建物は「情報被膜」で覆われ、地下からステージがバーンと上がって、
スクランブル交差点そのものが「巨大なイベント空間」に変わるんです!
京都大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。工学博士。 三菱総合研究所都市経営部長、取締役人間環境研究本部長、東京工科大学メディア学部教授を歴任。これまでに東京臨海副都心、ソウル市街地再開発、マレーシア情報都市の都市プランニングなど様々なプロジェクトの企画、事業化推進に従事する。2009年より、東京都市大学生活都市学部学部長に就任。そのほか、東京芸術大学大学院美術専攻科および早稲田大学大学院創造工学専攻科の講師も兼任するなど、都市プランナーのスペシャリストとして後進の育成に力を注ぐ。主な著書は「東京プロジェクト」(日経BP)、「臨海副都心物語」(中公新書)、「高度情報化と都市・地域づくり」(ぎょうせい)、「東京これからこうなる」(PHP)など。
都市生活学部ホームページ
2009年4月、東京都市大学(旧・武蔵工業大学)に「都市生活学部」が新設。従来の建築学科とは一線を画し、「まちづくり」を考える上で必要なマネジメント、経営にベースを置いた理系と文系と両方の知識を持つ都市プランナーを育成する、日本初の「まちづくり学部」だ。同学部の学部長である平本一雄教授は、今までにお台場(臨海副都心)、横浜みなとみらい21、愛知万博、表参道ファッション拠点開発、ソウル市街地再開発をはじめ多数のまちづくりの計画策定に関わってきた人物。今回のキーパーソンでは、この「まちづくり」のスペシャリストである平本教授を迎え、2009年9月に同学部でまとめた「2030年の渋谷の未来像」のほか、これから渋谷に必要なことについて詳しくお話を聞きました。果たして20年後の渋谷は、一体どのように変貌を遂げるのでしょうか?
--渋谷の未来像を「2030年」に設定したのはどうしてですか?
渋谷の未来について、10年先ぐらいまでは鉄道会社や行政などで現実的な計画がほぼ決まっています。それとは全く関わらない格好でやろうと考えたことから、おおよそ概要が見えている2020年のさらに10年先の「2030年」を対象にしています。
--渋谷の未来を示すまでのプロセスを教えてください。
まず、近い将来東横線は副都心線に乗り入れることで新宿と繋がりますから、新宿との競合はあるはずです。またすぐそばに六本木や銀座などの大商業地もあります。最初に考えたのはそういうところと比較して「渋谷の独自性は何だろう?」ということ。例えば単に数字だけで新宿と渋谷を比べれば、明らかにビジネス街があって就業人口が多い新宿が上。そんな中でこれまでの街の歩みや地形などを調べていくと、渋谷が「谷地」だということが見えてきました。スクランブル交差点が四差路ではなく五差路になっているのも、渋谷駅が地形的に一番くぼんでいて、道が放射状、同心円状になっているため。そのために大きな建物が建てづらく、無秩序な点も特徴です。学部内での議論では、渋谷の中心にコンベンションセンターを造ったら…とか、ブランドショップをもっと持ってこようとか、月並みな意見もあったのですが、渋谷にしか出来ないものを考える内に「渋谷の面白さは整然としたものじゃないところにあるよね」という考えに至りました。例えば渋谷にはたくさんのラブホがありますが、だからラブホを規制してなくす案とラブホを活用する案の両方を議論して考えてみたら、やっぱりあれだけあるのは面白いリソースだというところへ行き着いた、そういうプロセスです。
--20年後、渋谷の建築物は具体的にどのように変わりますか?
スクランブル交差点では、4基の大型ビジョンが設置され、絶えず広告映像が流れる
建築設計家がつくった建築物のイメージではなく、スクリーンのようなもので全体が覆われるような未来建築物を考ました。今のQ-FRONTのデジタルサイネージに近いのですが、情報が建物を被膜のように覆っている状態で、私はこれを「情報被膜」と名づけました。バラバラの建物が並んでいる状態からお互いを通信ネットワークでリンクすれば、大きな一つのスクリーンとして繋がった状態で映し出することもできる。北京オリンピックのスタジアムで360度の大スクリーンがあったのを覚えていますか?渋谷の街でも、あれが出来ると思います。
--従来の建築物の概念そのものが変わりますね。
「建築を葬り去ろう!」という感じでいきたいですね。もちろん建築物は当然あるんですが、壁はすべて電子メディアで、バーチャルな仮の壁をつくったり、あっという間にそれがなくなったり。電子ディスプレーを使えば壁の色も明暗も可変ですから、今までの街、今までの建築とは違った姿が出来上がってくるはずです。商業建築の寿命は大体3年と言われますが、未来の渋谷は1時間や1秒間の単位で建築や街が姿を変える「1秒都市」ですね。
--地下街の「しぶちか」はどうなるのでしょうか?
地下街には、ある程度空が見える広場部分があったほうが良いと考えました。コンクリートの天井に覆われるのではなく太陽が見える吹き抜けがあったり、地上が透けて見える部分があったり。それから、油圧の大きなエレベーターみたいなもので、地下から大きなステージがバーンと上がってくる。ここでライブやコンサートを行い、さらに大型ディスプレーと連動して、スクランブル交差点そのものが巨大なイベント空間に様変わりするんですよ。
--渋谷駅周辺に集積する広告群はどうなりますか?
空中に浮く映像や看板など「立体広告」が増えるでしょうね。例えば3D空間も水蒸気を出したりすることで簡単につくれますから、技術的には可能な範囲です。アメリカで毎年開催されているコンピュータグラフィックスの世界的な祭典「SIGGRAPH(シーグラフ)」では、すでにそういった3D広告が多数紹介されています。信号も空中空間に投影された立体LED信号標識に変わる。もちろん警察が管轄するものは簡単にはいかないかと思いますけど、そうじゃないサインボードみたいなのは3D化が進むだろうという気がしますね。それから、先程の「SIGGRAPH(シーグラフ)」のような展示会は施設ではなく渋谷の街そのものを会場にすればいいですね。渋谷をデジタルメディアの実験的な場所に仕立てていければ、かつてのビットバレーのように、ユニークな人たちが渋谷に集まってくるキッカケになるのではないでしょうか。とはいえ、秋葉原のような工学的なものではなく、ちょっとアートに近いメディアコンテンツのほうが、渋谷らしいと思います。さらにそれに関連するインダストリーが、渋谷の街の周辺に張り付いていくと、渋谷は独自の力を持ってくるのではないかな。
「映像都市」や「1秒ごとに表情が変わる広場」といったキーワードやイメージを出発点として、ビジュアル化した渋谷駅周辺の未来像
CG制作:株式会社プレミアムエージェンシー
「2030年 未来の渋谷はこう変わる」
■「情報被膜」
すべての建物の壁面は情報メディアを被ったデジタルサイネージとなる。建物同士をリンクすることで、街全体が一つの巨大スクリーンへ変わる。建物の色、デザインは瞬時に可変が可能となる。
■「立体広告」
広告の主体は紙への印刷だった時代から霧状気体や多重アクリル板への映像投影技術のよる立体映像へ変化。
■「立体LED 信号・標識」
歩行者用信号や、標識なども地面から投影される。物理的な場所を占有したり、消耗がない上に、情報の更新が容易で、使わない時は消えるという画期的な次世代インフラ。
■「忠犬ハチ公(映像)」
未来のハチ公は、渋谷周辺を駆け回る映像。四方を囲むビルから広場内に向けて放出される人工的な霧に、いきいき走り回るハチ公の映像が投射される。
■「しぶちか」
画像右手前の交差点の地下は、新たな「しぶちか」。油圧エレベータで地上に上昇するステージや、そこでのライブを映し出すビル壁面の情報皮膜は行きかう人びとの視線を捉えるメディアは、今のしぶちかのイメージをガラリと変える。
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