日本固有の文化を知る表現

現在、東京都写真美術館では様々なジャンルの日本人作家による3つの展示を同時期に開催している。一人の写真家の視線を通して変貌する日本の戦後の姿を映し出した『土田ヒロミのニッポン』、メディア・アートと文学という異色のコラボレートで新たな表現の可能性を追求した『文学の触覚』、毎年注目の新進作家を取り上げてリアルな日常の感覚を刺激した『日本の新進作家 vol.6 スティル/アライヴ』。これらの展示を通して、日本ならではの表現や社会の移り変わりを感じることができるだろう。

一方、たばこと塩の博物館では、『幕末ニッポン 〜ハリスと黄昏(たそがれ)の大君(たいくん)の都〜』を開催し、初代駐日総領事を務めたタウンゼンド・ハリスに関する資料のほか、浮世絵や古写真などで激動する幕末の日本の世相を紹介している。開館20周年を迎えた 財団法人戸栗美術館では『からくさ−中島誠之助コレクション−』など、1年間にわたった記念展示を通じて、美術品や骨董など日本独自の美意識を紹介してきた。大晦日や初詣など、国民行事の中に日本文化の精神を感じる機会が多い年の瀬。こうした様々な芸術表現を通して、日本固有の国民性や風俗を確認するにはいい機会だろう。

「続・俗神」日本まつりを記号化(1980-2004)より

タイトル:
土田ヒロミのニッポン
開催場所:
東京都写真美術館
開催期間:
2007年12月15日〜2008年2月20日

「1960年代終わりから写真家として活動を開始した土田ヒロミは、日本の土俗的な文化、ヒロシマ、高度経済成長、バブル経済などのテーマを通して、変貌する日本の姿を撮り続けています。氏の視点は常にユニークで、作品ごとに明確なコンセプトを持ち、日本という国に対する問題意識を、実験的ともいえるアプローチで表現しています。 本展では、当館が重点的にコレクションした土田作品に加え、最新作を含め氏の作家活動の軌跡を一堂にご紹介いたします。パート1では、日本の行動様式や生活意識を通して『日本人』の姿を捉えた作品を5つのシリーズから、またパート2では、1976年から原爆の惨事を3部作によって記録しはじめた『ヒロシマ』をご紹介いたします。さらに、パート3では、氏のセルフポートレート作品『Aging』をビデオ作品とインスタレーションでお楽しみいただけます。新たな時代が動き始めた現在、土田作品を見ることで、日本という国と自分自身との関わりを考察する機会となることでしょう。」(東京都写真美術館)

「新・砂を数える」 1995-2004年より

森村泰昌「なにものかへのレクイエム2」

タイトル:
文学の触覚
開催場所:
東京都写真美術館
開催期間:
2007年12月15日〜2008年2月17日
「本展では、純文学と視覚芸術・メディアアートとの接点に焦点をあて、現代に活躍する文学作家とメディアアーティストのコラボレーションを行います。本来は読む人のイマジネーションにゆだねられる文学作品の世界を、多様なかたちで視覚化します。 展示を構成する3つのパート、○テキストを耳で聴く/目で見る、○小説の中に描かれた風景の再現、○古典作品へのオマージュ、について、講談社『群像』と NHKエンタープライズの企画協力を得て小説家とアーティストによる新作プロジェクトを制作し、関連事業としてトークや特集刊行を行います。 文学と映像メディアを独自の視点で結びつけ、その共存と、時には競い合う交差を通して、新たな領域と表現の可能性を開拓し探ろうという試みです。参加型の作品群に触れ、私たちの手のひらにこぼれる文学と映像メディアの美しさを体験してみましょう。」(東京都写真美術館)

穂村弘×石井陽子(NTTサイバーソリューション研究所)「手のひらインタフェース」

大橋仁「SEA」 2007年、写真作品

タイトル:
日本の新進作家 vol.6 スティル/アライヴ
開催場所:
東京都写真美術館
開催期間:
2007年12月22日〜2008年2月20日
「東京都写真美術館がアニュアル形式で開催する『日本の新進作家展』の6回目にあたる本展は、『現代人の生と時間、その表現』をテーマに現在30代の写真/映像作家4人に焦点をあてて紹介します。出品作家の伊瀬聖子(いせ・しょうこ 写真・映像作家1969年生)、大橋仁(おおはし・じん写真家1972年生)、田中功起(たなか・こおき 美術家1975年生)、屋代敏博(やしろ・としひろ美術家1970年生)は、新作を中心とした作品を発表します。
『スティル/アライヴ』とは、静止と運動のことであり、時間という観点から見た写真/映像を表しています。作家たちはリアルな日常世界とたえず交わり刺激をうけながら、時間のイメージを形にしていきます。そこには過去の記憶や未来の予感、そして『いま』の時間が刻まれています。また同時にこのタイトルは、『展覧会』という場とその外側にある『現実』の比喩でもあります。作品に込められた様々な時間意識、時間表現と、展覧会を見る人、そこに関わる人が過ごしている時間が交錯し、『いまここ』を生きている感覚が共有されることを本展はめざします。」(東京都写真美術館)

屋代 敏博 「回転回LIVE! S高校 卒業式会場」 2007年 写真作品

「いこくことば らんご」歌川芳幾画 万延元年(1860)12月(たばこと塩の博物館蔵)

タイトル:
幕末ニッポン 〜ハリスと黄昏(たそがれ)の大君(たいくん)の都〜
開催場所:
たばこと塩の博物館
開催期間:
2007年11月23日〜2008年1月4日

本展では、初代駐日総領事を務めたタウンゼンド・ハリスに関する資料のほか、幕末の世相を描いた浮世絵や幕末の状況を写した古写真、さらに新発見の資料である『文久日記(文久年間における桑名藩士の江戸滞在記録)』などを中心に、激動する幕末ニッポンの世相を紹介する。

「2008年は日米修好通商条約締結から150年目に当たります。この特別展では、初代駐日総領事(後に公使)を務めたタウンゼンド・ハリスに焦点をあて、ハリスの来日から帰国までの足跡を古写真や復元資料などで紹介するとともに、ハリスと同時期に日本で活躍した外国人たちの写真や実物資料、海外から入ってきた文物なども展示します。さらに、当時の事件や出来事について描かれた絵画、文書なども展示、激動する幕末日本の世相を約200点の資料でご紹介します。」(たばこと塩の博物館/袰地さん)

「横浜交易西洋人荷物運送図」五雲亭貞秀画/大判錦絵5枚続(横浜開港資料館蔵)

タイトル:
開館20周年記念特別展 からくさ−中島誠之助コレクション−
開催場所:
財団法人戸栗美術館
開催期間:
2007年10月2日〜2007年12月24日
「当館の展示は毎回、館蔵品の中からテーマを決めて展示をしておりますが、今年開館20周年を迎えるにあたりまして、これを記念して、鑑定家として活躍中の骨董屋からくさ主人・中島誠之助氏のコレクションによる特別展を開催いたします。古伊万里染付ブームの火付け役でもある中島誠之助氏のコレクションの中から、唐草文様を中心とした古伊万里の染付磁器を展示いたします。」(財団法人戸栗美術館)

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