鮮烈なる中国の伝統と革新

現在、Bunkamuraでは中国をテーマにした舞台や映画が目白押しだ。Bunkamura シアターコクーンでは、同施設で芸術監督を務める蜷川幸雄が演出した『さらば、わが愛 覇王別姫(はおうべっき)』が上演されているほか、Bunkamura オーチャードホールでは中国国内で絶大な人気を誇る国民的ダンサー、ヤン・リーピンが構成・主演した『ヤン・リーピンの「シャングリラ」』が始まった。また、Bunkamura ル・シネマではベルリン国際映画祭でグランプリを受賞した『トゥヤーの結婚』と、ヴェネチア国際映画祭で同じくグランプリを獲得した『ラスト、コーション』の2作品が上映されている。

中国の現代史を京劇俳優の生き様に重ね、世界中で記録的なヒットとなった原作を音楽劇として舞台化した『さらば、わが愛 覇王別姫(はおうべっき)』を筆頭に、中国各地の民族舞踊を大胆に取り入れた舞台、大自然の中で生きる家族への愛情と力強さを感じる映画、日本占領下の上海での極限の愛を描いた問題作と、過去から現在に至る中国の軌跡を多様なテーマを軸に切り取っている。北京オリンピックが間近に迫り、何かと注目されている中国。その奥深い伝統とダイナミックで革新的な文化に触れるには絶好のタイミングといえるだろう。

タイトル:
トゥヤーの結婚
上映場所:
Bunkamura ル・シネマ
上映期間:
2008年2月23日〜
監  督:
ワン・チュアンアン
出  演:
ユー・ナン バータル

美しいトゥヤーは、中国内モンゴルの北西部の草原で暮らしている。ダイナマイト事故で下半身が麻痺してしまった夫バータル。幼い子供たち。朝から夜までわずかな畑を耕し、羊を放牧していた。かつては青々としてた草原も、今では砂漠に浸蝕され、水も数十キロ離れた井戸まで汲みにいかなくてはならない。力強く凛として働くトゥヤー。しかし、寝たきりの夫を抱える厳しい生活と、重労働は、美しい彼女の体を蝕んでいく…。脚本家として活躍したワン・チュアンアン(王全安)監督による本作品は、「母性の輝きと人間の温かみに溢れている」と世界中から賞賛を寄せられ、2007年ベルリン国際映画祭グランプリを獲得した。

「2007年ベルリン国際映画祭≪金熊賞≫グランプリ受賞作。厳しい内モンゴルの荒野で生きるトゥヤー。美しい彼女の再婚条件は、離婚した夫も一緒に暮らすことであった! この作品は【愛の物語】として世界中から注目を集め、涙とユーモア満載の中国から届いた傑作です。」(グアパ・グアポ/藤田さん)

©2007 HAISHANG FILMS/WISEPOLICY

タイトル:
ラスト、コーション
上映場所:
Bunkamura ル・シネマ
上映期間:
2008年2月2日〜
監  督:
アン・リー
出  演:
トニー・レオン タン・ウェイ ジョアン・チェン ワン・リーホン

2005年の「ブロークバック・マウンテン」に続き、本作品で自身2度目となる2007年のヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞したアン・リー監督の話題作。 1940年前後、日本占領下の上海。レジスタンス活動を行う組織に身を寄せるウォン(タン・ウェイ)。彼女の使命は日本の傀儡政府の元で働くスパイのトップ、イー(トニー・レオン)を暗殺すること。イーとの接触に成功し、逢瀬を重ねる二人。すっかり彼女の虜になったイー。対照的に暗殺のチャンスをうかがうウォン。しかし彼女の心の内にも別の感情が芽生え始めていた。 そして数日後、暗殺するのに絶好の機会が訪れる。それぞれ想いを抱いた二人が取った行動とは…。

Bunkamura シアターコクーン

タイトル:
さらば、わが愛 覇王別姫(はおうべっき)
開催場所:
Bunkamura シアターコクーン
開催期間:
2008年3月9日〜2008年3月31日
演  出:
蜷川幸雄
出  演:
東山紀之 木村佳乃 遠藤憲一 他

1993 年記録的大ヒットとなった映画「さらば、わが愛 覇王別姫」を日本が世界に誇る演出家蜷川幸雄の演出、宮川彬良作曲で音楽劇として舞台化することが決定。京劇俳優たちの生きざまに中国の現代史を重ねたカンヌ映画祭パルムドール受賞の壮大な原作を、岸田理生が脚本化。人間の深く激しい愛と悲しみを描き出す。程蝶衣役としてドラマや映画、ミュージカルと常に第一線で活躍する東山紀之がコクーンにいよいよ登場。段小樓役に幅広い演技力で映画・舞台で活躍する遠藤憲一、菊仙役には国際派女優として実力をみせる木村佳乃という、華と実力を兼ね備えた強力なキャスティングも話題。

タイトル:
ヤン・リーピンの「シャングリラ」
開催場所:
Bunkamura オーチャードホール
開催期間:
2008年3月14日〜2008年3月22日
芸術監督:
ヤン・リーピン(楊麗萍)
出  演:
雲南映像集団

ヤン・リーピンは中国では知らぬ者がいないほどの国民的スターダンサー。「シャングリラ」は彼女自身が中国各地の民族舞踊の要素を大胆に取り入れ創造したダンス・パフォーマンス・ショーで、独特の少数民族文化、壮大で美しい自然景観、そしてそれぞれの民族が持つ信仰などを芸術性高く表現し、観衆をまさに桃源郷(シャングリラ)にいるかのような感覚に導く作品。立体的視覚効果を創り出す照明、次々と映し出される壮大で美しい風景、直径3メートルにも及ぶ巨大な太陽など至るところに驚嘆の仕掛けが用意され、特にクライマックスでヤン・リーピン自身が踊る“孔雀の舞”が絶賛されている。 いまや中国ではめったに踊る姿を見ることが出来ず、神秘のヴェールに包まれた存在のヤン・リーピン、2008年3月の来日はダンス・ファンには貴重な機会となることだろう。

ヤン・リーピンの「シャングリラ」より

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