
今回は、現在渋谷で公開中・公開予定の映画作品の中から、「ありのままの姿であること・自分らしくあること」を訴える3作品をピックアップ。

アップリンクでは現在、不必要なダムの取り壊しを訴える活動を追ったドキュメンタリー「ダムネーション」が公開中だ。
アメリカ全土につくられた何万基ものダム。それらの中には、川を変貌させ、魚を絶滅させ、それにもかかわらず期待される発電・灌漑・洪水防止のいずれにおいても低い価値しか提供できていないダムも多いという。そしてダムの維持には高い経済的負荷がかかっている。そんなダムの負の面に着目し、「撤去」する事例が、アメリカでは見られるようになってきた。同作は、「ダム撤去」が当たり前に語られるようになるまでに、「クレイジー」と言われながらも川の自由を求めつづけてきた人びとの挑戦をとらえたドキュメンタリー。
地球の血管にも例えられる川。ダムが川に及ぼす影響は、私たち生き物すべてに影響する。ダムが撤去された時、川は解放され、みずから元の姿に回復していく−−−。
川の生命力とその美しさを通して、人間も自然の一部なのだということを改めて気づかせてくれる同作。製作責任者はパタゴニア創業者のイヴォン・シュイナード。共同プロデューサーは生態学者で水中写真家のマット・シュテッカー。
人間は高い技術によって自然に立ち向かってきた。その技術を取り壊して見えてくる、ありのままの川・ありのままの自然の姿とは?

ユーロスペースでは12月19日まで、第23回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で先行上映されて立ち見も出るなど人気を集めた「カミングアウト」が公開中。
メガホンを取ったのは、神奈川県出身の犬童一利監督。性同一障害の恋愛を描いた前作「SRS♂ありきたりなふたり♀」に引き続き、今回は同性愛者のカミングアウトに着目した。
主人公・陽はゲイの大学生。サークルの同級生で親友の昇に片想いをしているが、大学のサークル仲間にも、一緒に暮らす家族にも、ゲイである事は隠している。唯一、新宿二丁目の行きつけのBarB♭ではありのままの自分でいられる。以前に比べれば、セクシュアルマイノリティも少しずつ生きやすい時代になってきたが、仲間達との友情や恋愛の他にも、就職や結婚など将来への不安は尽きない。葛藤の末に陽が進む道とは…。
心の中ではどこか不満を抱きつつも、流れで生きていける現代日本に対して「不健全さ」を感じていたという犬童監督。作中で主人公が「自分自身と向き合う姿」を通して、そんな現代社会に新しい価値観を添えてくれる。

イメージフォーラムでは12月6日から、2012年のイメージフォーラム・フェスティバルで観客賞を受賞したドキュメンタリー「加藤くんからのメッセージ」が公開される。
加藤くんとは、1975年岐阜県生まれの加藤志異さん。「妖怪になること」を夢に、病院夜勤事務の契約社員(撮影当時)をしながら、人間から妖怪になるための活動をしている加藤さん。大学卒業に中退期間7 年を含めて11 年かかり、卒業式の日に演説をして、僕は妖怪になると宣言。井の頭動物園の象のはな子さんと会話するなどの妖怪活動を続けている。
彼の妖怪活動と人間活動を2 年間追いかけた同作。監督は1982年生まれ、多摩市出身の綿毛(わたげ)さんで、映画をつくることが「夢」だったという彼女は、加藤さんに誘われる形で初めて製作した同作で「イメージフォーラムフェスティバル2012」観客賞に輝いた。
同作では、「僕が撮ってほしかった『妖怪になるために成長していく加藤くんの姿』と、綿毛さんが撮りたかった『何者でもない、人間として悩んでいる加藤くんの姿』が共存している」と加藤さん。2人の夢が縁あって重なりあい、作品として現実となった同作。夢を失った大人たちに向けて、加藤さんは今日も叫ぶ。「夢は叶う!だから僕は、妖怪になる!僕らの夢よ、届け!」

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