2013年3月15日深夜、東横線渋谷駅地上駅舎の営業終了。それに伴い、翌朝からの東横線と副都心線の相互直通運転の開始に向け、渋谷駅〜代官山駅間では世紀の大工事として注目を集めた「東横線 地下化切替工事」が行われた。たった一夜にして線路を地下化した同工事の模様は、テレビやウェブでも頻繁に取り上げられ、国内に留まらず世界からも日本の技術力、一瞬の迷いもなく動く工事関係者の無駄のない動きに賞賛する声が多数寄せられた。僅か3時間半で線路切替えを成功させた早業に驚きと感動を覚えずにはいられない。ちょうど1年前に実行された世紀の切替工事の模様を、貴重な動画と写真で改めて振り返ることにしよう。
早送りの動画を見て、いかに大人数が短時間で大規模な仕事を成し遂げたかということがよく分かるだろう。次に地下化切替工事の全体像を具体的に見ていこう。同工事は渋谷駅〜代官山駅間の約1.4キロ区間を地下化し、渋谷ヒカリエの地下5階に位置する新渋谷駅へと結ぶ。工事区間は渋谷一号踏切から代官山駅ホームの273メートルで、当日工事に携わった関係者の総勢は約1,200人にも上ったという。工事が行われた代官山駅付近は、沿線に住宅や建物が密集する場所のため、仮線を設けて切り替えを行う事が出来ないという悪条件。そこで同工事では、東急電鉄・東急建設が独自開発した「STRUM(ストラム)工法」が採用。仮線を設けず、地上の営業線(東横線)の直下に地下線を準備し、短時間で地上線を地下線へ一気に切り替えるという作戦が取られた。
STRUMによる切替工事の方法について
工程は渋谷第一号踏切付近から工事桁を下げる「降下区間」、レール切断やホームを撤去する「撤去区間」、ジャッキを用いて工事桁を持ち上げる「扛上区間」など計6ブロックに区間が分けられ、同時進行で工事が進められた。その世紀の大工事の様子を終電〜始発までの時間軸に沿って、具体的に写真と共に見ていこう。
終電〜始発、約1200人動員の地下化切替工事を写真で振り返る
0時過ぎ
273メートルの工事区間に照明が点灯。大型クレーン車7台がスタンバイし、工事始動に向けて準備が進む。
1時過ぎ
最後の下り回送電車を見送った後、工事作業員が一斉に動き出し工事が始まる。
1時5分ごろ
渋谷第一号踏切から代官山駅間の「撤去区間」では、地上線レールの切断工事が進行。火花飛ばしレールを切断
2時15分過ぎ
「撤去区間」では大型クレーン車が切断したレールをつり下げ、線路敷地外へ移動。レール撤去の下には新しい地下線が見え始める。
2時30分ごろ
住宅が密集する「扛上区間」では、ジャッキアップして既存の東横線線路をどんどん持ち上げていく。
2時45分過ぎ
レールが乗っている鉄製の土台が撤去され、大きなポッカリとスペースの空いた地下線が出現。
2時50分過ぎ
従来地上線の架線を外す作業が進む。
3時ごろ
代官山駅の仮設ホームは完全撤去され、一段低い新しいホームが出現。ホーム内の架線の調整作業も同時並行で進む。
4時ごろ
架線を下げて、新しい地下線に付け替える作業が進む。
4時44分ごろ
最終確認、保線作業が行われる。
4時46分ごろ
「線閉解除(列車運転開始の合図)」がコールされ、工事作業員が線路外へ。
4時51分
工事用の照明が一斉に消える。
4時54分
上り試運列車が代官山駅に到着。
5時6分
副都心線との相互直通運転初の「下り元町中華街行き始発営業列車」が代官山駅に到着。以後、順調に上下線の往来が始まった。
工事の成功に伴い、東武東上線・西武池袋線から東京メトロ有楽町線・副都心線を経て、東急東横線と横浜高速鉄道みなとみらい線までが一つの路線でつながった広域な鉄道ネットワークが実現することになった。工事そのものは僅か3時間半余りであったが、その準備期間は膨大な時間がかかっていることだろう。
制作協力:シブヤ経済新聞