使ってみたい」と、思わせる必要があるのではないかと思います。そのようなプラスアルファのあるリユースの提案が、ecopirikaの活動の目的です。

--活動をスタートして感じたことは?

実際に活動を始めてみると、予想以上の難しさを痛感し、「エコ」について改めて考えさせられました。たとえば、リユースするゴミの中には洗剤を使って丹念に洗う必要のあるものもあるし、部分的に新品の素材を使用する商品もある。トータルで考えると、どれくらい「エコ」になっているのだろうか・・と思い悩みます。そのようなことを踏まえると、今のところ、ecopirikaの活動は、実質的な「エコ」には必ずしも大きく貢献していないかもしれません。それでも、私たちの母親以上の世代がチラシを折って物入れをつくっていたような「リユース」の発想を、新しい形で現代によみがえらせて広めていくことには大きな意義を感じています。

--今後のビジョンを聞かせてください。

今年出産したため、活動が滞っていましたが、今後、オリジナル商品の開発などを中心に充実させていくつもりです。身近なゴミをリユースする方法を教えるワークショップなども企画したいですね。そのような活動の場として、ショップを持つことも当面の目標です。新しい形のリユースを提案するecopirikaのメッセージは、商品を使用される方だけではなく、作り手のデザイナーとも共有していきたいと思っています。一緒に仕事をしているプロダクトデザイナーは、これまでにエコ関連に携わっていない人が大半ですが、時おり、「これを機に、エコについて考えさせられた」と言われるのが印象的です。消費者が環境問題を意識した商品を使いたくても、そのような商品がなければ選択の余地はありません。今後、リユースという取り組みから環境問題にアプローチするためには、消費者だけではなく、エコの視点を持つ作り手を増やしていくことも大切だと感じています。

初めて渋谷を訪れたときの印象は?中学校と高校はアメリカに留学しており、高校生の頃、夏休みに帰国して初めて渋谷に来ました。友達とハチ公前で待ち合わせて、何をするでもなく過ごした記憶があります。すごく印象的だったのが、当時、全盛期だったルーズソックス。「ガングロ」のメイクもかなりのインパクトでした。その頃は、「面白いカルチャーだな」と、肯定的に捉えていましたね。今考えると、もし中学・高校時代に日本で過ごしていたら、渋谷は苦手な街だったかもしれませんが、少し離れた位置から見られたので、「人間臭さがあり、本当に色々な要素で構成されていて面白い」と受け止められたのだと思います。ちなみに、現在のお気に入りの場所は、代々木公園。ベビーカーを押して散歩するほか、趣味のジョギングで汗を流しています。実は、来年3月の東京マラソンに参加することが決まっているんです(笑)。

渋谷に足りないものは?個人的には、家庭菜園をできるスペースがあったらいいな、と。現在も美竹公園のそばにあるようですが、スペースが限られていて、抽選がかなりの高倍率とか。ビルの屋上を有効利用してつくってもらえないものでしょうか。あとは、タクシーよりも手軽な乗り物として、「ベロタクシー(自転車タクシー)」があれば、日常の足として重宝するに違いないと、登場を心待ちにしています。

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