SHIBUYA BUNKA SPECIAL

発信する「shibuya1000」〜ファッションから考える渋谷

副都心線の開通に伴って、明治通りの地下スペースが新たに拡張されました。「shibuya1000」では、400平米にも渡るこの広いスペースを利用し、35体のマネキンを並べたアパレル展示を行います。参加するのは、冨永愛と吾妻実がタッグを組んだアパレルメーカー「deep sweet easy」と、4校の服飾専門学校。今回は、「deep sweet easy」のオーナー兼デザインを担当する吾妻さんに、ファッション展の狙いと、渋谷への想いについて話を聞きました。

※インタビューは2008年9月12日、代官山の「deep sweet easy」にて収録したものです。

1. 渋谷って、いったい何だ!?

2. 写真から考える渋谷

3. ファッションから考える渋谷

4. 建築から考える渋谷

5. 橋本誠さんとめぐる、shibuya1000鑑賞ツアー

渋谷は、結局どういう街なのかわからない場所。非常に雑多感がある街ですね。
吾妻実さん

吾妻実さん(ファッション・デザイナー)
東京モード学園卒業後、コム・デ・ギャルソンにて、4年間パタンナーを務める。2002年、当時既にスーパーモデルとして活躍していた冨永愛とともに、レディースファッションブランド「deep sweet easy」を立ち上げ、代官山に直営店をオープンする。現在は「deep sweet easy」のオーナー兼デザイナーとして活躍中。
»deep sweet easy

「shibuya1000」を使って、渋谷にとって良いカタチを模索して欲しい

--渋谷とのはじめての出会いは、いつ頃でしたか?

田舎にいる時は、「東京」っていう言葉でひとくくりでしたが、上京後は、駅1つ1つに街があることにまず驚きましたね。新宿にある東京モード学園に通っていたんですが、その頃渋谷は遊び場所でした。昔、原宿にピテカントロプスっていうクラブがあったんです。それがクラブDっていうクラブハウスになって。今はもうありませんが、そういうところで結構遊んでましたね。で、クラブの帰りに渋谷で飲んだり、朝方までうろうろしていました。楽しかったですね。

--渋谷という街にどんな印象を持っていますか?

非常に雑多感がある街ですね。例えば秋葉原だったら「おたく」とか「電化製品」とか、新宿だったら「歌舞伎町」とか、そういうキーワードってあるじゃないですか。でも渋谷って、「109」とか「センター街」から受ける若いイメージがあって、「代官山」みたいな落ち着いた雰囲気もあり、「青山」みたいな高級感もある。多様化している街なんですね。結局どういう街なのかわからない。今回のアートイベントもそこがテーマになっています。「渋谷=こうだ!」って言ってしまっていいのか、よくないのか。渋谷という街を愛する人たちで、どういう渋谷を作っていったら良いんだろう。今回のイベントは、「shibuya1000」というガイドラインを使って、どういうカタチが渋谷にとって良いカタチなのかを模索する機会でもあるんですね。

--なぜ直営店に代官山を選んだんですか?

7年前の9月にdeep sweet easyをオープンしたんですが、代官山は居心地が良いんですよね。人が多い訳じゃないし、百貨店が多くて便利っていう場所でもないんだけど、散歩しながら街を歩ける。商業施設はそんなに密集していないのに、すごくおしゃれな人たちが歩いてるし、人が住んでる街でもあるから、環境にも気を遣ってて。ここにお店出したいっていう憧れもありました。

shibuya1000に展示される作品。deep sweat easy 2008 AW コレクションより

現実的なことに不安を抱え過ぎないで。
若いコたちに、もう少しいろんな「可能性」を追いかけてほしい。

--「shibuya1000」のファッション展示の狙いは何でしょうか?

渋谷駅を利用してる人はもともと多いですが、通行量で考えるとJRの入り口から109の地下くらいまでしかあまり利用されていないんですよね。どうしても、副都心線の方の出口は人の通りが少ない。だから、何かやってるってことでその場所を認知してもらいたい、っていう狙いもありますね。ファッション展は、公共の場に異空間を作ることが目的で、人がこっちにどんどん動く流れを生み出せればと思っています。「人が人を作っていくし、人が街を作っていく」ってことを、このイベントはめざしていると感じますね。

--「shibuya1000」のファッション展では、どんな洋服が登場しますか?

ブースは10月3日(金)〜5日(日)の第一部と、10月6日(月)〜13日(月)の第二部に分かれています。第一部では、deep sweet easyの今年の秋冬物を並べて、第二部では、服飾の専門学校から、東京モード学園さん、バンタンデザイン研究所さん、杉野学園ドレスメーカー学院さん、昭和女子大学さんのそれぞれの作品を並べます。宮益坂の下に、400平米くらい空きスペースがあって、そこを使って展示をしていきます。

--deep sweet easyの洋服のコンセプトはなんでしょう?

クリエイティブディレクター
Ai Tominaga

deep sweet easyって、冨永(愛)のメールアドレスだったんです。ブランド名をお互いに話し合っていた時に、ふと彼女のメールアドレスが気になって「なんでdeep sweet easyなの?」って聞いてみたんですよね。そしたら、「人ってディープなときもあれば、スウィートなときもあれば、イージーみたいなこともあるじゃない?」って冨永が言って。「あ、それ、ブランド名にしようよ」って(笑)。deepには、深いって意味があって「服に対して追求したい、良いものを作りたい」っていう気持ちを込めています。sweetには、甘いとかかわいいとかだけじゃなくて「女らしい」っていう意味を感じるんですね。レディースの服なので、服を着る人には「女らしさを忘れないで」スウィート感を持って欲しいと思っています。で、easyっていうのは、「気負わないで」って風に捉えてまして、「そんなに意気込まないで、今の雰囲気をイージーに捉えていってもいいんじゃない?」っていう。その3つのキーワードが主軸になっています。

--後半は、専門学校の学生さんたちの作品が並びますね?

後半の展示のテーマは、「ポシビリティ」(=可能性)です。渋谷に限らず、若い人たちのエネルギーってあるじゃないですか。でも今は就職難だったりで不安を持ってるコたちも多いですし、空気が重い感じがある。若いコたちにはそういう現実的なことよりも、もう少し夢を追いかけてほしいなぁと思っています。今日明日生きられるか、って考えると、日本だったら、バイトしても何してもだいたい生きられるじゃないですか。だったらまだまだあまり先のことは考えずに、可能性でいろいろ始めたり、やりたいことをぶつけていって欲しいなぁって感じるんですね。今回のイベントでも、公共の場ということで制限もいろいろ出ましたが、「この場所だからこそ、こんなことが出来る」とか、「やりたいから」って理由でいろいろ発想して欲しいですね。


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5. 橋本誠さんとめぐる、shibuya1000鑑賞ツアー

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