渋谷文化 PROJECT

最近では、監督第2弾「少年メリケンサック」の公開や、TBSドラマ「流星の絆」の脚本、ウーマンリブ公演「七人は僕の恋人」の作・演出などで知られる「宮藤官九郎」。映画監督・脚本、ドラマ脚本、映画俳優、舞台役者、ミュージシャンなど「いったいいつ寝ているんだろう？」と心配になるくらい同氏が関わった公開作品は多く、活躍ジャンルの幅広さには驚くばかり。そして同時に、幅広いジャンルそれぞれの根底にある、笑い、哀しみ、喜びなどが渾然一体となった独自の世界観こそ、同氏の大きな魅力の１つである。今回は、渋谷で公開中の「クドカン」作品をピックアップ。映画／舞台／音楽という異なる表現ジャンルが、同氏を通して１つになる。

PARCO劇場では、5月31日まで宮藤官九郎が演出、出演する舞台「R2C2(アールツーシーツー) 〜サイボーグなのでバンド辞めます！〜」を上演中。作中では、音楽がアロマテラピー的な役割を果たすようになった近未来の渋谷を舞台に、冷凍保存から目覚めた元ロック・バンドのリーダーとサイボーグが、笑いあり涙ありのドラマを繰り広げる。ザ・フーのロック・オペラ「トミー」を愛聴する宮藤氏が、かねてから手がけてみたいと考えていたという音楽ジャンル「ロックオペラ」の新作。音楽には、宮藤氏も参加するロック・バンド「グループ魂」のギタリストの富澤タクが参加して、キャストには、同ボーカリストの阿部サダヲ、ドラマーの三宅弘城をはじめ、森山未來、松田龍平らに加えて宮藤氏本人も登場する。音楽と演劇のミックスジャンルが、宮藤氏独自の世界観によって料理される瞬間は見のがせない。

また、渋谷シネクイントで今月16日から公開が始まった「鈍獣」は、2004年に岸田國士戯曲賞を受賞した宮藤官九郎脚本の舞台「鈍獣」を映画化した作品。殺しても殺しても死なないし、殺されかけている事にも気づかない「鈍感」な凸やんと、凸やんの殺害を繰り返し試みる男2人という特殊な設定から、善意か悪意かも分からないものに追い込まれる人間像をあぶり出す。監督は、多くの広告賞を受賞する気鋭の映像クリエイター細野ひで晃氏。今回の映画化で使用された脚本は、「『鈍獣』は自分の中では完結したもので、再演もやらない」と決めていた宮藤氏が最終的に自ら映画用に練り直した。作品を見終わった宮藤氏は、「なるほど！面白い！こうなったか！凸やんがなんで死なないのかを、浅野さんをみて分かりました」とコメント。宮藤氏独特のフレーズ回しを体現する、異色俳優たちの怪演ぶりに注目したい。 最後に宮藤氏がちょい役刑事姿でスクリーンに登場するのが、5月23日に渋谷HUMAXシネマで公開予定の映画「インスタント沼」。担当していた雑誌が休刊になり、仕事を辞めた主人公ハナメが人生をやり直そうと身辺整理を始めるところから始まる本作は、ハナメが父親探しから骨董品屋へ迷い込み、奇妙なアドバイスをきっかけに人生の調子を取り戻して行くという破天荒なストーリー。監督したのは、TVドラマ「時効警察」シリーズがヒットした三木聡。主演はその「時効警察」にも主演した気鋭の女優、麻生久美子が務める。宮藤氏は刑事役で出演。ほかにも風間杜夫、加瀬亮、松坂慶子、と個性派がそろった脇役陣について、三木監督は「とにかく無我の境地で演じてくれる方を選んだ」とコメント。宮藤氏を始めとした豪華な脇役陣が、作中のどこで登場してくるのか、密かに心待ちにするのも楽しいにちがいない。

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