渋谷文化 PROJECT

芸能人の突然の結婚や交際宣言など、世間では恋愛熱の高まりを伝えるうわさ話が盛りだくさん。夏への準備期間となるこの時期は、渋谷で上映中の映画にも「恋愛」を描いた作品が続々と公開を控えている。もちろん「恋愛」といってもそのスタイルはキャラクターや環境によって様々。今回は、恋の気分を盛り上げる要素のひとつとして重要な「ロケ地」に注目し、場所が恋愛に与える空気感の違いを探ってみた。バカンスのバルセロナ、戦後のドイツ、田園の青森と、3場面で展開される色とりどりの恋愛劇に、理想の恋を見つけてみては？

Bunkamuraル・シネマでは、ペネロペ・クルスがアカデミー助演女優賞に輝いた話題作「それでも恋するバルセロナ」（ウディ・アレン監督）を6月27日から公開する。
同作の舞台は、地中海に面したスペインの観光都市バルセロナ。バカンスに来た親友2人が画家の男と恋に落ち、そこに男の元妻もやって来て・・・と、作中では１人の男と3人の女による複雑で微妙な恋愛劇が展開する。
男はそれぞれ異なった関係を築きたいと願うセクシーな理想主義者。女3人は、１人は慎重派で婚約中、もう１人は恋愛体質で情熱家、そして男を虜にする破天荒な美女の元妻と、性格も趣向もバラバラ。アレン監督特有の絶妙なセリフ劇が、大人4人の恋愛観、駆け引きをコミカルに伝える。
また監督は「バルセロナをキャラクターの１人にしたような物語にしたかった」ともコメントし、登場人物たちはサクラダ・ファミリア、ミロ美術館など名所各地を巡回する。バルセロナ独特の開放的でロマンティックな空気感が、大人の恋を盛り上げる。

シネフロントでは、6月19日から「愛を読むひと」（スティーヴン・ダルドリー監督）を公開する。
同作の原作は、胸をかきむしるラブストーリーとして世界的に有名なドイツ小説「朗読者」。1958年〜1980年のドイツを舞台に、15歳のマイケルが21歳年上のハンナと恋におちた1958年から、マイケルが大学生になった1966年、結婚と離婚を経験した1976年と、マイケルの成長を通して本編が進む。一方のハンナは、36歳でマイケルと関係を持ち、その後戦犯で捉えられ、無期懲役の判決を受け獄中生活を送る。
作中では、マイケルがハンナのために繰り返す「朗読」作業をモチーフに、時間を経て熟成されるハンナへの思いが描かれる。暴かれたハンナの過去への怒りと悲しみ、彼女の秘密に気づきながら助けられなかった悔恨、今なお忘れられない愛の記憶・・・様々な想いに引き裂かれながら、朗読を続けるマイケル。 情熱的な欲望から始まった恋が、無償の愛へとゆっくりと変化していく様子が、「ドイツ人スタッフと共に、ドイツで製作」することにこだわったとダルドリー監督の指揮の下、戦後ドイツの静かな空気とともに伝わってくる。

ユーロスペースで大ヒット上映中の「ウルトラミラクルラブストーリー」は、自主制作映画「ジャーマン＋雨」が自主としては異例の全国劇場公開を果たした気鋭の新人、横浜聡子監督の商業映画デビュー作。
監督の出身地である青森を舞台に、同じく青森出身の俳優・松山ケンイチが、津軽弁で主人公を熱演して話題を呼んでいる。本編は、松山さん演じる農家の青年が、麻生久美子演じる東京から来た保育士に生まれてはじめての恋をするという、タイトル通りのラブストーリー。しかし同作が「ウルトラミラクル」なのは、町子が元カレの「首」を探して「カミサマ」と呼ばれる占い師に会うために青森にやって来たという設定や、「両思いになりたい！」と願う陽人が、首なし人間と会話したり「変身」したりという摩訶不思議な展開。
「森で熊に会って、ラストシーンが浮かんで、脚本が完成しました」と監督が話す同作には、意味や常識は必要ない。のどかな青森の田園風景に生き生きと駆け回る陽人の生命力に圧倒されたい。

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