現代の文学作品を映画で「読む」

現在、渋谷の劇場では文学作品を原作にした映画が一挙公開されている。海外での翻訳も多く、日本を代表する女性作家・よしもとばななの『アルゼンチンババア』(ロッキングオン)、社会現象にまでなったリリー・フランキーのベストセラー『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』(扶桑社)、直木賞作家・角田光代による短編小説集の映画化第二弾『Presents 〜うに煎餅〜』(双葉社)、児童書の枠を超えて幅広い層の人気を集めたあさのあつこ著『バッテリー』(角川文庫)など、どれも多くの人から熱烈に支持されている作品ばかり。

一方、海外の小説に目を向けると、スキャンダラスな内容で「フランス文壇を揺るがす事件」と言われた『素粒子』(ミシェル・ウエルベック著/筑摩書房)、スピルバーグやスコセッシなどが映画化権を競い合った『パフューム - ある人殺しの物語』(パトリック・ジュースキント著/文藝春秋)と、発表当時に大きな話題をさらい、文学的評価の高い作品がこの時期に相次いで公開されている。小説の世界を想像で補うのも楽しいが、原作に思い入れのある監督やスタッフたちがどのように映像に仕立てたのか、映画を見ながらその苦労に思いを馳せるのもまた楽しい。

熱烈な支持を受ける日本の文学作品を映画で「読む」

2006/日本/112分/配給:松竹、キネティック/©2006 「アルゼンチンババア」 製作委員会

タイトル: アルゼンチンババア
開催場所: Q-AXシネマ
日  時: 2007年3月24日〜
11:15/13:45/16:15/18:45
監  督: 長尾直樹
出  演: 役所広司、鈴木京香、堀北真希
よしもとばななが2002年に発表した「アルゼンチンババア」は、人の生と死をテーマにしながらも幸福の姿を心優しい文体で描き出した傑作小説。奈良美智とコラボレーションしたドローイングは映画のオープニングやエンド・クレジットにも使われている。「町外れの一風変わった洋館に住む、“アルゼンチンババア”。怪しい噂はいろいろあるけれど、おもてなしのマテ茶や、情熱的なタンゴを踊る彼女に周りの人みんなが魅せられていきます。よしもとばななが描く、やわらかさや優しさ、独特の死生観は原作そのままです!」(CKエンタテインメント/加藤さん)

映画『アルゼンチンババア』より

2007年/日本/2時間22分/配給:松竹/©2007「東京タワー〜o.b.t.o.」製作委員会

タイトル: 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン
開催場所: 渋谷シネパレス1・2
日  時: 2007年4月14日〜
上映時間の詳細は、劇場まで問い合わせ
監  督: 松岡錠司
出  演: オダギリジョー、樹木希林、内田也哉子
リリー・フランキーが亡き母への思いを中心に、親と子、社会と個人、時代によって変わるものと変わらぬものの姿を、真っ正直に綴った自伝小説。脚本は著者と同世代で同郷の松尾スズキ。昭和の炭坑町で育った少年が、平成の東京タワーの下で母を看取る原作のディテールの魅力を損なうことなく、映画脚本として巧みに再構築している。

2007年/日本/カラー/45分/配給:アットムービー/©2007 ジェネオン エンタテインメント/アットムービー/衛星劇場

タイトル: Presents〜うに煎餅〜
開催場所: 渋谷シネ・ラ・セット
日  時: 2007年3月31日〜
14:55/16:00
監  督: 石井貴英
出  演: 戸田恵梨香、平岡祐太、黄川田将也
2005年に出版された直木賞作家・角田光代の短編小説集『Presents』。広末涼子・玉山鉄二コンビで話題となった映画化第1弾『合い鍵』に続く、第2弾『うに煎餅』は、戸田恵梨香&平岡祐太のフレッシュな共演で映画化となった。

2007/日本/1時間59分/配給:東宝/©2007 「バッテリー」製作委員会

タイトル: バッテリー
開催場所:

シネフロント

日  時: 2007年3月10日〜4月20日
11:00/13:40/16:20/19:00
監  督: 滝田洋二郎
出  演: 林遣都、山田健太、天海祐希
1996年、児童書として刊行された、あさのあつこ原作『バッテリー』は、その後、世代・性別を超越し、あらゆる人を夢中にさせて大ベストセラーとなった。能力と自信をあふれさせる孤高のピッチャー・巧が、野球を通して不器用ながら、家族や友人との関係を築きあげていく様をあたたかく描いた。
発表当時、話題になった海外の文学作品を映画で「読む」

2006年/ドイツ/103分/配給:エスパース・サロウ

タイトル: 素粒子
開催場所: ユーロスペース
日  時: 2007年3月24日〜
11:20/13:45/16:10/18:35
監  督: オスカー・レーラー
出  演: モーリッツ・ブライプトロイ、フランカ・ポテンテ、マルティナ・ゲデック
ヨーロッパ中で大反響を巻き起こしたミシェル・ウエルベックのベストセラー小説は、現代社会の愛の欠如と絶望感をユーモアと悲哀をまじえて痛烈に描いた問題作。「ずばり、原作ファンの評価は高いです。熱狂的なファンほど評価も厳しいので嬉しいですね。作品のテーマは、“幸せって何?”ということに尽きます。先の展開が読めないドラマとしても目が離せないと思いますよ。」(エスパース・サロウ/斉藤さん)

2006/ドイツ/147分/PG-12/配給:ギャガ・コミュニケーションズ powered by ヒューマックスシネマ/© 2006 Constantin Film Produktion GmbH / VIP Medienfonds 4 GmbH & Co. KG / NEF Productions S.A. / Castelao Productions S.A.

タイトル: パフューム−ある人殺しの物語−
開催場所: 渋谷TOEI2
日  時: 2007年3月3日〜4月6日
12:40/15:40/18:40
監  督: トム・ティクヴァ
出  演: ベン・ウィショー、レイチェル・ハード=ウッド、ダスティン・ホフマン
1985年のドイツでベストセラー小説となったパトリック・ジュースキントの「香水 ―ある人殺しの物語―」は、45ヶ国語に翻訳され全世界で1,500万部以上の売り上げを記録した。天才的な嗅覚を持つ香水調合師が創った許されざる香水とは?

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