「和」の心に触れて日本を再発見する

黒澤明監督による不朽の名作『椿三十郎』が、森田芳光監督・織田裕二主演でリメイクされ話題を呼んでいる。殺陣の演出やカラー、デジタル技術など、新旧の作品を見比べるのも楽しいが、ファンならずとも時代劇の魅力を知るきっかけとなるかもしれない。そうした日本固有の文化や歴史、世界から注目されている最新の日本カルチャーに触れられる映画を紹介する。

アメリカから”逆輸入”の形で公開されている『アフロサムライ』は、日本のアニメーションにハリウッドが参加し、ヒップホップの要素を取り入れた異色のアニメーション映画。昭和60年代のアングラ演劇ブームを支えた劇団を追ったドキュメンタリー『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』からは時代の熱気を感じるだろうし、内田百間の小説世界を下敷きにした『眠り姫』からは、独特の映像手法の中で強調される”得体の知れない不安”が体感できるだろう。日本版ロードムービーの原点とも言える『やじきた道中てれすこ』で描かれる江戸時代の道中の風景と、東京中を歩き回る『転々』の中で描かれる現代の東京の街並みはどのように違うのだろうか。『オリヲン座からの招待状』で描かれる日本の伝統美や、大ヒット映画の続編『ALWAYS 続・三丁目の夕日』が描く昭和30年代の人情味溢れる風景は、どちらも日本人にとっては馴染みのあるものだろう。そういった視点を意識しながらこれらの映画を見てみると、普段は見落としがちな日本独自の魅力を再発見することができるかもしれない。

©2007「椿三十郎」製作委員会

タイトル:
椿三十郎
上映場所:
渋東シネタワー
上映期間:
2007年12月1日〜
監  督:
森田芳光
出  演:
織田裕二、豊川悦司、松山ケンイチ、鈴木杏、村川絵梨、佐々木蔵之介、風間杜夫、西岡徳馬、小林稔侍、中村玉緒、藤田まこと
椿三十郎を演じるのは、森田芳光監督ご指名の織田裕二。リアリズムあふれるド派手な立ち回りを見せる一方、喜怒哀楽な表情を見せる“現代のヒーロー”椿三十郎を演じている。三十郎の宿敵・室戸半兵衛に、豊川悦司。クライマックスでの三十郎との一騎打ちは必見。そのほか松山ケンイチ、鈴木杏、中村玉緒、藤田まこと、村川絵梨、佐々木蔵之介、風間杜夫、西岡徳馬、小林稔侍など実力派俳優が集結。原作は、山本周五郎作「日日平安」(ハルキ文庫刊)。

映画『椿三十郎』より

©2006 TAKASHI OKAZAKI,GONZO/SAMURAI PROJECT

タイトル:
アフロサムライ
上映場所:
ライズエックス
上映期間:
2007年11月3日〜2007年12月7日
監  督:
木崎文智
出  演:
サミュエル・L・ジャクソン、ロン・パールマン、ケリー・フー
日本人アーティスト岡崎能士が限定出版したコミックを、『青の6号』や『ブレイブストーリー』のGONZOが見出してアニメ化を企画。それを偶然目にしたサミュエル・L・ジャクソンが「これこそは俺がやるべき仕事!」と自ら製作への参加を表明したことで、プロジェクトは大きな進展を見せた。かつて銀河でも指折りの“剣豪”を演じたサミュエル自身、主人公アフロサムライを含む二役のボイスアクターを快諾したのをはじめ、ハリウッドの実力派俳優らも出演。映画音楽でも著名なカリスマアーティストThe RZAが参加し、「アフロサムライはアーバンカルチャーのエポックとなるべき作品!」と凄まじい意気込みでヒップホップ・サウンドを提供している。

「ハリウッドスターのサミュエル・L・ジェクソンが作品に惚込み、作品中2役を演じているジャパニメーションです。全編をRZAのHIPHOPがかっこよく、「ハリウッド×ジャパニメーション×HIPHOP」という異色映画です。アニメに抵抗がある方も見たことがない映像とアクションを楽しめると思います! 今後、サミュエル出演で実写化の予定もあり、大きな映画になっていくのでサミュエル好きの方、アニメ好きの方、音楽好きの方、流行に敏感な方は是非見に来てください!」(宣伝担当/木村さん)

映画『アフロサムライ』より

©いまじん 蒼玄社

タイトル:
シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録
上映場所:
シアター・イメージフォーラム
上映期間:
2007年12月1日〜
監  督:
大島新
出  演:
唐十郎、劇団唐組
1967年、新宿の花園神社で行われた紅テント公演で、演劇界に衝撃を与えた天才劇作家・唐十郎。その革命的な劇世界は、同時代を生きた寺山修司や蜷川幸雄はもちろん、つかこうへい、野田秀樹ら後に続く世代にも有形無形の影響を与えた。そして、唐以外の演劇界の巨星たちが、変化を求めより大きな舞台で活躍していくなか、唐だけが紅テントにこだわり続けた。自らを「偏執狂」と呼ぶ唐が、彼らと決定的に異なる点は、ほぼ毎年1本新作戯曲を書き続けていることと、劇団という形態を維持し続けていること。40年前に27歳だった唐が、67歳になったいまも目をキラキラさせながら舞台に立つ姿は、まさに偏執狂の真骨頂である。

「1967年、紅テント公演で演劇界に衝撃を与えた唐十郎。あれから40年、唐はいまも紅テントにこだわり続け、劇団員たちも日々芝居に打ち込んでいる。信じた道をただひたすら走り続ける唐十郎と若者たち。これは平成の世の出来事なのか? それとも白昼夢か? そんな錯覚さえおこしてしまう彼らの姿から、あなたも目が離せなくなってしまうはずです。」(映画宣伝/伊藤さん)

映画『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』より

タイトル:
眠り姫
上映場所:
ユーロスペース
上映期間:
2007年11月17日〜2007年12月14日
監  督:
七里圭
出  演:
つぐみ、西島秀俊、山本浩司、大友三郎、園部貴一、榎本由希、橋爪利博
中学校の非常勤講師をしている青地(つぐみ)は、このごろ学校へ行くのがおっくうで、いくら寝ても寝不足の感じが抜けない。長くつきあい過ぎた彼氏(山本浩司)との会話は上滑りし、好きだという気持ちもすでにおぼろになっている。繰り返し見続けるのは、記憶とも妄想ともつかぬ、奇妙な夢。どうも、何かが変だ。面長の同僚教師・野口(西島秀俊)は、自分の顔のことは棚に上げ、青地の顔がだんだん膨らんでいると笑う。トイレに貼った猫の写真は、見るたびに何か言いたげだ。そこはかとない現実への違和感が心を占めていき、やがて青地の中で、意識と無意識の境界線が消えていく…。

©2007「てれすこ」講中

タイトル:
やじきた道中てれすこ
上映場所:
渋谷シネパレス1・2
上映期間:
2007年11月10日〜
監  督:
平山秀幸
出  演:
中村勘三郎、柄本明、小泉今日子、ラサール石井
弥次さんこと弥次郎兵衛を演じるのは、日本だけでなく世界が注目する歌舞伎俳優、十八代目・中村勘三郎。本作が46年ぶりの主演作品となる。喜多さんこと喜多八を演じるのは、名優柄本明。そしてヒロインの花魁・お喜乃を小泉今日子が魅力的に演じ、さらに珍道中を楽しくしている。この他に、藤山直美、ラサール石井、間寛平、國村準、笹野高史など豪華キャストが勢ぞろい。監督は『愛を乞う人』『しゃべれども、しゃべれども』の平山秀幸。珠玉のキャストとベテランのスタッフが集結して本年度最高の日本映画を作り上げた。
タイトル:
転々
上映場所:
アミューズCQN
上映期間:
2007年11月10日〜
監  督:
三木聡
出  演:
オダギリジョー、三浦友和、小泉今日子、吉高由里子、岩松了、ふせえり、松重豊、岸部一徳、笹野高史、石原良純、広田レオナ
深夜枠のテレビドラマというカテゴリーを越えて、社会現象を巻き起こした「時効警察」シリーズ。その監督・三木聡と主演・オダギリジョーのコンビによる長編映画『転々』が早くも完成! 直木賞作家・藤田宜永の同名小説を原作に、三木聡が脚本を手掛けた本作の主人公は、借金を抱えた大学8年生の文哉。返済するあてがない文哉に、借金取りの福原はある提案をする。その提案とは、100万円の謝礼と引き換えに福原の東京散歩につきあうこと。出発地は吉祥寺、目的地は霞ヶ関。散歩の期限は、福原の気が済むまで。つまりは、未定。

©2007「オリヲン座からの招待状」製作委員会

タイトル:
オリヲン座からの招待状
上映場所:
渋谷TOEI1
上映期間:
2007年11月3日〜2007年11月30日
監  督:
三枝健起
出  演:
宮沢りえ、加瀬 亮、宇崎竜童、田口トモロヲ、中原ひとみ、樋口可南子、原田芳雄
原作は国民的人気作家である浅田次郎氏の「オリヲン座からの招待状」(集英社刊)。日本中220万人を感涙の渦に巻き込んだ大ベストセラー「鉄道員(ぽっぽや)」の最終篇に所収され、長く映画化が待ち望まれていた。主演には山田洋次監督「たそがれ清兵衛」での日本アカデミー賞主演女優賞受賞をはじめ、国内外で高い評価を得ている、女優・宮沢りえ。相手役には、クリント・イーストウッド監督「硫黄島からの手紙」、周防正行監督「それでもボクはやってない」(主演)に抜擢された実力派俳優・加瀬亮。また脇を固める俳優陣には宇崎竜童、田口トモロヲ、中原ひとみ、樋口可南子、原田芳雄と豪華キャストの競演が実現した。季節の移ろいが美しい京都を舞台に、西陣織、蚊帳の中の儚い蛍など、日本の伝統美を交えつつ、映画館を守り続けたふたりの奇蹟の愛を描くのは、三枝健起監督。

©2007「ALWAYS 続・三丁目の夕日」製作委員会

タイトル:
ALWAYS 続・三丁目の夕日
上映場所:
渋東シネタワーシネフロント
上映期間:
2007年11月3日〜(渋東シネタワー)、2007年12月8日〜(シネフロント)
監  督:
山崎貴
出  演:
吉岡秀隆、堤真一、小雪、堀北真希、もたいまさこ、三浦友和、薬師丸ひろ子
東京オリンピックの開催が決定し、日本が高度経済成長時代に足を踏み入れた昭和34年春。黙って去ったヒロミを想い続けながら淳之介と暮らす茶川のもとに、実父の川渕が再び淳之介を連れ戻しに来た。人並みの暮らしをさせるのを条件に淳之介を預かった茶川は、安定した生活をし、ヒロミに一人前の姿を見せるためにも、一度は諦めた芥川賞受賞の夢に向かって再び執筆を始める。

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