懐かしくも新鮮な昭和の風景たち

昭和30年代の東京を舞台に、感情豊かに生きる人々を描いて大ヒットを記録した映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の続編、『ALWAYS 続・三丁目の夕日』が11月3日より渋東シネタワーで公開される。『昭和30年代物語〜街角のたばこ屋さんをさがして〜』展を開催しているたばこと塩の博物館では、通常の展示のほか、『ALWAYS  続・三丁目の夕日』の公開に合わせ、実際に映画で使われた小道具などで昭和30年代の店先の様子を再現している。東京都写真美術館でも、全4部構成で昭和の写真を紹介する企画展の最終回、「昭和 ─写真の1945〜1989─ 第4部「オイルショックからバブルへ」昭和50年代以降」が始まる。

現在、白根記念渋谷区郷土博物館・文学館で開催中の『特別展「住まいからみた近・現代の渋谷─郊外生活から都市生活へ─」』では、同潤会アパートやワシントンハイツなど、昭和時代に建築された建築物の写真や建築部材などを展示している。LOGOS GALLERYで公開中の『2007.東京.町工場より ─機械部品と工具の展示即売─』展でも、長年工場で使用されてきた工業用品や工具などから、昭和の名残を感じることもできるかもしれない。また渋谷マークシティで開催されている「SHIBUYA INFOBOX ─続く街。過去から現在、そして未来へ。」と題した展示からは、今後大きく変貌していく渋谷の街を題材に、過去から未来へと続く時間や変遷を感じることができる。映画、写真、展示など、”昭和の空気”をよみがえらせるさまざまな試みを通して、移りゆく時代や社会の在り方について思いを馳せるにはいい機会になるだろう。

山内道雄 <東京 阿佐ヶ谷 1985年8月>、「街」より 昭和60(1985)年

タイトル:
昭和 ─写真の1945〜1989─ 第4部「オイルショックからバブルへ」昭和50年代以降
開催場所:
東京都写真美術館
開催期間:
2007年10月20日〜12月9日
経済の低成長が恒常化し、戦後派世代が「ニューファミリー」と呼ばれ、世代構成の中心を担うようになった。その中で地域社会だけではなく、家族までもが崩壊し、個人主義が蔓延する中、写真家たちの視線は、自らの内面を見つめ、社会に孕む問題を作品の中に写し込んでいく。

「戦後の昭和をご紹介してきた4回シリーズも、ついに最後を飾る第4部の開催となりました。みなさんがよくご存じの昭和50年代以降の風景や出来事が、著名写真家の作品で鮮烈に蘇ります。ほんの20〜30年前の日本の姿は、懐かしいだけではなく、今の日本を予感させる証拠写真でもあるようです。写真家たちが個人の視点で捉えた作品から、その強い主張やメッセージを感じとってみてください。」(東京都写真美術館/久代さん)

荒木経惟 「写真論 1988-1989」より 平成元(1989)年

「いこい」のポスター(昭和32年)「今日も元気だ たばこがうまい!」©TOBACCO & SALT MUSEUM 2007

タイトル:
昭和30年代物語〜街角のたばこ屋さんをさがして〜
開催場所:
たばこと塩の博物館
開催期間:
2007年9月15日〜11月11日
本展は、時代の変化を東京の街角で見続けてきたたばこ屋さんの視点から、家電製品やポスター、新聞、子どものおもちゃなど、多彩な資料で当時をふり返る。また『ALWAYS 続・三丁目の夕日』の公開にあわせて、映画で実際に使用された小道具などで、昭和30年代の店先の様子を再現する。

「昭和30年代は、世代を超えて『懐かしい時代』という視点でみることが多いと思いますが、テレビ・冷蔵庫などの家電も、インスタント食品も当時はみんな新しいものでした。これらの商品が登場したときには、驚きをもって受け入れられたことでしょう。一方で、古くから続くくらしも残っていて、新旧が混ざった時代であったことが想像できます。本展では、昭和30年代にはまだ生まれていなかった方にも、そんな時代の雰囲気を感じていただけることと思います。」(たばこと塩の博物館/袰地さん)

132mの高さまで進んだ東京タワーの工事風景(昭和33年6月撮影)提供:毎日新聞

©2007「ALWAYS 続・三丁目の夕日」製作委員会

タイトル:
ALWAYS 続・三丁目の夕日
上映場所:
渋東シネタワー
上映期間:
2007年11月3日〜
監  督:
山崎貴
出  演:
吉岡秀隆、堤真一、小雪、堀北真希、もたいまさこ、三浦友和、薬師丸ひろ子
東京オリンピックの開催が決定し、日本が高度経済成長時代に足を踏み入れた昭和34年春。黙って去ったヒロミを想い続けながら淳之介と暮らす茶川のもとに、実父の川渕が再び淳之介を連れ戻しに来た。人並みの暮らしをさせるのを条件に淳之介を預かった茶川は、安定した生活をし、ヒロミに一人前の姿を見せるためにも、一度は諦めた芥川賞受賞の夢に向かって再び執筆を始める。

映画『ALWAYS 続・三丁目の夕日』より

服部邸応接室

タイトル:
特別展「住まいからみた近・現代の渋谷─郊外生活から都市生活へ─」
開催場所:
白根記念渋谷区郷土博物館・文学館
開催期間:
2007年10月2日〜12月24日
これまで体系的に振り返られることのなかった「渋谷の住まいの歴史」を紹介。明治の外交官の屋敷(南平台)から、大正・昭和初期の和洋折衷のモダンな「文化住宅」、戦前のマンションの元祖「同潤会アパート」、戦後米軍の住宅として広大な土地(代々木)に建てられた「ワシントンハイツ」(現・代々木公園一帯)などを写真や建築部材を通して展示している。また、住宅の一室を再現し、そこでの人々の暮らしも紹介する。

旧同潤会青山アパート

©2007 PARCO CO., LTD. / 古書日月堂

タイトル:
2007.東京.町工場より ─機械部品と工具の展示即売─
開催場所:
LOGOS GALLERY
開催期間:
2007年10月12日〜10月22日
ここ数年、若い世代を中心にブームを見せている「廃墟」となった「工場」に眠っていた工具や機械部品は、多くの人から見れば廃品である一方、20世紀半ば以降、時にアートに転用されてきたものでもある。本企画展は、廃墟となった実在の都内の工場から、ステーショナリーとして、或いはアート作品の材料としてなど、自由な発想で再び活かせるような機械部品や工具などを、そのフォルムの美しさから厳選し、一般に向けて展示販売する初の試み。

©2007 SHIBUYA INFOBOX All Rights Reserved.

タイトル:
SHIBUYA INFOBOX ─続く街。過去から現在、そして未来へ。
開催場所:
渋谷マークシティウェスト4階
開催期間:
2007年10月8日〜11月4日
「SHIBUYA INFOBOX」とは、"住む・働く・訪れる・・・"などシブヤに様々な目的で関わる方々に、シブヤの街の過去から未来へ続く時間と変化を感じてもらうことを目指した『渋谷のまちづくり情報発信基地』。シブヤは、来年6月予定の地下鉄副都心線の開通、平成24年度(予定)の東急東横線との相互直通運転により、神奈川方面と埼玉方面を一本の電車が結ぶこととなり、その中心であるシブヤには、より多くの人々の目が向けられるようになる。このようなシブヤの街の動きについて、時代をさかのぼって眺め、よりドラスティックに体感できるだろう。

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