SHIBUYA BUNKA BOOKMARK

映画「ユナイテッド93」

テレビでは伝わらない「現場」の空気

現在はタレント活動を休止し、撮影場所や個人を対象としたお祓いなども行っている井上さん。
「9.11」の際にハイジャックされた旅客機内の人間模様を描いた映画『ユナイテッド93』。
○渋谷で一押しのお店はセルリアンタワーの先にあるシーフードレストラン「Delfini」(渋谷区桜丘町30-15-101)。「アットホームな雰囲気で楽しめる」とのこと。

長耀寺住職・井上実直さんのbookmarkは「ユナイテッド93
UPLINK Xで9月23日より公開される映画『Fragment』は、六本木にある長耀寺の住職である井上実直さんがグラウンド・ゼロを訪れる様子を中心に描いたドキュメンタリー。世界でも有数の荒行「日蓮宗100日大荒行」に入行する前から撮影された映像は、修行を終えて修法師となり、グラウンド・ゼロやパール・ハーバーで祈祷を行うまでを追っている。その井上さんのbookmarkは、2001年の9月11日に実際にハイジャックされた旅客機の当時の状況を描いた映画『ユナイテッド93』。この映画はハイジャックされた4機のうち、目標に激突することなく墜落した「ユナイテッド航空93便」に乗り合わせた乗客の家族の証言などを元に作られたという。「遺族の人や、実際に対応にあたった軍部の人などが出演することによって、そこにいる人たちの心の機微や刻一刻と移り変わる緊迫した状況など、ニュースの映像からは絶対にわからない現場の空気が伝わってくる。コロンバイン高校の事件をテーマにした映画『エレファント』が、一つの事件を個人の経験の集合として描いたような感覚とも似ていて、今までとは違った視点からあの事故を知ることができた」と感想を語る。仏門に入る前はタレントとしてテレビの仕事などもしていた井上さんにとって、テレビ画面から伝わる現実味のない世界と実際の現場との温度差を人一倍感じていたからこそ、この映画が印象的だったのかもしれない。

MOVIE'S INFORMATION

井上さんがグラウンド・ゼロを訪れる様子を追ったドキュメンタリー映画『Fragment』(写真右)を、井上さんは「個人的な記録映画」と表現する。「よく反戦映画のように捉えられがちだけれど、この映画は何か強いメッセージを訴えるためのものではなく、ただ一個人の日記のようなもの。グラウンド・ゼロの後にパール・ハーバーに行ったことに対して、『なぜバグダッドではなくハワイに行ったのか』と聞かれることもあるが、それもたまたま機会があって行っただけ。特別なことをしているわけではなく、悲惨な事件が多い時代に、この映画を通して少しでも心の在り方などを考えるきっかけになればありがたいし、知ってもらうだけでいいと思う」とこの作品の意義を語ってくれた。井上さんは通常の寺務の他にも、個人や映画の撮影場所などを対象に祈祷を行ったりもしている。「昔はお寺がもっと多くの人に開かれた場所だった。この映画をきっかけに、気軽に立ち寄れる場所として目を向けてもらえればうれしい」と井上さん。

日蓮宗 長耀寺
港区六本木6-7-20

TEL.03-3401-9588

(2006年9月19日)

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