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「渋谷シネクイント」で公開中の園子温監督作「ヒミズ」は、昨年3月の震災を経て急遽脚本を変更、被災地でロケ撮影を展開するなど「震災後の日本」を描いた作品として国内外から評価を集めた。2011年は東日本大震災を始め、タイの大洪水、アラブの反政府デモ、ギリシャ危機など、自然災害から金融、政治に至るまで幅広いフィールドで歴史に残る出来事が数多く発生した一年。世相をいち早く反映する娯楽芸術・映画の世界の表現者たちからしてみれば、これまで積み上げてきた世界観、価値観が大きく揺らいだ一年だったとも言えるのではないだろうか。そして今年はマヤの予言による人類滅亡の年と指摘され、今後の世界がどのようになっていくのか、漠然とした不安を抱えている人びとも多いのではないか。
今回は、渋谷で公開される映画の中から「終末感」が描かれた作品をピックアップ。当然ながら現在生きている私たちのだれ一人として体験したことのない「終末」。映画監督たちがその感覚をどのように捉え、表現してみせるのか。未曾有の情勢が蔓延する世界の中で、監督たちが生み出す未知の感覚に、身を委ねてみてはどうだろう?

終末感×生と死の関係

タイトル
生きてるものはいないのか
上映場所
ユーロスペース
上映期間
2012年2月18日〜
上映時間
上映スケジュールの詳細は劇場まで
監  督
石井岳龍
出  演
染谷将太、高梨臨、白石廿日、飯田あさと、高橋真唯、田島ゆみか、池永亜美、礼内幸太、長谷部恵介、師岡広明、羽染達也、青木秀李、田中こなつ、渋川清彦、津田翔志朗、芹澤興人、杉浦千鶴子、村上淳

生きてるものはいないのか

2011年/日本/113分/配給=ファントム・フィルム/(C) DRAGON MOUNTAIN LLC.


ユーロスペースでは2月18日から、石井岳龍監督の10年振りの長編新作「生きてるものはいないのか」がスタートする。1980年代に「狂い咲きサンダーロード」「逆噴射家族」など独自の作風で話題作を次々と生み出したジャパニーズ・ニューウェイブの旗手、石井監督。石井聰互から石井岳龍へと改名して挑む新作は、五反田団主宰の劇作家・前田司郎さんが手がける同名戯曲が原作だ。
大学のキャンバスを舞台にしたストーリーは、「理由もなく人々が次々と死んでいく」というもの。作中では前田作品独特の「脱力系」会話劇に、石井監督ならではのパンク表現が応戦。日常では誰もが見ないようにしている「生と死の当たり前の関係」が、独特の世界観のもとでクールにあぶり出される。

終末感×精神世界

タイトル
メランコリア
上映場所
TOHOシネマズ 渋谷
上映期間
2012年2月17日〜
上映時間
上映スケジュールの詳細は劇場まで
監  督
ラース・フォン・トリアー
出  演
キルスティン・ダンスト、シャルロット・ゲンズブール、アレクサンダー・スカースガード、キーファー・サザーランド

メランコリア

2011年/デンマーク、スウェーデン、フランス、ドイツ、イタリア合作/135分/配給:ブロードメディア・スタジオ/(C)2011 Zentropa Entertainments ApS27


TOHOシネマズ渋谷では2月17日から、ラース・フォン・トリアー監督の最新作「メランコリア」が公開される。トリアー監督が自らのうつ病体験記を投影したという同作は、結婚を控えた主人公ジャスティンの憂鬱な気分と、巨大な惑星が地球に接触するまでを同時並行に描き出す異色作。惑星の接近は「世界の終わり」を意味する一方で、近づいてくる惑星の美しい姿に「魂の救済」を感じるジャスティン。ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」をバックに、終焉との隣り合わせに成り立つ孤独と絶望の深淵を、圧倒的な映像美で描き切った同作は、観る者の奥底にある暗部を抉りとる。

終末感×日常風景

タイトル
ニーチェの馬
上映場所
シアター・イメージフォーラム
上映期間
2012年2月11日〜
上映時間
10:45/13:50/16:55/20:00
監  督
タル・ベーラ
出  演
エリカ・ボーク、ヤーノシュ・デルジ

ニーチェの馬

ハンガリー=フランス=スイス=ドイツ/2011年/154分/配給:ビターズエンド


シアター・イメージフォーラムでは2月11日から、ハンガリー生まれの異才タル・ベーラ監督が「最後の作品」に位置づけた問題作「ニーチェの馬」が公開される。トリノの広場で泣きながら馬の首をかき抱き、そのまま発狂したとされる哲学者・ニーチェの逸話をきっかけに生まれた同作。「あの馬はどうなったのか」という疑問から、作品の舞台は農夫とその娘と馬が農場で暮らす様子へとスライドする。農夫とその娘は重労働でぎりぎりの生計を立てている。彼らの唯一の収入源は馬と荷馬車で、父は荷馬車仕事を、娘は井戸で水を汲み家事をする。貧しく単調な日々の生活を静かに繰り返しながら、ある日馬が餌を食べなくなり、ある日井戸が枯れる。単調だった関係がゆっくりと崩壊を迎える時、そこには生と死に向き合う静謐な世界が広がっている。



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