SHIBUYA BUNKA SPECIAL

ちょっとディープな渋谷スポット 〜あるきテクト編〜

個性派4名が薦めるディープな渋谷スポットマップはコチラ

渋谷の歴史を歩いて辿る、渋谷あるきテクト

斉藤理さん(東京あるきテクト代表)

斉藤理さん(東京あるきテクト代表)

建築史家。2004年から「東京あるきテクト」を主宰し、一般の方々および外国人を対象とした建築めぐりイベントの企画・運営を行っている。また2008年には、都内の建築物を一斉に公開する「open! architecture 建築のまち・東京を開放する」の企画・監修を担当。著書に『東京建築ガイドマップ 明治・大正・昭和』(共著,エクスナレッジ,2007)など。現在、東京MXTV「Tokyo物語」に「旅人」として出演中。 »東京あるきテクト

「大都会の生活の名残と田舎の生活の余波とが此処で落合って、
緩やかにうずを巻いているようにも思われる」

あの国木田独歩の記した一節で、渋谷を含む武蔵野一帯の風景を描写したものだ。独歩は渋谷に別荘風の居を構え、毎朝近隣の牧場でとれる絞りたての牛乳に角砂糖を入れて呑むのが日課だったというのだから、今から100年以上前の渋谷は随分と牧歌的だったものだ。

今日、独歩が好んだ雑木林の風景は、ビルの林が連なる街並みへと大きく変貌したが、何かしら様々な要素が「うずを巻きながら漂っている」という印象は今でも受け継がれているように思われる。とりわけ、大も小も、古きも新しきも種々のものが混在するダイナミックな建築群にそれは表れているのではないか。渋谷のまちを歩きながら、そんな変化に富む建物を観てみよう。

目のつけどころは、次の4つだ。一つは、「ミニ建築」の類いを探すこと。間口が狭く、2階建て程度の商店建築が点在し、それぞれに宿る細やかな表情を読み取る面白さがある。百軒店などはその宝庫だし、道玄坂を上って行くと左手に見える看板建築群もぜひ観に行きたい。まるで兄弟のように揃って可愛らしい。こうした建物の多くは関東大震災以後から昭和初期に建てられたものだ。

建設中の渋谷駅「地宙船」の曲面部

それから「アパートメント」に注目したい。かつて桜丘町一帯にはいわゆる文化アパートと呼ばれるハイカラなアパートが群れをなしていた。その多くは既に建て替えられているが、時折カラフルなモザイク・タイル貼りがエントランスに残るアパート等に出合うことがあるから嬉しい。戦後初の分譲集合住宅というのも実は渋谷にあって、これは宮益坂で観る事ができる。

それから「オリンピックイヤーの建築」だ。1964年の祭典を境に街並みは一変した。例えば丹下健三設計の国立代々木競技場。実はこの建物、世界的にも非常に有名で、はるばる海外からも見学に訪れる人がいるほどの傑作なのだ。

最後のポイントはいわゆる「デザイナーズ建築」。センター街、公園通りなどを中心に、建築家の個性が思う存分発揮された商業建築群を観ることができる。そんな渋谷の新しいデザインの展開を期待させるのが渋谷駅だ。世界の建築家、安藤忠雄の創り出した楕円は、今後、渋谷デザインの「うずの眼」になっていくことだろう。

■ここ!スポット

名曲喫茶ライオン

ロンバルディア帯と呼ばれる小アーチの並ぶロマンティックな外観に誘われて木扉を開けると、そこは薄暗い昭和の空間。中東風とロココ調が混ざり合った店内で、かつて文化人たちが愛した渋谷の雰囲気にどっぷりと浸ってみよう。

設計:
山寺弥之助(1950)
住所:
渋谷区道玄坂2-19-13
»この場所を見る

ヴィラ・モデルナ

大きな樹木を中心に、まるで小鳥の巣箱のように居室が取り囲むというユニークな集合住宅。当時のカプセル志向を反映したものだ。なお、住居施設なので、レストランなどパブリックなエリア以外立ち入りできない。

設計:
坂倉建築研究所(1974)
住所:
渋谷区渋谷1-3-18
»この場所を見る

東京都児童会館

何しろ大胆な構成が目を惹く。まるで建設中の高速道路のようにも見え、街並みが一変した1964年という時代性を感じる。細部は伽藍(がらん)建築を思わせるほど肌理(きめ)が細かい。設計者大谷氏は、京都の国際会議場などの作品で知られる。

設計:
大谷幸夫(1964)
住所:
渋谷区渋谷1-18-24
»この場所を見る

青山製図学校

「これは何?」と道行く誰もが振り向く建物だ。ポストモダン時代の象徴的な逸品。一見、賑々しい装飾的な要素に目が奪われるが、斜材もちゃんとした柱であり、アンテナも避雷針で、それぞれ機能を備えているという。

設計:
渡辺誠/アーキテクツ オフィス(1990)
住所:
渋谷区鶯谷町7-9
»この場所を見る

渋谷駅

日本モダニズムの旗手坂倉準三の設計部分をはじめ、近年では隈研吾が「雲」をガラスで表現した外壁を手掛け、そして安藤忠雄のデザインによる楕円形カプセル「地中の宇宙船=地宙船」が地下に誕生するというのだから目が離せない。

設計:
坂倉準三(1954)、隈研吾(改修:2003)、安藤忠雄(2008)など
住所:
渋谷区渋谷2-24-1
»この場所を見る

1. 副都心線開業記念『ようこそ渋谷へ!!〜渋谷観光案内〜』

2. ワンコインで楽しむ渋谷1日観光プラン

3. ちょっとディープな渋谷スポット 〜あるきテクト編〜

4. もっとディープな渋谷スポット 〜飲・食・驚 編〜

5. 副都心線開業記念イベント&キャンペーン

6. 5人のキーパーソンが語る、渋谷の『まちの将来像』

特集記事一覧へ