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KEY PERSON キーパーソンが語る渋谷の未来

渋谷を中心に活躍する【キーパーソン】のロングインタビュー。彼らの言葉を通じて「渋谷の魅力」を発信します。

インタビューアイコン

村松亮太郎
(ネイキッド代表)

「都市とはアートである」− 人びとのライフもファッションも音楽も、すべてがカオティックに集積する“東京”を浮き彫りにしたい。

プロフィール

大阪府堺市出身。大阪芸大客員教授。1997年にクリエイティブカンパニー「ネイキッド」を設立し、メディアを問わず、映画や広告、テレビ、インストラーレションなど様々なクリエイティブ作品を手掛ける。2012年、東京駅3Dプロジェクションマッピング『TOKYO HIKARI VISION』の演出を手掛け、大きな話題を集める。以後、『新江ノ島水族館内とアクアリウム』、東京タワーの夜景×マッピング『CITY LIGHT FANTASIA by NAKED』、花の体感イベント『FLOWER BY NAKED』などを開催し、これまでのイベント通算動員数は130万人を数える。2016年12月、表参道ヒルズで『SWEETS BY NAKED』、渋谷ヒカリエで『TOKYO ART CITY by NAKED』が開催中。

子どもの夢、「お菓子の世界」に入り込んでしまった感覚に近い

_この冬も札幌や大阪、佐賀など全国約20カ所で、イルミやプロジェクションマッピングなどを担当されているそうですですが、渋谷かいわいでも企画展が2つありましたね。

昨年末、表参道ヒルズで「SWEETS by NAKED」を開催しました。夏に東京ミッドタウンで、花を感じるイベント「FLOWERS BY NAKED」を開催していたのですが、ものすごく簡単に言うと、あのフラワーのスイーツ版です。「スイーツ」と「プロジェクションマッピング」を融合して、子どものころに夢見た「お菓子の世界」を描いています。メインオブジェとなる会場中央のマンホールからは、バーッと様々なお菓子が吹き出し、エッフェル塔のような建物が逆さになって刺さっています。空中に吹き飛んだマンホールは本物のチョコレートでコーティングし、塔の周りの石畳も本物のブラウニーで作りました。

_お菓子の街は、美術セットもすごく手がこんでいましたね。

表情豊かに自己表現するアイスクリームたち

街の建物は一個一個、職人さんに作ってもらいました。基本的に映画と一緒なので、美術セットを造るのと変わりません。ヨーロッパの街並みをイメージした壁に立つと、デジタルアートのカラフルなジェリビーンズがまるで雨のように降り注ぎます。そこで動くと、体の動きに合わせて雨が飛び跳ねます。さらに街灯には次々に蜜蜂が集まり、中から蜂蜜があふれ出てきたり、電話ボックスがインタラクティブに動いたり…。そのほか、アイスクリ−ムのお花屋さんでは「Ben & Jerry’s」のアイスクリームに、プロジェクションマッピングで色とりどり表情を表現しています。この世界には時間軸が存在していまして、昼、夜と時間経過とともに風景や天候も変わっていきます。通常のアートギャラリーや美術館などは、回遊して鑑賞すると思うのですが、ここでは同じ場所の中で次々に変化が起こるのが大きな特徴です。街には住人が住んでいて、ディズニーランドのキャストのような住人たちがガイドをしてくれます。だから観るというよりも、そこで彼らと一緒に過ごす。まるで映画のワンシーンに迷い込んだような感覚に近いです。

表参道ヒルズで開催中のイベント「SWEETS by NAKED」。会場中央にそびえるエッフェル塔のような巨大オブジェ。

「東京は何だ?」を浮き彫りとする、巨大模型によるアート展

_表参道ヒルズに続き、昨年末からは渋谷ヒカリエでも企画展が始まりましたが、こちらはどんな内容ですか?

「お菓子の世界」から一変して、渋谷ヒカリエでは「都市はアートである」というテーマで「TOKYO ART CITY by NAKED」を開催します。簡単にいえば、巨大模型の空間に入っていくというもの。一般的に模型というと、小さな街の模型を思い浮かべると思うのですが、あれだと絶対に駄目だと。今回は"都市"の空間に入っていくことに意味があります。ここは随分、プロデューサーともディスカッションを重ねた部分なのですが、使い回すことを考えれば小さい方がいい。でも、それでは意味が変わってしまう。街中に入るのと、俯瞰で見るのでは体感が全く別物だから、それだけは譲れないと。ですから、ありのままの都市をそのまま再現しても面白くも何ともないので、あえて街をデフォルメしてパースとかもわざと歪ませています。今回の狙いとして「東京とは何だ?」を浮き彫りにしたいと考えています。

_東京のいいとこ取りみたいな感じでしょうか

そうです。象徴的なものを捉えています。「都市の中にアートっぽいものを」取り入れるんじゃなくて、そもそも「都市はアートだよね」という考え方なんです。人びとのライフからファッションも音楽も、看板やトレンドも、すべてがカオティックにできているアートであり、その集積地が都市じゃないかと。ビルが建ち並び、人口密度の高い行政区が都市ではなく、人が集まり積み重ねてきた営為の集積そのものが都市であるという。それを体感させたいと考えています。巨大模型の高さは4メートル以上、実際に東京駅や東京タワーなどを目の前で見ているような体感に近く、そういう中を歩いて行きます。

_たとえば、東京のどんな建物やエリアが再現されているのですか?

めくれ上がる渋谷の街。中央の高い建物は渋谷ヒカリエ。

「東京国立博物館」や「東京駅」「東京タワー」など、今まで僕らがプロジェクションマッピングを発表してきた場所と作品を再現しています。たとえば、東京タワーはすごく高いので全体を表現せず、あえて展望台の上だけ。この展望台からは東京の街が見えるような造りにしています。街の途中からは映画「インセプション」みたいに、道路がグニャッとRにめくれ上がり、スクランブル交差点は異常にデカい。要するに印象値として「スクランブルとは何ぞや?」ということが端的に表されていれば、それはオーケー。各建物の大きさや比率もみんなバラバラ、原寸で考えたら比率はおかしいけど、でも体感としては、そういう感覚で街の中を歩いていると思う。リアルな東京は外の世界にあるので、それをバーチャルシティにどう閉じ込められるか。「ここに東京の全てがある」みたいなものを表現したくて。もしかしたら、現在だけではなく未来の東京が見えるかもしれないし、過去あったものも入ってくるかもしれない。現実拡張された世界と、リアル東京とがシンクロしていくという。ここで起きたことがリアルな場でも起きていくなど、そういう関係性を持たせていきたい。

_ここを訪れたお客さんに何を感じてもらいたいですか?

過去も現在も、未来も含んで"東京"を考えてほしい。全部含めることに意味があるので、それをみんなが考えるきっかけになればいいと思っています。2020年のオリンピック開催に向けて、東京に注目が集まるわけですから、そのときに東京をどう伝えられるのか。そもそも皆さんは東京という街をどう理解しているのか。ざっくりした歴史を言えば、もともと東京は利根川を曲げて湿地地帯だった関東平野を乾かし、都市開発が行われてきたところ。大阪とか京都とは話が違うわけです。だから、東京に土着性みたいなものを感じにくい、そういうことも理解しながら考えて欲しいなと。今までネイキッドの企画には、うんちくは一切なかったのですが、今回の展示はうんちくが多いですよ(笑)。ただ、一般の方にとっては「都市はアートである」と言われるよりも、見て楽しい方がいいでしょう。だから2年前に東京駅で展開した3Dプロジェクションマッピング「TOKYO HIKARI VISION」を再現するなど、その場で体感して楽しめる仕掛けも考えています。今回の展示では一般の人から都市づくりに関わる人まで、多様な人びとを受け入れるだけのキャパシティーを持っています。スペースには限りがありますが、東京をギュッと表現できたと思っています。

渋谷ヒカリエで開催中のアート展「TOKYO ART CITY by NAKED」。会場内には東京を象徴するランドマークの巨 大模型が建ち並ぶ。

ゴチャっとしながらも格好いいのが、渋谷らしさ

_ここからは渋谷の街についてお尋ねします。現在、ネイキッドの本社は、代々木八幡にありますが、そもそもここを拠点に選ばれたのはどうしてですか?

この辺は昔から好きなんです。僕は作られすぎている街が嫌いで、人の営みが感じられ街が好きなんですよ。代々木八幡は仕掛け感が全くなく、自然とこういう雰囲気になっていったという、ある種のローカル性がいい。洗練度と土着性があって、交通の便が良い割に人混みもなく、もしかしたら東京でベストじゃないかと思うんです。サンダルで歩いてもオーケーな感じもあるし(笑)。あと近くには、代々木公園や明治神宮があって空気がいい。高尾山とか行かなくていいし、パワーも尋常じゃないですよ。

─―のんびりとした代々木八幡の一方、渋谷駅周辺では再開発がどんどん進んでいます。これから生まれ変わる渋谷に何か期待していることはありますか?

ベタな言い方をしたら、渋谷は東京のどの街よりも、自由でカジュアル性の強い街であっていい。一番やんちゃしていい街じゃないですか。それが渋谷の街の役割じゃないかと思います。決して、汚いのがやんちゃということではなく、もっと自由であっていいと思うんですけど。

_それを具現化するために、必要なものとは何でしょうか?

ものすごい単純な話として、きれいに駅前を整備するだけではなく、外壁やデザインをめちゃめちゃ個性的にしちゃってもいいと思う。どこの街でも、再開発はみんな同じになっちゃうので。一方で、丸の内とかに行くと、整然感が逆に気持ち良かったりするんですけど、それは丸の内がそういう街だから。「渋谷らしさは一体どこに行ったのか?」、徹底的に渋谷はフリーダムであり、クレージーでいいんじゃないかなと。僕の好みは全く置いておいてですよ。たとえば、草間彌生さんの世界みたいな「水玉の高層ビル」が立ち並んでいるのが渋谷じゃないかと。これはあくまでも例えですが、そのぐらい自由にやってもらったほうがみんな安心するし、渋谷らしい。ある意味でニューヨーク的な、ニューヨークって自由で各々がガーッと表現しているし、人びとの営みが街そのものになっているところがあると思うんです。ゴチャっとしながらも格好いいというか。そのカオティックな役割ができるのって、都内では渋谷と新宿だけ。街っていろいろな要素で出来上がるから、現場でやりすぎると危なくて、そうすると嘘っぽい街が出来上がっていくんですよ。開発しましたみたいな。いろいろな人が集まってきて、いろいろな人が何かを作っていって街になるので、何かにはめ込もうとしちゃ駄目なんですよね。開発で色々なものが出来上がってみたら、一番ありがちで何も変わらないところに落ち着いてしまうんじゃないかと。それではつまらないですよね。

_最後なんですけど、渋谷の街で、これからネイキッドが仕掛けてみたいアイデアがあれば、教えてください。

ニューヨークもそうですけど、人びとのライフスタイルにウェルネスが絶対的なもので、その中でもスポーツがもっとも身近にあります。アスリートの競技や観戦だけではなく、スケボーなどのX系もそうだし、朝起きてジョギングするのもスポーツだし、暮らしの中で歩きやすい服装になるのもスポーツ。ファッションにも影響力がすごく強くて、ニューヨーカーの半分ぐらいは、スポーツウェアを着て過ごしているんじゃないかと思うぐらい。そもそもスポーツってゲームとも言うわけですから、当然、エンターテインメント性もある。スポーツ市場を見れば、観衆も含めて、はるかにアメリカのほうが大きい。スポーツバーも多いし、どの店でもメジャーリーグをやっている。スーツにスニーカーを合わせるのだってそうじゃないですか。そこの感覚は未来の都市においても、ライフスタイルの中で非常に大きな位置を占めると思います。

>>ネイキッド公式ホームページ

TOKYO ART CITY by NAKED

会期:
2016年12月21日〜2017年1月12日
時間:
11:00〜20:00
場所:
渋谷ヒカリエ9階 ホ−ルB
料金:
当日 大人(高校生以上)1500円/小人900円
公式:
TOKYO ART CITY by NAKED

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