
今回は、ヒカリエ8/で10月に開催予定のものの中から、「制作過程」にスポットを宛てた企画3 つをピックアップ。

ART GALLERYでは10月22日より、1983年静岡県生まれのアーティスト風能奈々さんの作品展を開催する。
風能さんは2008年、京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻油画を修了し、同年のアートアワードトーキョーで小山登美夫審査員賞を受賞。2009年の上野の森美術館「VOCA展」にも出展している。
優美な動植物、人物、文字など少女特有の感性的なモチーフを、アクリル絵の具や染料、マスキングなどの様々な技法を用いて、幾重にも重ねられたレイヤーとして表現。抑制の利いたトーンは「浮いているのでもない、重なっているのでもない、奥行きという表現では捉えきれない空間的な複雑さ」(長屋光枝「現代美術の展望 VOCA展 2009」カタログ)と評される。風能さんは毎日3〜5時間のドローイングを行なうといい、作品制作中に頼りにしているのは「今まで描いてきたたくさんの手が覚えているドローイングだったり、何度も繰り返し描いてきてすごく親密な関係になってきたモチーフ」(風能さん)とも。
会場ではペインティング数点に加え、展覧会としては初めて木炭によるドローイング約50点を展示。絶えず手を動かし続けることがもたらした、技術と独特のテクスチュアを感じながら、風能奈々の物語に満ちた幻想の世界を楽しみたい。

Creative Lounge MOVでは10月23日から、インテリアデザイン会社「日建スペースデザイン」の20周年に合わせた企画展「かんがえたこと、できたもの」が行われる。
同社は日建設計の家具部、インテリア部を前身に、日建グループのインテリアデザインを担う会社として1994年に設立。東京・大阪・名古屋を拠点に、ホテル、オフィス、商業店舗、医療福祉施設、教育文化施設、住宅など幅広い分野のインテリアデザインを中心に、各種環境デザインを手がける。主なプロジェクトはJR東日本本社(1997年)、リッツ・カールトンホテル東京(2007年)、東京スカイツリー®(2012年)など。
「私たちの会社について、私たちの仕事について多くの人に知ってほしい」との思いで行う同展。会場では所属デザイナーらが普段どんなことを考え、どんなツールを使い、どんな段階を経て最後にゴールにたどりつくのか、実際のプロジェクトから数例を紹介。スタートからゴールまでの長い道のり、地味な作業の数々、それさえも楽しんでプロジェクトに取り組むデザイナーらの様子を伝える。また10月28日には、大野力さん(sinato 代表)、 谷尻誠さん(Suppose design off ice 代表)、藤井崇司さん(日建スペースデザイン シニアデザイナー)によるトークショーも実施予定。3人のデザイナーの仕事の環境やデザインプロセスの違いを感じてみては?(場所=COURT、定員100人、事前予約不要、18時30分〜)。

COURTでは10月24日から、伝統産業を今に受け継ぐ注目の若手8人を紹介する作品展「全国選抜若手の技 ザ・職人 DENSAN8人衆」が開催される。
主催は伝統的工芸品産業の振興を目的にした一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会。同協会では赤坂八丁目、青山通り沿いで伝統工芸品の紹介施設「伝統工芸青山スクエア」を運営しており、経済産業大臣が指定する全国の伝統的工芸品として、織物、陶磁器、木工品、仏壇、和紙、人形など、多様な工芸品を一堂に紹介している。
青山スクエアで開催された伝統工芸の産地が今後を託したいと推薦した若手職人の展示会を受けた同展。今回は推薦職人から「今が旬」な8人をピックアップして紹介する。会場では各職人の作品展示のほか、各人が工芸品の制作に必要な道具を持参して、その用途や手入れ、思い入れなどについて語るイベントや、製作工程の紹介コーナーも用意する予定。参加職人は、柴田昌正さん(大館曲げわっぱ)、土屋隆さん(甲州水晶貴石細工)、井上健志さん(江戸指物)、川副隆彦さん(伊万里・有田焼)、雑木囃子さん(箱根寄木細工)、森田直樹さん(播州三木打刃物)、小倉隆さん(東京手描友禅)、新井教央さん(秩父銘仙)。長年受け継がれた伝統的な技術・技法を基盤に、現代の生活にマッチした使いやすく美しい作品を生み出す注目の若手職人たち。その作品と背景を間近で感じられる企画となっている。

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