SHIBUYA BUNKA SPECIAL

映画館スタッフというシゴト

映画との出合いの場となる映画館。ここでは、どのような仕事に携わるスタッフが働いているのでしょうか。また、スタッフが仕事に喜びを感じる瞬間とは? 渋谷東急をはじめ計6館の総支配人を務める横山浩司さんにお話を伺いました。

1.NO MOVIE, NO LIFE ! 〜映画の街・渋谷を支える才能たち〜

2.映画監督&映画配給というシゴト

3.映写技師というシゴト

  観客の表情で作品の満足度を察知

--映画館のスタッフの仕事内容とは?

総支配人である私は、渋谷東急と渋谷TOEI2、さらに新宿地区の4館の各劇場に関する決定事項に責任を持つ立場です。スタッフの仕事はさまざまですよ。最もお客さんの目に付く受付もぎりや映写スタッフは、アルバイトのスタッフが多いですね。アルバイトには、映画好きのスタッフが集まっていますよ。上映中の作品を無料で観られたり、舞台挨拶に訪れる有名人に会えたりする特典が漏れなく付いていますしね(笑)。社員の仕事は、配給会社などとの宣伝会議に出席して、情報誌やポスター、ホームページなどを活用した宣伝の方法を考えたりするほか、売上や固定費、スタッフの管理など、意外と地味な仕事も多いですね。

--映画館で働く喜びとは?

上映後に出口で「ありがとうございました」という言葉をかけた時、お客様から「面白かったよ」なんて一言をいただくと、やはり嬉しいですよね。逆にムッとした顔のお客様が多い場合はとても申し訳ない気持ちになる。お金を払って観に訪れているのですから、満足して帰っていただくのは私たちの努めですからね。最近はビデオやDVDソフトが普及していますが、「映画はやっぱり映画館で」というお客様も、まだまだたくさんいる。見知らぬ人たちと一緒に一つの方向を見つめて感情を共有できる映画には、やはり独特の楽しさがあります。かなり以前の作品ですが、『メジャーリーグ』のクライマックスで主人公のチームが勝利した瞬間、どの回でも同じ場面で一斉に拍手が沸き起こったんですね。そういうことって、映画館でなければ起こりえないことですよね。

若い才能を育てるお手伝いをしたい

渋谷東急の入り口に掲示されている「渋谷シネマ情報」

--これまでに最もヒットした映画は?

すぐに思いつくのは『ロッキー4』ですね。もう20年近くも前のことですが。封切の直後には、今は閉館した渋谷東急文化会館内の渋谷東急800席と、渋谷パンテオンという劇場の1200席を合わせた2000席が開場から20分で満員になったのには驚きました。週末のオールナイト上映の全ての回が満員になったのは、この映画くらいのものです。また他の地域に比べて、とくに渋谷で客の入りが良かった作品もありますよ。1994年に公開されたオリヴァー・ストーン監督の『ナチュラル・ボーン・キラーズ』なんかがそれ。遅い時間になるほど若者で客席が埋まって、レイトショーはつねに満員。決して万人受けする内容の映画ではありませんが、渋谷に集まる若者には何か心に響くものがあったのでしょう。

--渋谷は映画館が多いですが、映画館同士の横のつながりはありますか?

渋谷では映画館の組合の活動が活発で、一緒に渋谷を盛り上げていこうと、支配人が定期的に集まって話し合っていますよ。もちろん、その背景には郊外にシネコンが増殖していることへの危機感がありますが、渋谷に点在する映画館が手を取り合って街全体をシネコンのようにすれば、どこにも負けないという自負はありますね。その一環として、渋谷東急の入り口にも、渋谷の映画館マップと現在の上映作品を掲示するなどしています。

--PPFでは渋谷東急が会場になりますね。

会場の提供くらいしかできませんが、少しでも新しい可能性を育てるお手伝いをできればいいと思っています。自主制作映画を撮る若い監督さんが「渋谷東急で自分の作品を上映できた」と嬉しく感じていただければ、こちらも本望ですね。

横田浩司さん

横田浩司さん1960年生まれ。1984年、大卒後に東急レクリエーションに入社。受付のもぎりからスタートし、1993年、多摩カリヨン館(現在は閉館)の支配人に。現在は、渋谷東急渋谷TOEI2、さらに新宿TOKYU MILANOの4館の総支配人を務める。



横田さんの「これまでに印象に残った3作品」
『第三の男』(キャロル・リード監督)
もう20年以上も前、入社したての頃に観た映画です。とにかくラストシーンがストイックでカッコいい。それに尽きますね。

『ショーシャンクの空に』(フランク・ダラボン監督)
この作品は渋谷東急で上映しました。最初はあまり期待をせずに観たら、非常に印象深い映画だった。それまでは抑え付けられていた主人公が、最後に開放されるシーンは、派手さはないけど、観ている自分も晴れ晴れしい気持ちになれました。

『E.T.』(スティーブン・スピルバーグ監督)
それまで宇宙人というと、正義と悪の戦いのような構図で描かれるのが一般的でしたが、「こういう話を映画にできるんだな」と、新しい考え方をもたらしてくれた作品でした。
ぴあフィルムフェスティバル

インディペンデント映画の祭典、「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」。1977年より開催され、29回目を迎える今回は、渋谷東急とユーロスペースで開催される。これまで数多くの映画監督を輩出し、若手映画監督の登竜門とも呼ばれるPFFについて、広報の茨木玲子さんにお伺いしました。

--今年の見どころは?

応募総数780本の中から選ばれた『PFFアワード2007』14作品を上映。入選作品とともに、作り手の魅力に触れてただく会場での質疑応答も映画祭の楽しみのひとつ。自主制作映画の未知の発見と驚き、感動をぜひお確かめください。
また、本年は招待作品部門としてアメリカの最も偉大な映画監督のひとり、ロバート・アルトマン監督の特集『はじめましてアルトマン』を開催。黄金期とも言える70年代の傑作を中心に、11作品をスクリーンで上映する奇跡を実現。
その他、『自由な日本映画たち』では、短編から長編に渉る日本映画の多様さ多彩さを堪能頂き、『マクセル特別協賛企画』では、貴重な8ミリフィルムをアーカイブ化するとともに、初の映画講座や演劇ファン必見の貴重な記録映像をお届けいたします。1作品でも皆様の記憶に残る映画と出会っていただけると嬉しいです。ご来場心よりお待ちしております。

ぴあフィルムフェスティバル

「第28回 ぴあフィルムフェスティバル」ディレクター 荒木啓子さんのインタビュー(2006年7月12日掲載)

茨木さんの「これまでに印象に残った3作品」
『BLUE』(デレク・ジャーマン監督)
”ブルーの普遍の愛に人は浸る” 1回目は何だか分からないけど頭から放れず、2回目は歩み寄ったのか寄られたのか分からず、3回目には愛おしくなった作品。

『ミリオンダラー・ホテル』(ヴィム・ヴェンダース監督)
”二人の想いは「天使の街」を翔んだ”日本で発表された当時、混沌とした毎日を過ごしていた私を飛躍させてくれた作品。

『大いなる幻影』(黒沢清監督)
”ここへはないどこかへ”本作が上映された映画館で働きたいと懇願、無事採用され、その後撮影された学校に通い(夏期講習にて初東京滞在)、正に原動力となった作品。

1.NO MOVIE, NO LIFE ! 〜映画の街・渋谷を支える才能たち〜

2.映画監督&映画配給というシゴト

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