BUNKA X PERSON

「個性あふれる渋谷の本屋」×山本幸久(作家)

音楽関連のショップやライブハウス、また映画館の充実ぶりに比べ、「渋谷は本屋が少ない」と感じる方は多いかもしれません。が、少し街を歩けば、ブックファーストをはじめとした大型店のほか、個性あふれる古書店やアートブックを扱うショップが次々に見つかります。そこで、NHK出版のホームページで『渋谷に里帰り』を連載中の作家・山本幸久さんと渋谷の本屋を巡りながら、山本さんの本との付き合い方や、作品についてのお話を伺いました。

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気になったものは即座に買う

学生時代から渋谷には足繁く訪れているという山本さん。「坂が多いから景色に変化がありますよね。その点、平坦な街は少し退屈してしまうんですよ」と、渋谷を散策する魅力を語ります。本屋を目指して歩いていると、さまざまなミニシアターの前を通り過ぎました。映画ファンでもある山本さんは、「いろんなカルチャーに関心を持つきっかけになる“間口の広い”街ですよね。つねに視界の片隅に気になるものが入ってくるから、歩いていて飽きない」と話します。「もう少し、芝居小屋や劇場が充実すれば、さらに嬉しいかな」とも。
そんな山本さんが頻繁に立ち寄るというブックファースト渋谷店で、まず最初に向かったのは、地下1階の映画関連コーナー。山本さんいわく、「映画関連の書籍は、意外とすぐになくなってしまうので、気になったものは即座に買う」とのこと。今日も買おうと決めている本があったとのことでしたが、「基本的にタイトルはうろ覚え」のため、結局、見つけられずじまい。あきらめて2階の小説コーナーに移りました。目に留まった本を手に取っては置き、手に取っては……を繰り返すなかで、読みたい本を購入するのが山本さんの本の探し方。一旦、本屋を訪れると、1、2時間は、ゆうに過ぎるといいます。今日も、小説コーナーでは、新刊から単行本、文庫本まで、満遍なく書棚を巡り、「今、読みたい本」として2冊をピックアップしました。次は5階のマンガコーナーへ。さすがにマンガ編集者としての経験が長いため、慣れた調子で作品をチェックしていきます。ここでも2冊の本を選んでいただきました。

山本さんが「今、読みたい4冊」とは?

山本さんが選んだ小説は『チョコレート・マウンテンに沈む夕日』(スーザン・エルダーキン著)、そして『ウィンキー』(クリフォード・チェイス著)の2冊。「選んだポイントは?」と尋ねると、「表紙が良かったから」とのこと。以前に別の本屋で見かけたことがあって、目を付けていたそうです。なお、どちらの作家の作品も、読むのは初めてということでした。そのように「ジャケ買い」をするのも本探しの楽しみだと話します。また、「これはおすすめ!」と、山本さんが一押しするマンガが『カラスヤサトシ』(カラスヤサトシ著)。「作者が自分の生活をネタにして描いている四コママンガ。『月刊アフタヌーン』の読者ページの片隅に載っているのですが、とぼけた感じが面白くて、つい読んでしまうんですよ」。山本さんが選んだもう一冊のマンガが『アニメがお仕事』(石田敦子著)。「以前から『面白い』と、人に薦められていたので。そのうち、アニメーターを主人公にしたマンガを描きたいなと漠然と思っているので読んでみます」。
さらにブックファースト渋谷店を後にし、渋谷マークシティの裏手に位置する古書店・フライングブックスを訪れました。ここはカフェやイベントスペースを兼ねたユニークな古書店で、ビートニクやヒッピー、ドラッグ、旅をはじめ、店主の山路和広さんがセレクトした書籍が書棚を埋めます。この店を訪れるのは初めてということでしたが、そのディープなセレクトは山本さんも気に入った様子。カフェカウンターで、香り高いコーヒーをいただきながら、山本さんにじっくりとお話を伺いました。>>山本さんのインタビューはこちら

渋谷のおすすめ書店

今回、山本さんが訪れたのはこちらの2店。渋谷随一の蔵書数を持つ大型書店「ブックファースト渋谷店」と、カウンターカルチャー系の本のセレクトに定評のある古書店「フライング・ブックス」。

ブックファースト 渋谷店

ブックファースト 渋谷店

1998年6月に、ファッションビル「ONE-OH-NINE 30s」を全館改装してオープンした。渋谷最大の930坪の売場面積を持つ「エンターテイメント総合書店」として、6フロア・70万冊の品揃えを誇る。インディーズ系の雑誌からタウン誌や企業PR誌まで、5000アイテムの雑誌が揃う1Fの「TOKYO Magazine Center」が特徴的。アート・ビジネス・理工・医書など、「はじめにいきたい本屋さん」をコンセプトとした専門書の品揃えは、渋谷に限らず都内でも有数の充実度。
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Flying Books(フライング・ブックス)

フライング・ブックス

2003年3月、渋谷古書センターの2Fをリニューアルしてオープン。店名の由来は「海外から空を飛ぶように」本を集め、実際に本を購入したお客さんが「その本の世界へ飛んでいってしまうような感覚」から。店内にはビートジェネレーションの文学作品をはじめ、ニューエイジや東洋思想・ドラッグ・旅・現代思想などを中心とした古書や洋雑誌がずらりと並ぶ。アルコールも飲めるカウンターが備えられ、不定期で詩の朗読会や、演奏会などのイベントも開催している。

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個性的な書店が集まる渋谷では、新しい書店もオープンしている。アートブックが充実し、クリエーターからの支持が高い「青山ブックセンターHMV渋谷店」と、「食」に関することなら何でも集まる「クックコープ」は、どちらも昨年末に開店した。

青山ブックセンター HMV渋谷店

青山ブックセンター HMV渋谷店

2006年11月、センター街にあるHMV渋谷の6Fにオープン。「感じる・読む・遊ぶ」をキーワードに、「想像力を刺激する色や形・悠久の中に生きつづける言葉・都会の喧噪のなかにある四季」などを意識した構成となっている。グラフィック・クリエイティブ系書籍の品揃えには定評があり、HMV渋谷店でも写真集やデザインブックの充実ぶりが際だつ。また、併設のギャラリースペースは、写真集の刊行に合わせた写真展示やブックセールなどにも利用されている。
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COOKCOOP(クックコープ)

COOKCOOP(クックコープ)

2006年11月にオープン。「食の組合」を意味する店名通り、料理レシピ・エッセイ・絵本などの書籍や雑誌はもちろん、食器やエプロンといった雑貨、コーヒー豆やイタリア製のスイーツまで、「食」をテーマにした様々なものを扱う書店。「江戸と和」「チョコレート」といった季節毎のテーマに合わせたセレクトも楽しい。6坪ほどのこじんまりとした店内では、コーヒーの試飲ができるほか、お昼には体に優しい食材を使ったランチボックスの販売も行っている。

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