レコメンド 今週、編集室が推薦するカルチャー

私たちは、寒い冬を乗り越えるためのエアコンや、自家用車、年中スーパーに並ぶ南国の果物など、豊かで便利な暮らしを日常的に追い求めて生きている。もちろん自分で稼いだお金を使ってどういう暮らしを手に入れるのかは個人の自由。昼夜働くために更に心地いい環境を求めて電気を灯してエアコンをつけ、そうやってエネルギーを消費するのは、現代社会に生きる日本人の多くが日常的に行なっている行為である。

一方で昨今の、大雨、台風など異常気象が気になる。温室効果ガスの影響による地球規模での温暖化が、このような自然現象の原因の一つと指摘する人もいる。このままではなにか良くない感じがするけれど、どうしたらいいのかわからない。私たち人間は、一度便利さや豊かさを手に入れてしまったら、もうその前の暮らしに後戻りすることはできない生き物なのかもしれない。

今回は、日常生活からは見えない消費の「裏」を伝えるドキュメンタリー作品をピックアップする。「豊かさ」が自分の手元にやってくるまで、どんな人達がどんな思いで働き、どのようなエネルギーが使われ、それらがどんな問題を巻き起こしているのか。私たちの快適な日常生活は地球の問題と地続きであり、地球の変化を肌で感じるようになった現在、100年後の未来へ向けて、私たちは何を選択していくべきなのか。
今回紹介するのは、鮮やかな解決策が見出されている訳ではないこの問題についての現状を多角的に伝えてくれる作品たち。持続可能な社会へ向けて第一歩を踏み出すために、まず、知り、考えてみる時がきている。

持続可能?×エネルギー

タイトル
ミツバチの羽音と地球の回転
開催場所
ユーロスペース
開催期間
2011年2月19日〜3月11日
開催時間
土日
10:00/12:40/15:50/18:30
平日
10:30/13:10/15:50/18:30
監  督
鎌仲ひとみ

ミツバチの羽音と地球の回転

2010年/日本/135分/配給=グループ現代


ユーロスペースでは、ドキュメンタリー作家鎌仲ひとみさんの最新作「ミツバチの羽音と地球の回転」を公開している。「ヒバクシャー世界の終わりに」「六ヶ所村ラプソディ」と合わせて、核をテーマにした鎌仲さんの三部作最終章となる同作。今回の舞台は脱・原発を国民投票で決めたスウェーデンと、原子力発電所の建設計画が進行中の山口県。まったくかけ離れた場所で生きる人間の営みを一本の映画にすることで、日々の生活が環境破壊につながるというジレンマに直面する私たちが、持続可能な社会へ向けてどのようなエネルギーを選択するのかを問いかける。

持続可能?×食

タイトル
ありあまるごちそう
開催場所
シアター・イメージフォーラム
開催期間
2011年2月19日〜
開催時間
15:00/17:00/19:00
監  督
エルヴィン・ヴァーゲンホーファー
出  演
ジャン・ジグレール、ピーター・ブラベック、カール・オトロック

ありあまるごちそう

2005年/オーストリア/配給:アンプラグド/©Allegrofilm 2005


シアター・イメージフォーラムでは、飢餓問題を独自の視点で捉えた話題作「ありあまるごちそう」が公開中。オーストラリアではまだ食べられるパンを毎日廃棄処分し、その量は年間2000トンにもおよぶ。またスイスではパンの原材料の4/5を輸入に頼り、その輸入元であるインドでは、2億人以上の人々が栄養失調に苦しんでいる。いまもなお世界各国で同時進行する飽食と飢餓。同作では、食料流通のしくみを各地で観察することでみえてくる世界の食のアンバランスを紹介。私たちの食べ物が、国をまたいで移動していく様子から、飢餓問題が直面している現状をどのように理解し、変えていくべきなのか、考えるきっかけにしてみては。

持続可能?×自然

タイトル
レイチェル・カーソンの感性の森
開催場所
UPLINK X
開催期間
2011年2月26日〜
開催時間
11:00/12:15/16:00/17:15
監  督
クリストファー・マンガー
出  演
カイウラニ・リー

レイチェル・カーソンの感性の森

2008年/アメリカ/55分/配給:アップリンク


UPLINK Xでは、科学者レイチェル・カーソンの自然への新鮮な驚きを綴った「レイチェル・カーソンの感性の森」を公開。レイチェル・カーソンは1962年に出版されベストセラーとなった著書「沈黙の春」の中で、世界で初めて化学物質が環境に与える危険性を告発した人物。今回の原作で、カーソン遺作となった「センス・オブ・ワンダー」は、カーソンが感じた自然に対する神秘さや不思議さを紹介する本である。映画はカーソンが余生を送ったメイン州の海岸を舞台に、彼女が発見した小鳥たちのコーラス、木の芽の感触、海辺のにおいなど豊かな自然を紹介。数多くの生命を育む地球は、自分たち人間のものではない。そんな当たり前の事実を思い出す。


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