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僕の“my city”は渋谷。なぜか、ここに戻ってくるとホッとするんです。−−アンドレア・ポンピリオさん

ラジオやテレビなどで活躍を続けるアンドレア・ポンピリオさん。「渋谷ファッションウィーク(SFW)」のメインイベントとして、今月25日(日)に渋谷のストリートで開催されるファッションショー「SHIBUYA RUNWAY」のナビゲーターを担当することが決まっている。そこで今週末のイベントを控え、アンディさんが今注目するファッションアイテムから、多感なティーンズ時代を過ごした渋谷との関わりやイメージについてお話を聞きました。

■ファッションは自分の「アイデンティティをまとう」ということ。

_アンディさんにとって「ファッション」って何ですか?
「僕はこう」「私はこう」っていう、ある意味自己主張じゃないかなと思っています。「自分の存在意義」というアイデンティティにつながるものですね。もちろん、そのときの気分やシチュエーションで、いつもとは違うスーツをビシッと着るときもありますけど、ある程度のスタイルが自然と滲み出てくるものだと思います。僕は今日みたいにジャケットとデニムの組み合わせが多いかもしれません。

ファッションにアイデンティティを意識するようになったのは、10代後半ぐらいから。イタリア人の父の血を受け継いでいるせいか、服も靴もイタリア製に惹かれていったのです。まず、何と言っても素材がいいのですよね。実は今履いている靴もイタリア製。やっぱり履き心地だったり、身につけたときの落ち着きだったり、フィット感がほかと全然違います。もちろん、デザインの好みでイタリア製じゃないものを選ぶことだってあります。やっぱり人間ですから、浮気して全然違うテイストに走ることも。でも、結局は落ち着くイタリア製に戻ってしまう。こんな経験から、ファッションとアイデンティティは直結しているなと思ったのです。

女性のファッションも同じです。女性のことはよく見ていますから詳しいですよ(笑)。ポイントは、自分のアイデンティティを表現できているかどうか。ボディのシルエットや表情、歩き方など…。その人の特徴がうまく醸し出ているファッションスタイルがやっぱり1番で、とても綺麗だなと思います。

ところが実際見ていて、もったいないなってケースも多いのです。それは魅力的な女性なのにファッションと全然合っていないパターン。普通にロングスカートを履いていたら可愛いのに、「どうしてそれ?」みたいな感じで、違和感を持ってしまう。女性を見る目は厳しいですから、どうしても批評してしまいます(笑)。ファッションは自分の「アイデンティティをまとう」ということ。それを意識するだけでも、ずいぶん自分のスタイルがでて、カッコよくなれると思います。

_いま、注目しているファッション・アイテムは何ですか?
レディス・メンズ同様なのですが、やはりアクセサリーかな。靴やバッグ、腕時計などの小物です。特に、大事なのは靴。靴は大人の男性にとって、本当にこだわるポイントだと思います。

デキる人ほど、足元は常に見られているという意識を持っています。僕も相手の靴につい目がいくので、自分の靴も見られているのだろうなと思っています。汚れていると、「この人、ファッションにこだわっていないな」というのがすぐにわかる。靴がダメだと、やっぱりアッパーな部分にどんなにいいもの着ていても全部沈んじゃう。全体のバランスを崩してしまう印象です。

そして靴はへたったり、傷がついたりしやすいパーツ。メンテナンスもすごい大事で、長く使えるような形にしないといけないですよね。ただ、「too much(やりすぎ)」になっちゃいけない。自分も靴を毎朝磨いているわけでもありません。やりすぎすると、磨くことばかりに意識がいっちゃって、本来のファッションという目的から離れてしまうのです。

また、デザイン以外で言うと、履き心地も重要なポイント。靴は下から自分の体重を支えてくるものでもあるので、けっこう技術的な要素が強いファッション・アイテムです。健康にもつながる問題になりますから、靴はとても奥が深いのです。

■渋谷はファッションと隣合わせ、カオスや猥雑な感じも面白い。

_「渋谷の街」の印象を教えてください。
実は地元が渋谷なのです。生まれてすぐに恵比寿へ移り、そして3歳のときに神泉に引っ越してきました。10代のときの遊びはもちろん渋谷。昔はホコ天もあって楽しかったですね。友達と繰り出してバカやってましたけど、僕にとっての渋谷はそういう記憶すべてがつまっている。ニューヨーカーがセントラルパークを “my park”というのと一緒で、僕の“my city”は渋谷なのです。そんな渋谷で、ファッションの祭典が開かれるなんて最高です。日本を代表するファッション文化のトレンドを発信しつづける渋谷。それを盛り上げるプロジェクトがあると聞くと、やっぱりうれしいですよね。

そんな渋谷のイメージは、“常に新鮮”に尽きます。街としていつも強いエネルギーが湧き上がっている場所です。渋谷から離れると、なにか全然違う感じがして、戻ってくるとホッとするんですよね。不思議なものです。だから、事務所とか住んでいる場所もずっと渋谷だし、離れられない。エネルギーというと抽象的かもしれないけど、何かポジティブな雰囲気を感じさせてくれる街です。それを感じ取って、多感な若い子たちが育ち、いろいろな記憶を生み出す場所が渋谷なんだろうね。だからこそ、いろんなクリエイティブが生まれてくる文化の発信地になっているのだと思います。

しかも渋谷は、新しいものが出てきても前の文化を押しつぶすのではなく、積み重ねていく感じがある。新しい文化はやっぱり古いものがあるからこそ成り立つのですよね。渋谷はそういう風に文化の積み重ねで形成されている部分もあると思います。例えば、昭和を感じるラブホテル街のネオン。ああいう古い文化の刺激だったり、エロスだったり、ワクワク感。ダークな部分も含めてすべて完結しているのが渋谷です。ファッションと隣合わせで、カオスや猥雑な感じがあるのも面白いですね。

_海外から見た「渋谷の魅力」とは何でしょうか?
海外のトップブランド・メゾンが、渋谷の風景を写真に収める姿をよく見ます。何かインスパイアされるみたいです。仕事柄、イタリアのブランドのファッションデザイナーにもよく会うのですが、みんな「渋谷に行きたい」と言うのです。渋谷でいろんなインスピレーションが生まれて、世界で新たな形で渋谷スタイルが生まれていると考えると、地元民として胸を張って歩いてしまう。とても不思議な感覚です。

最近でいうと、アニメや漫画が渋谷の魅力の要素になっているのではないでしょうか。なんとなく分かるのですが、僕らの世代だと、映画「ブレードランナー」(1982年公開のアメリカ映画)のイメージですね。大きなビルボードがあって、集まる人のカオス感のリンクが渋谷だったりする。海外が渋谷に注目しだしたのは最近と思われがちですが、1980年代から世界中に刺激を与える要素があったのかなとも思います。

また渋谷は、ニューヨークのタイムズスクエアともよく比較されますが、全く違う印象ですね。タイムズスクエアは照明、光そしてブロードウェイなど、風景に圧倒される印象。一方、渋谷において海外の方が関心を寄せる対象は風景より“人”ですね。特に女の子だとか男の子とか、若い世代に興味があるみたいです。若い世代のファッションはもちろん、行動やメイク、ヘアスタイルなど、彼らから見たら面白いのです。つまり「people check」。それがクリエイターのインスパイアのエンジンをかけて、いろんなイメージを生み出させる。「これこそ日本だ」というのを感じるみたいです。まさに渋谷はクリエイティブな人たち刺激する街ですね。

■“渋谷はファッションの発信地”というイメージで歩き出している。

_再開発が進む渋谷ですが、これからの未来の渋谷にどんな期待を寄せていますか?
渋谷ファッションウイークはまだまだ成長の過程の、とっても若いプロジェクト。だからこそ、みんなで盛り上げようと一体感が生まれたときに文化がどんどん成長していく。小さい頃から渋谷をずっと見てきた自分からすると、このプロジェクトは生まれたばかりのよちよち歩きで、まだどっちの方向に進もうかという段階のような気がします。いまあらためて“ファッション”というキーワードがでてきて、“渋谷はファッションの発信地”というイメージで歩き出している。さらに渋谷音楽祭と組んで音楽とともに歩んでいく。そうこうするうちにいろんなものが盛り上がっていき、文化の基盤としての「This is SHIBUYA」ができるのではと思っています。

そしてただ若者の街というイメージだけではなく、僕らやもっと上の世代などもっと広い範囲で渋谷とリンクできるようになってほしい。きっとそうなると思います。また、文化のクオリティという部分ではすごく高いところを目指して進んでいるのかなと。“変化”というよりは間違いなく“進化”してくはず。過去の文化をリスペクトしながら、未来に向けて新しい渋谷へと成長していく感じがします。

アンドレア・ポンピリオ 公式HP

渋谷ファッションウイーク(SFW)『SHIBUYA RUNWAY』
開催:2015年10月25日(日)
 会場:文化村通り
 主催:渋谷ファッションウイーク実行委員会
 出演:野宮真貴、アンドレア・ポンピリオ
    東京ニューエイジなど
 公式:shibuya-fw.com

渋谷ファッションウイーク(SFW)のメインイベントとして10月25日、文化村通りを交通規制して行うストリートファッションショー「SHIBUYA RUNWAY」が開催。同イベントではナビゲーターにアンドレア・ポンピリオさんを迎え、新進進気鋭のジャパンクリエイター「東京ニューエイジ」によるファッションショーのほか、スペシャルゲストとして野宮真貴さんが出演し、ランウェイ&ミニライブが行われる。

<関連記事>
歌手・野宮真貴さんインタビュー(2015.10.16)
http://www.shibuyabunka.com/keyperson/?id=133

photo:osamu matsuba /text:makoto shigeno

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