レコメンド 今週、編集室が推薦するカルチャー

9連休となったところも多かった2008-09の年末年始は、晴れの日が続き、外出した人も多かったのではないだろうか。
2009年第一週の週末映画興行収入ランキングを振り返ってみると、1位に輝いたのは、地球にたった1人残された‘ゴミ処理ロボット’を描いたSFアニメ『WALL・E/ウォーリー』。今回は、ピクサー制作のこの最先端CGアニメの魅力を探りながら、アニメーションというメディアの背景にある歴史、果たしてきた役割について考えてみたい。

©2008 WALT DISNEY PICTURES/PIXAR ANIMATION STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED.

渋東シネタワーで上映中の『WALL・E/ウォーリー』は、アンドリュー・スタントン監督の最新作。スタントン監督率いるピクサー・アニメーション・スタジオは、アカデミー賞長編アニメーション賞にも輝いた『ファインディング・ニモ』で、それまで困難とされてきた「水」の表現を水槽/深海/浅瀬に描きわけた気鋭のCGアニメ?ション制作会社である。
本作のCGで特に注目したいのは、ロボット描写。
今回のロボットには、「口」が描き込まれておらず、

©2008 WALT DISNEY PICTURES/PIXAR ANIMATION STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED.

つまり主人公であるロボットたちは、(ほとんど)言葉を話さないのだ。本作前半部分では、たった1人で地球のゴミを処理していくロボット・ウォーリーの日常が、まるでサイレント映画のように丹念な動きで描写される。
また、言葉にできない感情の動きを映像とともに表現するのが、ロボット達の機械音。サウンド・デザインは、『スター・ウォーズ』のR2-D2をはじめ『インディ・ジョーンズ』『エイリアン』を手がけたベン・バートだ。 言葉ではなく、動きと音で見事な情感を紡ぎだす『WALL・E/ウォーリー』。 ピクサーが伝えるCGアニメの最先端を是非肌で感じてみてほしい。

2008年/アメリカ/103分/配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ・ジャパン/©2008 WALT DISNEY PICTURES/PIXAR ANIMATION STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED.

タイトル:
WALL・E/ウォーリー
上映場所:
渋東シネタワー
上映期間:
2008年12月5日〜2009年1月16日
日本語字幕版
14:35/17:10/19:35
日本語吹替版
9:30/12:00
監  督:
アンドリュー・スタントン
声の出演:
シガニー・ウィーバー、ジェフ・ガーリン、フレッド・ウィラード

ヘリオシネグラフの円盤(19世紀)東京都写真美術館蔵

想像力の深まりと技術の進化の果てしなき戦いを繰り広げる現代アニメの世界だが、東京都写真美術館では、そんなアニメ?ションの表現技法の起源を思い出させてくれる展覧会『イマジネーション 視覚と知覚を超える旅』が開催中だ。
会場には、石油ランプを光源にしてガラス版に描かれた絵を、レンズを通して写し出す「マジック・ランタン」や、回転する円盤を、手前の黒い盤にあいた細いスリット越しに見ると円盤上の絵が動いて見える「ヘリオシネグラフ」など、視覚の仕組みを利用することで、虚像の視覚化を実現してきた歴史的装置や資料映像が多数登場。
また、それらの古典作品に並べて、当時の映像装置にヒントを得て制作された現代作家、宇川直宏、近森基 ++ 久納鏡子、渡辺水季らの作品も展示。想像の世界が虚像を結ぶ瞬間の原初的な喜びが、時代を超えて今に伝わってくる。

宇川 直宏 《Fresh Fruits, Vegetables & ANIMA MxKxM》 2003年 ©Disney 東京都写真美術館蔵

タイトル:
映像をめぐる冒険vol.1 イマジネーション 視覚と知覚を超える旅
開催場所:
東京都写真美術館
開催期間:
2008年12月20日〜2009年2月15日
10:00〜18:00
※木・金は20:00まで
※入館は閉館の30分前まで
料  金:
一般 500円/学生 400円
/中高生・65歳以上 250円



エティエンヌ=ジュール・マレ<無題(クロノフォトグラフィ)>1890年頃
フランス人生理学者 E.=J.マレによる連続写真。一枚のガラス板に連続する動作が記録されている。 東京都写真美術館蔵

©2008 TWENTIETH CENTURY FOX

人形劇が社会風刺や体制告発の役割を担ってきた歴史を持つチェコでは、その人形劇に取って代わる表現として、アニメ?ションが独自の発達を遂げてきた。
平面画ではなく人形(パペット)のコマ撮りという形で進化したチェコアニメ史を伝えるドキュメンタリーが、ユーロスペースで公開中の『チェコ人形アニメの巨匠たち』である。
本作は、戦後最初のカートゥーンスタジオ「トリック・ブラザーズ」の責任者でもあったアニメ作家イジー・トルンカや、チェコのメリエス(※フランスSFXの創始者)と評されたカレル・ゼマンといった、世界のアニメーション史にも残る巨匠たちの活躍を関係者の証言で伝える。また、現在も活躍するヤン・シュバンクマイエル、イジー・バルタといった監督たちの日本未公開の作品や制作中の映像も公開。時代に翻弄されながらも、高い技術と優れたイマジネーションの力で発達してきたチェコアニメの秘密を伝える作品となっている。

2008年/チェコ共和国/68分/配給:アット・アームズ/photo:『りんごのお姫様』

タイトル:
チェコ人形アニメの巨匠たち
上映場所:
ユーロスペース
上映期間:
2008年12月20日〜2009年1月16日
21:10
監  督:
ブジェチスラフ・ポヤル
出  演:
ブジェチスラフ・ポヤル、イジー・バルタ、イジー・クビチェク、ミハエラ・メルトヴァー、ヴラヂミール・オピエラ、ヴラスタ・ポスピーシロヴァー、ヤン・クロス、ミハル・ジャプカ、イジー・ヴォイタ、イジー・ノヴォトニー

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