
小さい頃、実家のリビングでドラマを見ていて、画面が突然エッチなシーンに切り替わって気まずい経験をした人は多いのではないかと思う。
大人になって、セックスがあの時ほど特別なものではなくなった今でも、やはり家族でそのことについて話すのは気が引けるし、逆に同性の友人と話す時は、妙に話が露骨で大胆なものになってしまって、後で「言い過ぎた」と後悔することも多い。異性との間では、セックスに対する微妙な価値観の違いが2人の関係を残酷にわかつことも・・・。
それでも僕たちは、どうしてこんなにもセックスに興味津々なんだろう?
6月14日から、アミューズCQNで公開中の『JUNO ジュノ』は、16歳の女子高生ジュノが興味本位でたった1回行ったセックスから妊娠してしまう、という設定。妊娠が発覚してから生まれるまでの9ヵ月間、生まれてくる子供について大人たちとやり取りしながら、身も心も大人へと成長していくジュノ。本作では、個人的な事情でやってしまったセックスが、妊娠というイコンと結びつき、あっという間にたくさんの人を巻き込む現象へと変化する様子が丁寧に描かれている。ジュノを取り巻く大人たちの温かい視線にも注目だ。
シネ・アミューズ・イースト&ウエストでは、5月24日から7月4日まで、『世界で一番美しい夜』が公開中だ。監督である天願大介が、「個人的に撮りたい作品を自由に作ろう」と決めて取り組んだという本作は、ワケありの人々が集う辺境の村・要村で繰り広げられるセックスにまつわる寓話=妄想。映画の終盤では、‘不思議なオーラと、優しそうだがどこか悲しげな魅力を持つ’スナックの美人ママが、村を「光」で照らし出す、という。人間の原初的な衝動としてセックスを礼賛する作風が、画家・スズキコージを採用した人体描写にも溢れている。
また、ユーロスペースでも、6月21日から、『コミュニストはSEXがお上手?』と題して、東西ドイツのベッド事情を比較するドキュメンタリーが公開されている。こちらは、同じ民族でありながら、ベルリンの壁で分断された東西ドイツのセックス観を追うもの。回数やテクニック、オルガスムスなどの調査から、東ドイツの奔放なセックスカルチャーが明らかにされる。社会主義と資本主義という異なる文化圏が、これほどもセックスに影響を与えているのには驚かざるを得ない。
今回紹介する3作品をまとめると、「セックス」は、子供を作る行為であり、相手を癒すコミュニケーションであり、社会の仕組みに植え付けられたイデオロギーである。…ますますわからなくなる前に、とりあえず、意中の相手を映画デートに誘ってみては?2人だけの答えが見つかるかも。

2007年/アメリカ/96分/配給:20世紀フォックス映画/©2007 TWENTIETHCENTURY FOX
- タイトル:
- JUNO ジュノ
- 上映場所:
- アミューズCQN
- 上映期間:
- 2008年6月14日〜
- 監 督:
- ジェイソン・ライトマン
- 出 演:
- エレン・ペイジ、マイケル・セラ、ジェニファー・ガーナー、ジェイソン・ベイトマン、アリソン・ジャネイ、J.K. シモンズ
本作の脚本を担当したディアブロ・コディは、今回が初の脚本で、2007年度アカデミー賞脚本賞を受賞した。彼女のブログの読者だった映画プロデューサー、メイソン・ノヴィックが声をかけたことが、全ての始まりだった。コディはテレホンセックスオペレーターと保険コーディネーターの仕事の合間、2〜3週間の間に『ジュノ』を書き上げたという。ハイティーンの鋭い感受性を、現代的な口調で表現。多くの共感を生んでいる。

©2007 TWENTIETHCENTURY FOX

2007年/日本/160分/配給:ファントム・フィルム/宣伝協力:ビー・ウイング
- タイトル:
- 世界で一番美しい夜
- 上映場所:
- シネ・アミューズ・イースト&ウエスト
- 上映期間:
- 2008年5月24日〜2008年7月4日
- 監 督:
- 天願大介
- 出 演:
- 田口トモロヲ、月船さらら、市川春樹、松岡俊介、佐野史郎、柄本明、三上寛、石橋凌、美知枝、斎藤歩、江口のりこ
本作を監督した天願大介氏は、今村昌平氏の息子としても有名。スナックのママを演じる月船さららの、セクシーな魅力は必見である。シネアミューズイースト&ウエストには、男女の象徴を祀った子宝神社として有名な夫婦木神社の祭壇がもうけられ、映画の成功を祈願している。
「未来を作るのは思想でも政治でもない。セックスだよ。
あんた、最後に素敵なセックスをしたのはいつだ?」天願監督


2006年/ドイツ/52分/配給:パンドラ/©2006 ma.ja.de. filmproduktion/MDR/ARTE
- タイトル:
- コミュニストはSEXがお上手?
- 上映場所:
- ユーロスペース
- 上映期間:
-
2008年6月21日〜
10:00(7月19、20、21日のみ)
21:10 - 監 督:
- アンドレ・マイヤー
- アニメ :
- モーション・ワークス
この作品は、東西ドイツの歴史を「セックス」という側面から捉えた、興味深い科学ドキュメンタリーである。2006年に製作され、テレビでオンエアされ話題となった作品で、日本でも山形国際ドキュメンタリー映画祭2007の<東西ドイツ戦後史考察>のプログラム中の1本として上映され入場制限が出るほどの人気を博した話題作。
毎週月曜日に来場すると、全員に“おっぱいチョコレート”がプレゼントされる。