レコメンド 今週、編集室が推薦するカルチャー

【清朝当時の皇宮・紫禁城】【ローマ教皇庁】 …写真家である小川一真氏とマティアス・シャーラー氏が選んだ撮影場所は、清の政治の中心、カトリック教の行政の中心、いずれも市井にとってのランドマークとして機能する場所である。

東京都写真美術館では、3月29日〜5月18日にかけて、明・清朝時代の中国において皇帝の住居であり政治の舞台であった皇宮「紫禁城」の、1901年当時の様子を撮影した「紫禁城写真展」を開催している。明・清朝時代の「紫禁城」とは、皇帝の絶大なる権力と富を知らしめる「中国の象徴」として存在し、一般の人々は決して立ち入ることができない神聖な場であった。今回の写真展は、1900年に北京でおきた義和団事件を契機に、国際連合軍が紫禁城に入城した際、同行した日本人写真家小川一真氏によって撮影された写真群を展示したもの。写真に写る紫禁城の緻密な装飾は、明・清朝時代の豊かな芸術性を反映しているが、一方で、石畳の間にはたくさんの雑草が茂っているのを確認することができ、1911年に滅びることとなる中国王朝の最後の姿を垣間みることができる。

また、トーキョーワンダーサイト渋谷では、TWS青山クリエーター・イン・レジデンスの成果発表会の1つとして、マティアス・シャーラー展「Purple Desks」が開催中である。こちらには、バチカン市国、ローマ教皇庁のオフィスを、2004年から2007年にかけて撮影した写真群が展示されている。ローマ教皇庁は、全世界のローマ‐カトリック教会の行政とバチカン市国の統治を行う機関として、ローマ教皇と枢機卿によって運営されており、私たちが普段目の当たりにすることはできない神聖な場所である。マティアス・シャーラーは、枢機卿の執務室の1つ1つを、真ん中にデスクを置いた広い画角で正面から捉える。共通の画角から読み取れる各部屋の細部の違いが、執務室の主それぞれの個性をコミカルに伝えている。

私たちは、ランドマークを、「目印」として「象徴」として、いつも外側から眺めて来た。一方両者は、撮影時期には100年以上の違いがあるものの、同じようにランドマークの内側に侵入し、内部へ向けて冷静にカメラを構える。そうして出来上がった写真をみて、あなたは何を思う?

『清国北京皇城写真帖』東京帝室博物館編纂
撮影:小川一真、発行所:小川一真出版部、1906年刊より 太和門、撮影:1901年 コロタイプ印刷

タイトル:
紫禁城写真展
開催場所:
東京都写真美術館地下1階映像展示室
開催期間:
2008年3月29日〜2008年5月18日

宇宙の中心とまでいわれ、500年に渡って栄華を極めた中国「紫禁城」。1911年までは明・清24代にわたる皇帝の住居であり、政治の舞台として世界最大の皇宮であったが、当時は一般の人々が立ち入ることは許されず、秘密のヴェールに包まれていた。
そして1900年にその姿を撮影したのが、千円札に描かれた夏目漱石の写真でも知られる日本人写真家の小川一真である。太和門、中和殿、乾清宮・・・、プラチナを使った美しく貴重なヴィンテージプリントが織り成す小川の写真を、人気中国人現代作家、侯元超が撮影した現在の故宮の写真とともに紹介される。

撮影当時に制作された貴重なヴィンテージプリントの所在が明らかになったことに合わせ、初めて一般公開されます。美しい階調が織り成す小川の写真を、人気の中国人現代写真家、侯元超が撮影した現在の故宮の写真とともに公開します。
東京都写真美術館 広報ご担当より

『清国北京皇城写真帖』東京帝室博物館編纂
撮影:小川一真、発行所:小川一真出版部、1906年刊より 太和殿宝坐、 撮影:1901年 コロタイプ印刷

マティアス・シャーラーPurple Desksシリーズ
《Congregation for the Doctrine of the Faith》
2004-2007、写真

タイトル:
TWS青山:クリエーター・イン・レジデンス成果発表展覧会/TEAMより、
マティアス・シャーラー「Purple Desks」
開催場所:
トーキョーワンダーサイド・渋谷
開催期間:
2008年4月12日〜2008年6月15日
11:00〜19:00

トーキョーワンダーサイト渋谷では、TWS青山:クリエーター・イン・レジデンス成果発表展覧会として、マティアス・シャーラーとステファン・ディーンの個展を開催している。彼らは、レジデンスのプログラムの1つとして、国際的に第一線で活躍している方々より推薦を受けた才能あるアーティストを招聘する国際推薦人制度によって選出され来日。ジェルマーノ・チェラントの推薦により選ばれたマティアス・シャーラーは、バチカン市国、ローマ教皇庁のオフィスを撮影した写真を展示している。また、ヴィック・ムニーズ推薦のステファン・ディーンは、築地市場と渋谷の交差点を取材し再構築した作品を滞在期間中に制作して発表する。

マティアス・シャーラーPurple Desksシリーズ
《Vatican Secret Archives》2004-2007、写真


一覧へ