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【6】ウナギトラベル主催 第2弾企画「渋谷駅周辺の地下工事見学ツアー」に密着取材|SPECIAL|

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昨年1月、ぬいぐるみ専門の旅行代理店「ウナギトラベル」が主催する観光企画の一環として「渋谷駅周辺の解体現場の見学ツアー」を実施し、大きな反響を呼びました。昨年のツアーから1年を経て、前回見学した「東急東横線・渋谷駅の地上駅舎」や「東急百貨店東館」の解体撤去はほぼ終了し、駅周辺の風景が着々と変貌を遂げている。

ツアー第2弾となる今回は、渋谷駅地上部の解体工事と一緒に、地下で人知れず進んでいるゲリラ豪雨対策の「雨水貯留槽」や、「渋谷川の移設」に向けた大規模な建設工事の様子を見学する特別企画を実施。2015年2月9日(月)に行われた同ツアーには、前回と同じく渋谷文化プロジェクト編集部も同行し、その当日のツアーの様子をレポートとしてお届けする。

ウナギトラベル主催 第2弾企画「渋谷駅周辺の地下工事見学ツアー」

※開催日:
2015年2月9日(月)
参加者:
6体(かあちゃん、プチ川さん、アーサー、もこちゃん、ピンクちゃん、エリザベス、かもさん)
※ガイド:
東急電鉄・渋谷開発事業部 柴山玲奈さん、梁田久美子さん
※コース:
ツアー1.地下3F相当で建設中の「雨水貯留槽」および「交通広場」
ツアー2.渋谷駅東口バスターミナル地下で建設中の「新しい渋谷川」

今回のツアー参加者は、兵庫県から参加するかあちゃん、鹿児島県から参加するプチ川さん、埼玉県から参加するアーサー、北海道からさんかするもこちゃん、埼玉県から参加するピンクちゃん、兵庫県から参加するエリザベス、兵庫県から参加するかもさんの計6名。おそろいの白いヘルメットをしっかりと被り、地下25メートルという深く巨大な地下空間へ。建設現場のツアーガイドを担当するのは、オレンジの作業着姿がよく似合う東急電鉄・渋谷開発事業部の柴山玲奈さんと、梁田久美子さんの土木女子(ドボジョ)の2人。工事の方法や進捗状況などの説明を聞きながら、いざ見学ツアーへ出発!

渋谷が抱える課題を解決するのが「基盤整備」の役割です。

見学ツアー前に、まずは再開発について学ぶ授業を実施。

梁田さん:まず、見学ツアーの前に再開発の概要についてご説明します。

参加者:先生、よろしくお願いします。

梁田さん:渋谷駅周辺の再開発の中で、私たちが担当するのは、大きな建物を建てる前の「基盤整備」というものです。

参加者:基盤整備???

梁田さん:そうですよね、非常に分かりにくいですよね。少し噛み砕いて説明したいと思います。主に私たちの仕事は地上よりも下、地下の部分です。土地の区画、土地の形を変えて、その土地の使い勝手をよくしてあげて、その土地の価値を高めてあげるという仕事を担っています。たとえば、現在渋谷駅をご覧になって分かるように、電車の乗り換えが不便だったり、バスのターミナルが複雑で「何処にいけば、どこに連れて行ってくれるのか、分からない!?」とか。また、渋谷はスリバチ状の谷地形のため、今までも大雨が降ると、スクランブル交差点付近が冠水してしまうなど、いくつも課題を抱えています。では、それをどうやって解決していけば良いのか?

参加者:うむむ……。

真剣に授業を聞くツアー参加者たち。おそろいのヘルメットがよく似合う。

梁田さん:渋谷区を中心にして学識、国交省や東京都、渋谷区の関係行政の方、私たち東急電鉄のような事業者の立場、地元の方が入って、いろいろな課題をいかに解決していけば良いかをじっくりと話し合い、まとまったものが「基盤整備方針」(※1)です。現在の工事は、この方針に基づいて進められています。

参加者:具体的には、どんな整備を行っていくのですか?

梁田さん:東急東横線と副都心線の相互直通運転が地下で始まり、今まで東横線の地上駅舎やホームとして使っていた土地が空きましたよね。この土地を利用して、やや恵比寿寄りに位置する埼京線ホームを北側へ移動し、山手線ホームと並列化。また同時に、山手線と埼京線ののりばを「島式ホーム」に整備されることで、乗り換えがたいぶスムーズになると思います。

参加者:確かに何度も階段を昇り降りして、乗り換えるのはつらいよね。

梁田さん:それから、JR山手線方面からヒカリエへ渡る橋から工事の様子が見えますが、現在、東急百貨店の中にある「銀座線ホーム」を、東側のバスターミナル上に移設される工事も進められています。さらに現況の渋谷駅の図をみてもらうと、東口のバスターミナルはかなり南北に広がり、人が歩ける空間がすごく狭くなっているが分かると思います。それを北側に集約して人が溜まれるスペースを作ったり、国道246号を拡幅するなど、建物をきれいに建てるだけが再開発ではなく、各事業が一体となってパッケージで工事をしていくことで、最終的に渋谷駅周辺地区の利便性を高めていきます。

参加者:うむ…、なるほど。

梁田さん:現況の図のピンクは東急百貨店ですが、建物が複雑にくっついて凸凹な形をしているのが分かると思いますが、将来的には、国道246号側に建物が集約する「逆T字型」(赤い点線部分)の形に建物敷地を整備していくのが大きな目標になります。

参加者:黄色で示されている「ハチ公広場」もだいぶ東側に広くなるんですね。

梁田さん:そうですね、地上ではハチ公広場など、人が溜まる駅前広場の整備が進められます。一方、地下に目を移せば、西口では「タクシープールの拡充」が大きな工事となります。ご存じの通り、西口は夜間にタクシーがすごい渋滞を起こしていますが、そのタクシー乗り場を地下に収めてあげることで、交通渋滞の発生を解消することが出来ます。

参加者:タクシーの乗降場を地下に移すというのは、良いアイデアですね。

梁田さん:西口では「タクシープールの整備」が行われますが、東口の地下では「渋谷川の移設」を行います。現在、ほぼ地上部の建物がなくなっている東急百貨店東館の下には、渋谷川が流れているのですが、それを少し東側に移設して、最終的に下水道化する工事を進めています。と同時に、地下に「雨水貯留槽」を整備して水を貯める施設を作り、ゲリラ豪雨のときに路上に水があふれ出ないための対策を施しています。

参加者:ゲリラ豪雨対策も考えているんですか、建物を建てるだけじゃないですね。どのくらいの期間をかけて整備を行っていくのですか?

梁田さん:平成23年度(2011年)から東口から本格着工が始まっていて、事業時間は平成38年度までを予定しております。東口の整備から始まり、後半で西口の工事を進めていくというスケジュールで考えています。ただ、西口の工事もだいぶ早まっていて、来年度には設計を始めようと、進めているところです。

参加者:えー、そんなに長い期間も! 地下の見えないところでも、すごい工事が続くんですね。

梁田さん:本日の地下ツアーは、すでに工事が始まっている東口の現状を見学してもらいます。さぁ、行きましょう!

「渋谷駅中心地区基盤整備方針」って何?

渋谷区は平成20年6月に「渋谷駅街区基盤整備方針」を公表し、渋谷駅周辺の大規模開発と並行し、広域な都市基盤等の検討を進め、平成23年3月に「渋谷駅中心地区まちづくり指針2010」を公表。「渋谷駅中心地区基盤整備方針」は、これらの成果を踏まえ、渋谷駅中心地区のまちづくりに必要な都市基盤についての方針を示し、災害に強く、歩いて楽しい、多様な可能性を持つ国際的な観光文化都市「渋谷」を実現する。いわば、「整備基盤方針」は、100年に一度と言われる渋谷の大規模再開発の道標なのだ!

谷底の渋谷をゲリラ豪雨から守る!「雨水貯留槽」の整備

柴山さん:まず、渋谷駅東口地下に建設中の「雨水貯留槽」の工事現場へは、東急百貨店東館跡地前のバスターミナルから階段で地下へ下っていきます。

参加者:うわぁー、随分と太い鉄骨が組まれているんですね。下を見ると、怖いくらい…、頭がクラクラします。

柴山さん:そうですね(笑)。狭いので、足元や頭に気を付けて入ってくださいね。雨水貯留槽は地上から約25メートルくらい、ビルの8階くらいに相当する深さがありますよ。現在、現在半分くらいまでは出来ていますので、下まで行くとその状況がよく分かると思います。

現在、渋谷駅東口の地下では「地下広場」「雨水貯留槽」の建設工事が進む。

参加者:豪雨が降ったときに、どのような仕組みで雨水貯留槽に水が流れていくのですか?

柴山さん:いくつか水を集めるポイントがあるのですが、雨が降るとマンホールに水が流れていきますが、たとえば、降雨量が1時間に50ミリまでは通常の下水管に流れ、それ以上のあふれた降雨は雨水貯留槽へ流れていきます。約4,000トンが貯まると、水位センサーが感知して自動でゲートがガシャンと閉まる仕組みです。

参加者:他の街でも、こうした貯留槽があるんですか?

梁田さん:もちろん取り組んでいるところもあると思いますが、大都市の一等地である駅の真下に貯留槽があるのは、とても珍しいケースだと聞いております。渋谷の場合は、ゲリラ豪雨の被害が問題化されるようになったタイミングと、再開発の計画がうまく重なったことが大きかったですね。

参加者:今後、ゲリラ豪雨が降ってきても安心!

コンクリートの壁面を建設中の雨水貯留槽。

柴山さん:雨水貯留槽の隣には、1,600平米の「地下広場」が広がっています。天井の高さは一部約6メートルのところもあり、現在の地下よりも2倍くらいの高さになるため、完成すれば、ものすごく開放的な大空間が広がると思います。この地下広場を基点にすることで、副都心線・半蔵門線、東横線・田園都市線との接続や、JRへのアクセスも簡便になります。現在、乗り換えが不便と言われるJRと地下鉄の乗り換えですが、完成すれば、大きな動線になるのではないかと期待しています。

クレーン車のある場所は「地下広場」の一部。すでに底版(床)が打設されている。

参加者:地上のハチ公広場だけではなく、地下にもこんな大きな広場が出来るんですね。

柴山さん:さらに約230メートルの東棟が完成したら、地下1階エリアで地下広場と接続するため、アクセスがとても良くなると思います。もちろん地下との接続には「高低差」という問題が出てきますが、それを「アーバンコア」という縦動線で解消します。現在、ヒカリエでも地下3階から地上4階までをエスカレーターやエレベーターで結ぶ縦動線が採用されていますが、東棟の中にもアーバンコアが計画されています。副都心線のある地下コンコースから地上4階までを結ぶもので、各層への移動がとてもスムーズになると思います。

見えない開発 駅地下に完備する巨大な「雨水貯留槽」

ここ数年、夏場の急増するゲリラ豪雨に伴う地下施設の浸水対策として、渋谷駅東口の地下25メートルの高さに約4,000トンの雨水を一時貯水する貯留槽を整備する。特にスリバチ地形の渋谷は、駅周辺の地形が最も低く、これまでも浸水被害で悩まされてきた。そこで再開発と同時に貯留槽が整備されることにより、安全安心な街づくりが実現する。

天候と戦いながら工事が進む「渋谷川の移設」

梁田さん:ヒカリエの向い側の、バスターミナルの地下では「渋谷川の移設」に向け、現在、新しい渋谷川の躯体を作っています。次に渋谷川が流れている地下まで下り、その工事の現場をご覧いただきます。

参加者:ふんふん、なるほど。

梁田さん:新しい渋谷川を一般公開するのは、今回、皆さんにお見せするのが初めてです。

参加者:初めてですか、すごい。やったー!

もともと東急百貨店東館の地下を流れていた渋谷川を少し東側に移設。その下には、大きな「地下広場」が広がる。

梁田さん:新しい渋谷川の躯体には、概ねの底版と一部の壁が出来上がっているのが分かると思います。今後、壁がどんどん出来上がっていきますよ。

参加者:新しい川の大きさはどのくらいですか?

梁田さん:新しく新設する川の長さは164メートル、内空は幅10メートル、高さ4メートル。通常、川の移設は事故も多いため、安全策としてバイパスを作って迂回させたのち、川を移設するケースが多いそうです。ところが、渋谷の場合は、場所が狭くてバイパスが作れる用地がありません。そこで、もともとの川から、新しい川に切り替える最後のところでは、おそらく天候や水位の状況をよく確認しながら完成させていくことになると思います。

左側が建設中の新しい渋谷川。今後、高さ4メートルの壁面で覆われる。

参加者:川の工事は大変なんですね。特に心配していることは何ですか?

梁田さん:天気ですね。たとえば、渋谷とかなり離れた遠くで雨が降っても、一気に水位があがることもあります。

参加者:それは大変!

土木女子・梁田さんに抱っこしてもらい、新しい川の進捗を見学する参加者たち。

梁田さん:なので、私たちはいくつものセキュリティーシステムを組んでいます。まず1つ目は、川を覆っている天井部にウェブカメラを設置し、24時間体制で川の水位をウェブ上でチェックしています。2つ目は、出入口のところに赤・黄・緑の三色表示のランプを取り付けています。このランプは、水位が上がると「緑→黄→赤」の順番で、その危険度を段階的にランプ点灯する仕組み。そのほか、1時間後の雨を予測するウェブサービスの情報などを確認し、作業員さんたちに危険が及ばないように安全に工事を進めています。

参加者:へぇー、二重三重も安全対策を組んでいるのか。今後、梅雨シーズンなど入ると、ますます心配が付きせんね。

梁田さん:渋谷川の水の流れを大きく変える工事は夏ごろを予定しているため、台風やゲリラ豪雨に特に気を付ける必要があります。

東口バスターミナルの下を流れる渋谷川。駅から宮下公園方面を臨む。現在、水量は多くないが、突然の雨で一気に水位が高まる恐れもあるため、天候をチェックしながら工事が慎重に進められている。

中央の高層ビルが2020年に完成予定の「東棟」、左が「渋谷ヒカリエ」

参加者:みんなが知らないところで、こんなことが行われているんですね。

梁田さん:それから皆さんが立っている場所の上には、将来は約230メートルの高さのある東棟というビルが建ちます。ということは、かつての東急百貨店東館のように建物の中に下水道化された水路が入ることになります。

参加者:わくわくしますね。完成が楽しみ! 今後はどんなスケジュールで工事をしていくのですか?

ビル地下1階の赤い囲みの部分に下水道化された水路が入るという。

梁田さん:今年の大きなイベントとしては 東棟を本格的に建設していくため、地上部のバスロータリーの動線を大きく変える必要があります。現在、駅の南側から北側まで全面的にバスロータリーが広がっていますが、今年の5月末ごろにバスロータリーを北側に集約し、東棟建設に向けた仮囲いを作られる予定です。また、先ほどもお話しましたが、夏ごろには渋谷川の切り替えも行う予定となっていますよ。

参加者:今後も工事から目が離せませんね。

梁田さん:ぜひ渋谷に来たときには、工事の進捗状況に注目してください。以上、本日のツアーはすべて終了です。ご参加者の皆さん、お疲れさまでした。

参加者:地上の変化は、なんとなく分かっていたのですが、まさか地下でこんな大工事が行われているなんて想像もしていなくて、本当に驚きました! 渋谷川の移設や地下の大きな広場など、日ごろはなかなか立ち入ることが出来ないところを見せてもらえて、とても楽しかったです。

現在、地上ではクレーンを使い、銀座線の直上にある中央館の撤去作業が行われているが、並行して地下でも「雨水貯留槽」「渋谷川の移設」などの大規模な工事が着々と進められている。

    メイン企画:この工事がヤバイ!後世に語り継がれる「渋谷の二大工事」

  • 1 東横線が一夜で地下化! 3.15-16「代官山地下化切替工事」を振り返る
  • 2 3路線を止めず、解体せよ!前代未聞の東急百貨店東横店東・中央館解体工事
  • 特別企画:工事中の渋谷で見つける再発見

  • 3 ウナギトラベル主催「渋谷駅周辺 解体工事見学ツアー」に密着取材
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  • 『渋谷の大改造計画に潜入』特別授業レポート
  • ウナギトラベル主催 第2弾「渋谷駅周辺の地下工事見学ツアー」に密着取材

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