レコメンド 今週、編集室が推薦するカルチャー

2008年に公開された映画作品を振り返ってみると、7月から上映が始まった『崖の上のポニョ』は、現在まで全国で公開が続く大ヒットを記録。また、『カンフー・パンダ』『天安門、恋人たち』など、カンフーや中国史を題材に扱った作品が続々と公開され、中国系映画の隆盛が北京オリンピックを盛り上げた。その一方、バッドマンシリーズ最新作『ダークナイト』では、バッドマンが犬に追い散らされるラストシーンが印象深く、閉塞感の漂う暗い作風が現代に生きる私たちの深い共感を呼んだ。邦画では、じんわりと心に響くヒューマンドラマ『ぐるりのこと。』がロングラン上映され、『靖国』『コドモのコドモ』は様々なトラブルを乗り越えて劇場での公開にこぎ着け、話題となった。
今回は、現在延長公開中の話題作を追い、また、新しく公開を開始する注目作をピックアップ。2009年を迎えるにあたって、映画版「ゆく年くる年」を整理した。見逃した話題作、今後の注目作をチェックして、年末年始のお出かけに備えて欲しい。

©2008 Three Kingdoms Ltd.©Bai Xiaoyan

11月に公開され、『崖の上のポニョ』と並んで興行ランキング5週連続第1位を獲得した大ヒット作『レッドクリフ Part I』の公開が、シネフロントから引き継ぐ形でヒューマントラストシネマ文化村通りにて開始された。『フェイス/オフ』『M:I-2』のジョン・ウー監督が中国の歴史書「三国志」の映画化に挑むとあって、中国が国家を挙げて取り組んだ本作。監督ジョン・ウーが、10億円もの私財をつぎ込んでの追加撮影を敢行したことでも話題になった。ロケ地に選ばれたのは、河北省の易県。ダムの中にある平坦な島に12メートルの小山を作成し、その上に曹操軍の要塞を建築した。映像化不可能と言われる水上戦は、VFXのスペシャリスト、クレイグ・ヘイズが担当。まず、実物大の戦艦2隻と8隻の船が撮影され、CGによって2000隻に増船、さらに炎上させるなど、1000ヶ所を超えるCGシーンによって迫力のある水上戦を作り出した。5時間を超える長編になってしまったため、2部構成に分けられた本作だが、いよいよ赤壁決戦が繰り広げられる『レッドクリフ Part II』は、2009年4月10日の公開が決定している。

2008年/アメリカ・中国・日本・台湾・韓国/145分/配給:東宝東和、エイベックス・エンタテインメント/©2008 Three Kingdoms Ltd.©Bai Xiaoyan

タイトル:
レッドクリフ Part1
上映場所:
ヒューマントラストシネマ文化村通り
上映期間:
2008年12月26日〜 10:15/12:55
※1/1(木)休館
※1/17(土)以降は劇場まで
監  督:
ジョン・ウー
出  演:
トニー・レオン、金城武、チャン・フォンイー、チャン・チェン、ヴィッキー・チャオ、フー・ジュン、中村獅童(特別出演)、リン・チーリン(映画初出演)

©2008 映画「おくりびと」製作委員会

第32回モントリオール世界映画祭でグランプリを獲得し、一気に話題となった作品が、同じくヒューマントラストシネマ文化村通りでモーニングショー中の『おくりびと』だ。本作は、遺体を棺に納める"納棺師"という一見地味で触れ難いイメージの職業をテーマにしながらも、ユーモア溢れる感動作。舞台は納棺協会の支局がある庄内平野だが、ロケハンのポイントは“やがて滅びゆくもの”だったという。銭湯など、現代から取り残されたように寂しく、しかしだからこそ温かい、そんな場所が次々とカメラに収められた。またエンド・タイトルには、新米納棺師を演じた主演の本木雅弘の納棺技術が1カット長廻しで捉えられているのにも注目。撮影中、監督の「カット」の声と同時にスタッフが拍手を送ったという様式美の極致を、大画面で堪能したい。

2008年/日本/130分/配給:松竹/©2008 映画「おくりびと」製作委員会

タイトル:
おくりびと
上映場所:
ヒューマントラストシネマ文化村通り
上映期間:
2008年11月29日〜2009年1月9日
10:00
※1/1(木)は休館です。
監  督:
滝田洋二郎
出  演:
本木雅弘、広末涼子、余貴美子、吉行和子、笹野高史、山崎努

『おくりびと』©2008 映画「おくりびと」製作委員会

©2008 TWENTIETH CENTURY FOX

さて、お正月に向けての新たな話題作が、渋東シネタワーにて公開中の『地球が静止する日』だ。『ウエスト・サイド物語』の巨匠ロバート・ワイズが監督した1951年の作品『地球の静止する日』がベースとなった本作。原作は、映画史上最もリアルな視点で宇宙からの使者を描いた名作として知られている。「人類が滅亡すれば、地球は生き残れる」というテーマはそのままに、本作の見所は最先端のVFX技術を駆使したスリルと臨場感のあるスペクタクル・シーンの数々だ。無数の謎の物体が猛烈な勢いで増殖しながら地上のあらゆるものを跡形もなく溶かし去っていくディザスター描写や、斬新な宇宙船の巨大球体のビジュアルなど、あらゆるディテールに緻密なリアリティが宿る。こういう作品こそ、大きなスクリーンと高性能な音響システムで味わいたいもの。

2008年/アメリカ/104分/配給:20世紀フォックス映画/©2008 TWENTIETH CENTURY FOX

タイトル:
地球が静止する日
上映場所:
渋東シネタワー
上映期間:
2008年12月18日〜 10:30/13:00/15:30
/(18:00)/(20:25)
※大晦日は(18:00)/(20:25)の回が休映。
※1/10(土)から時間変更の可能性があります。
監  督:
スコット・デリクソン
出  演:
キアヌ・リーブス、ジェニファー・コネリー、ジェイデン・スミス、キャシー・ベイツ

©2007 KIMMEL DISTRIBUTION,LLC All Rights Reserved

また、年末年始には疲れた心と体をほっと休ませたい人も多いだろう。そんな時におすすめなのが、シネクイントで公開を開始した異色のヒューマン(?)ドラマ『ラースと、その彼女』。感情の迷路をさまよい続けて人生を謳歌できない青年ラースと、彼を取り巻く人々のセンチメンタルな心の再生物語である。ありがちなドラマと本作との決定的な違いは、青年の彼女ビアンカが、インターネットで注文した等身大の「リアル・ドール」だという点。家族は「彼女」として人形を紹介するラースに始めは戸惑いを隠せない。しかし医師の言葉をきっかけに、家族・友人・そして地域の人々が、ビアンカを生身の女のコとして扱うことに協力。固定概念を破ってラースを受け入れる人々の優しさが、表情の無い人形への違和感と合わさって、「人間らしさ」とは何なのか、をあらためて考えさせてくれる快作である。

2007年/アメリカ/106分/配給:ショウゲート/©2007 KIMMEL DISTRIBUTION,LLC All Rights Reserved

タイトル:
ラースと、その彼女
上映場所:
渋谷シネクイント
上映期間:
2008年12月20日〜
10:30/12:45/15:00
/17:15/19:30
※12/31(水)は19:30の回が、1/1(木)は10:30の回が休映となります。
監  督:
クレイグ・ギレスビー
出  演:
ライアン・ゴズリング、エミリー・モーティマー、ポール・シュナイダー、ケリ・ガーナー、パトリシア・クラークソン・・・and ビアンカ(リアルドール)

『地球が静止する日』©2008 TWENTIETH CENTURY FOX


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