SHIBUYA BUNKA SPECIAL

こだわりのオーガニックレストラン

1983年の開店から一貫して独自のスタンスを守り続ける「オーガニック鮨レストラン大内」。また、オープンから一年の「kurkku kitchen」も、造り手である農家のサイクルに合わせたメニューを展開しています。お店が大事にしているこだわりや「食をとりまく環境」について、消費の現場である渋谷のレストランの方々に語っていただきました。

1. 渋谷から始まる“アグリカルチャー”という名の新しいムーブメント

2. お客さんの喜ぶ顔が見える場を―“朝市”から広がる農家と消費者のコミュニケーション

3. 渋谷産の野菜はできるの?「都市菜園」の新たな可能性を探る

  オーガニック鮨レストラン「大内」 24年こだわりを貫くお鮨屋さん

青山通り近くの静かな路地裏に佇むお鮨屋さん。その店主の大内久司さんは、魚介類はもちろん、醤油や味噌、酢をはじめとした調味料の一つひとつに至るまで、「安全と胸を張って言えるものしか出さない」と、こだわりを貫く。その強い思いや、現代の食をめぐる環境について、大内さんに話を聞きました。

「渋谷の路地裏で細々と営んでいる店ですから、何も知らずに入って来られた方は、少し驚かれるようですね(笑)」。大内さんのお店は、魚介類は天然ものだけを使い、野菜も有機栽培や自然農法のものを4カ所から仕入れている。「茶葉は洗わないで飲むものだから、無化学肥料・無農薬で栽培されたもの。卵は平飼の有精卵、醤油や酢は天然醸造を使用しています。ガリも国内産の生姜を使い、水と純米酢とオーガニックシュガーを使って手作りしていますよ。市販のガリは7、8種類の添加物が使われていることが多いですから」と食材の安全にとことんこだわる。日本で唯一のオーガニック鮨屋だ。

もともと24年前に開店した当初は、化学調味料(旨味調味料)をなるべく避ける程度だった。転機は開店直後に農業や水産業を教えている大学教授が来店し、農薬の害悪を説いたレイチェル・カーソンの『沈黙の春』を読むように、と薦められたこと。「衝撃でした。自分が当時、店で出している養殖魚について調べてみると、やれ抗生物質だ、密飼いだと、安全性を脅かす問題がたくさんあることを知って…」。その後、一つひとつの食材を見直すようになり、ほぼすべての食材や調味料に自信が持って提供できるようになったのは、今から15年ほど前からだという。

それでも今の時代、100%安全な食材をそろえるのは不可能だという。「たとえば、天然の魚が養殖池の周りに集まって養殖用の餌を食べてしまう問題がありますし、アジやコハダなどの小魚には表示義務のない鮮度保持剤が使われていることも。外見での判別は困難ですが、下ろしてみると、身の輝きや張りが明らかに違う。だから十年以上の付き合いの信頼できる業者から、細心の注意を払って仕入れています」

さらに大内さんは「大半の天然の魚介類の方が味は勝りますが、なかには養殖魚がもてはやされる食材もあります。たとえば、養殖のカワハギは肝が大きく育ち、食べてみるとたしかに旨い。だけど、お客に『それは安全ですか』と訊かれたら、胸を張って答えられない。それだったら使わない」と語気を強める。

その一方、「もちろん、どれだけ安全な素材を使っていても、美味しくなければ、言い訳にもなりません!」と味に対する妥協も許さない。塩や醤油や味噌などの調味料は、オーガニックなものほど個性が強く、その使い方も難しい。大内さんは自分の求める味を見つけ出すため、天然醸造の醤油だけでも、今までに数十種類を集めて研究してきたという。

「私の店が特別に見えてしまうのは、それだけ安全性に疑問符の付く食材が出回っているということでしょう。幼い頃から化学調味料や添加物に慣れていると、それが体に悪影響を及ぼしかねないと気づくことさえ難しい。ヒポクラテスは『汝の食べ物を医者とも薬ともしなさい 食べ物で治らない病は医者にも薬にも治せない』という言葉を残していますが、なるほどと納得します」(大内さん)。毎日の食生活を見つめ直すことは、自分を大切にすることに他ならない。大内さんのお店で、体に優しい本物を味わってみてほしい。

オーガニック鮨レストラン大内
オーガニック鮨レストラン大内
築地から仕入れる天然ものの魚介類をはじめ、安全・安心な素材にこだわる寿司店。好きが高じて益子焼の窯元で修行した経験のある店主の大内さんがセレクトした器にも注目したい。1人前2100円〜。
時間: 11時40分〜13時40分、17時30分〜21時30分
休日: 日曜・祝日
住所: 渋谷区渋谷2-8-4 佐野ビル1F
電話: 03-3407-3543
「kurkku kitchen」造り手の気持ちと出会うレストラン

昨年の3月にオープンし、今回がアースデイ初参加となる「kurkku(クルック)」は、カフェやレストラン、雑貨を扱うショップなど5つの部門からなる複合型のお店。アースデイでは、アウトドアブランドの「パタゴニア」と協力し、「kurkku cafe」の軒先で穀物などの農作物を売ったりするほか、「農家の人と一緒にごはんを食べる」ワークショップなども予定している。「kurkku」PR&workshop担当の玉置純子さんは「渋谷にもパリのマルシェ(朝市)やアジアの露店のような、食べ物がメインのマーケットがあったらいいですよね。アースデイで農作物を直接販売することで、キャットストリートなどを歩いている若い人たちに『選んで買う』ことの楽しさや大切さを知ってもらえたら」と話す。

「レストラン部門の『kurkku kitchen』では、『土のなかに未来がある』というコンセプトのもと、生産者の取り組みをお客様により味わっていただく工夫をしています。『その日に農家から届いた食材をどう料理するか』という発想のため、グランドメニュ−も、素材は毎日変えていますし、お昼は気軽に食べられるワンプレートランチも用意しています。先にメニューを決めてから食材を調達すると、どうしても旬でない食材も揃えておかなければなりませんし、鮮度も落ちてしまうので作り置きもしないようにしています。」これらの工夫は、合理的であることよりも、農家に負担をかけずに長く関係を続けていくことを重視しているためだ。すべての調理を薪と炭だけで行うという試みからも、素材の持つ味や香りの特徴を最大限に伝えようという姿勢が伺える。

また、「kurkku」ではアースデイ期間以外にも「選んで買う」「野菜と遊ぼう」「アースワーカー」「ネイティブ」など7種類のワークショップを定期的に実施しており、日常生活の中で環境や自然に対して意識的になる「きっかけづくり」の場を提供している。こうした取り組みは一朝一夕に成果が出るものではないからこそ、地に足のついた活動が大切なのだと実感させられる。

「kurkku kitchen」
kurkku kitchen
扱う食材は、食の安全や環境のことを考えて農業に取り組んでいる生産者から直接仕入れたものばかり。そのため、野菜などは季節や天候によって顔ぶれがガラリと変わる。コースメニューが主だが、アラカルトでも選ぶことができる。ランチは1500円〜。
時間: 11時30分〜14時、18時〜23時30
休日: 月曜日
住所: 渋谷区神宮前2-18-21 koti bldg. 1F
電話: 03-5414-0944
「kurkku」アースデイ関連イベント

「農家のお話と一緒にごはんを食べよう!」ワークショップ
「kurkku cafe」に食材を提供している山形県の農家の方のお話を聞き、在来米・さわのはなや無農薬・無化学肥料の大豆のお味噌など新庄で育った食材を実際に使ったごはんを味わうカフェイベント。

日時: 2007年4月21日(土)、22日(日)16時〜17時
講師: 高橋保廣さん、佐藤恵一さん、阿部昭雄さん(新庄水田トラスト)
定員: 各回24名(先着順 満席になり次第受付終了)
料金: 2,000円(おにぎり/お味噌汁/焼き菓子付)
住所: 渋谷区神宮前2-18-15 piha bldg. 2F
電話: 03-5414-0581

1. 渋谷から始まる“アグリカルチャー”という名の新しいムーブメント

2. お客さんの喜ぶ顔が見える場を―“朝市”から広がる農家と消費者のコミュニケーション

3. 渋谷産の野菜はできるの?「都市菜園」の新たな可能性を探る


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