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【レポート】再開発で消えゆく渋谷・桜丘町でアートイベント レスリー・キーさんらアーティストが集結

▲大きな幹線道路で分断される桜丘町エリア

JR渋谷駅西口から国道246号線を渡った先、渋谷・桜丘町1〜3番地、8番地(4番地も 一部含む)の飲食店やライブハウス、事務所、住宅など約60棟は10月末〜11月初旬にかけ、「渋谷駅桜丘口地区」の再開発に伴い一斉に立ち退きました。立ち飲みの名店「富士屋本店」や、創業46年のジャズ喫茶「メアリージェーン」、小料理屋「三漁洞」など、特に1、2番地には隠れ家的な居心地の良い老舗が多く、通い詰めたお店がなくなり、寂しさを感じている人もきっと多いことだろう。

▲246号線沿いには老舗の「ラーメン亜寿加」「三魚漁洞」「イケベ楽器」が並ぶ。▲ジャズファンの聖地として愛された「メアリージェーン」

シャッターが閉まり、活気のあった街は今、来年1月の本格的な工事着工を控え、ひっそりと静まり返っている。こうした消えゆく街の中で11月17日より、アートイベント「arigato sakuragaoka by art photo tokyo」が始まった。会場は「ヤマハエレクトーンシティ渋谷」の跡地だ。

かつて「崖の上のヤマハ」と呼ばれた「ヤマハエレクトーンシティ渋谷」(旧渋谷エピキュラス)

1975年にボウリング場跡地に開業した同施設は、もともとヤマハ所属アーティスト向けのレコーディングスタジオ「渋谷エピキュラス」であったが、1992年に「ヤマハエレクトーンシティ渋谷」が開設。以後はエレクトーン中心のイベント・ライブのほか、情報発信の場として利用され、その小高い立地から桜丘町エリアを見下ろすシンボル的な存在として長年親しまれてきた。

ヤマハビル跡地の同施設一棟を利用し現在、総勢50人以上のアーティストたちが集結したアートイベントが行われている。イベント開催の目的は長年愛され続けてきた「今までの桜丘町の”まちじまい”」と共に、五輪後の2023年に生まれ変わる「未来の桜丘町の”まちびらき”」を祝う2つの意味が込められているという。

| 巨匠からデジタル時代の若手まで 「今の渋谷」を切り取る作品も

さて先週から始まったアートイベントの内容を具体的に見ていこう。

参加アーティストはライアン・マッギンレーさん、篠山紀信さん、荒木経惟さん、蜷川実花さん、杉本博司さん、レスリー・キーさん、HIROMIXさん、柿本ケンサクさん、若木信吾さん、茂木モニカさんなど、日本を代表する巨匠から第一線で活躍する若手までが一堂に集結。さらに写真家のみならず、グラフィティやストリート・アートを手掛けるEVERYDAY HOLIDAY SQUAD、SIDE CORE、建築家・谷尻誠さん、イラストレーター・長場雄さん、メディアアートの田所淳さん、脇田玲さんなど、各ジャンルのトップクリエイターも数多く参加し、見どころが満載だ。

▲世界的に人気の高い若手写真家ライアン・マッギンレーさん。ヌード、大自然、ポップな色彩などが特徴のアーティスト

中でも会場のメインスペースを占めていたのは、レスリー・キーさんの作品。

▲レスリー・キーさんが桜丘町で撮影した作品▲レスリー・キーさんが桜丘町で撮影した作品

2階Room6には、レスリーさん撮影による若い男性や双子コーデの女性を被写体とした作品が壁一面に掲出。再開発計画地である桜丘町周辺をロケーションとし、モデルの背景には「池辺楽器」「JR山手線沿い」「西口歩道橋」など見慣れた桜丘町の風景が収まっている。

▲レスリー・キーさんが撮影した樹木希林さんの写真。

3階入口近くのRoom1には、今年9月に亡くなった女優・樹木希林さんを偲び、レスリーさんが企画し奈良で開催された「愛・樹木希林」展(9月20日〜24日)の写真のほか、生前親交のあった著名人からの追悼映像、河瀬直美監督が寄せた手紙などが公開。「消えゆく再開発の地」「平成の終わり」「女優の死」、一時代の終焉を強く感じずにはいられない。

今回イベントで紹介されている作品の中には、「渋谷」をロケーションにしたものも数多く見られた。その中からいくつかピックアップして紹介したい。

2階Room7の展示は「TOKYO PHOTOGRAPHER'S NIGHT」。広告やアート、映像などの分野で活躍する、音楽好きのフォトグラファーを中心に2011年から開催しているクラブイベント「TOKYO PHOTOGRAPHER'S NIGHT」。そのイベントに参加する10人のファトグラファーによる国内初のグループ展が行われている。

▲TOKYO PHOTOGRAPHER'S NIGHTグループ展示の様子。手前は笠井爾示さんの作品

特に目を引いたは、P.M KEN(ピーエムケン)さんの海外と日本の風景を合成した作品だ。今回の展示では、ブルックリンのウィリアムズバーグ」と「渋谷パルコ」、「タイムズスクエア」と「SHIBUYA109」を融合した写真などを展示している。

▲HD TIMES SQUARE ,109(2018)/2200×1500mm/ 左半分がタイムズスクエアで、右半分が現在の渋谷109付近の風景

▲HIROMIXさんが渋谷で撮り下ろした写真。手前写真は渋谷スクランブル交差点付近

同じく2階Room9では、HIROMIX(ヒロミックス)さんの渋谷の街の撮り下ろしを展示。かつてコンパクトカメラで自撮り写真を撮っていた彼女は、現在のインスタグラマーの先駆けで、90年代の「女の子写真」ブームの火付け役であった。
▲HIROMIXさんが撮り下ろした写真。右手前は東急ハンズ付近

今回のイベントに向けて、「スクランブル交差点付近」「東急ハンズ付近」など、渋谷の街を撮り下ろしているが、当時のHIROMIXらしい色合いは今も健在のようだ。
▲柿本ケンサクさんの作品。現在、渋谷をはじめ都内4カ所のビルボードを柿本さん自らが購入し、アート作品を街頭に掲出中。会場では俳優・窪塚洋介さんをモデルにビルボード前で撮影した作品が天井・足元・壁全面に展示されている

写真作品以外の映像やアート作品も展示されている。中でも面白かったのは、アーティストグループ「Everyday Holiday Squad」の映像作品だ。再開発で変容する「渋谷」にテーマにした映像作品「ROAD WORK ver TOKYO」では「夜の渋谷」を舞台とし、工事現場の作業着姿に扮した若者たちがスケートボードで縦横無尽に街中を駆け巡る。最終的に彼らが辿り着いたスペ−スに「スケートパーク」を作るというもの。同作品は震災後に石巻で制作した作品の続編として作られた作品で「被災地から東京へ、ストリートカルチャーは場所を超えて風景をつなげる」という意味が込められているという。
▲Everyday Holiday Squad映像作品「winning eleven」より

さらにもう一つの映像作品「winning eleven」では、夜間のある工事現場で若者が地面に白線を引いてサッカーコートを描く。一夜明け、工事現場に作業員がやって来るが、白線のサッカーコートを気にする様子は全くなく、いつものように工事が再開される……。「工事現場に1日限りの公園が復活する」という何ともユニークな映像作品に仕上がっている。
▲駐車場スペースに展示中の脇田玲さんのメディアアート。「ワゴン車優先」などの文字や「黄色の駐車線・矢印」などが残る空間をそのまま活用している

そのほか、1階駐車場スペースの脇田玲さん、4階Room2の田所淳さんなど、映像や音響を使ったメディアアートも見られ、会場の空間構成にリズムカルな変化を与えていた。

| 取り壊される「ヤマハビル」一棟をそのままギャラリーに

写真や映像などの展示作品のほか、あと数カ月で解体される「ヤマハビル」にも注目してもらいたい。同イベントの一番の特徴は建物や内装に手を加えず、スタジオや休憩室、リハーサルスタジオ、看板など、今年閉館した時のままの姿をそのまま利用して、今回のギャラリー展示が行われている点にある。
▲施設内は小さな部屋やスタジオが数多くある▲「ヤマハエレクトーンシティ渋谷」の電飾が残る

全5フロア、屋上で構成されている建物内は、小さなスタジオやルームなどが数多くある。アート作品を鑑賞する過程で、必然的に階段を上ったり下がったり、狭い廊下を奥まで歩いていったりするのだが……、今自分がどこを歩いているのかを見失うほど、ヤマハビルは、まるで入り組んだ迷路のようだった。きっとフロアマップを見ながらではなければ、お目当てのアーティストのスペースには辿り着けないだろう。

▲屋上に通じる階段付近にはグラフィティが描かれている

40年以上を経た古い建物は新しいビルとは異なり、どこか懐かしく優しい。まるで学校の校舎のような雰囲気が漂う。
▲ヤマハで働いていたスタッフたちが壁に残した「感謝メッセージ」の数々

建物の壁の至るところには、今年施設が閉館する際にヤマハで働いていたフタッフが書き残したであろう「感謝のメッセージ」が残り、この施設が多くの人びとに愛されていたことを改めて実感させられる。

▲大都会・渋谷の中に突然開けた屋上のオアシス。このルーフスペースでもDJ、ライブイベントが予定されている。

今回初めて施設の中に入ったのだが、特に印象的だったのは「屋上スペース」だ。北側に再開発中の「渋谷フクラス(旧東急プラザ)」、東側に「渋谷スクランブルスクエア」「渋谷ストリーム」と渋谷駅前の再開発の様子が360度パノラマで一望できる。また小高い立地にある同施設の上には視界を遮るものは一切なく、都会とは思えぬ広い空が広がる。作品鑑賞に疲れたら、ここに出て空を見上げながらBARスペースで休憩をするのもいいだろう。
▲3階のメインスタジオ入口付近▲メインスタジオの広い空間を利用し、会期中はここがイベント会場となる

3階のメインスタジオにも巨大スクリーンやシート、BARスペースが併設。ここでは会期中に様々なゲストを招いて、DJやライブイベントが開かれる。
▲BARスペースも完備。アルコールを飲みながらリラックスした雰囲気の中でライブイベントが楽しめる空間が広がる

23日(18〜22時)は若手注目シンガー Kick a Show(キッカショウ)によるクラブ・フロア発の最新型シティポップ、29日(19〜24時)はDJ Nobuを筆頭に世界を舞台に活躍するDJたちが登場する「TOKYO TECHNO SOCIETY #5」を発信。30日(19〜20時半)は作品展示する217..NINAさんと親交のある歌手・青山テルマさんによるトークライブ、トーク後(20時30分〜22時)は高校生ラップ選手権(2015年)と「ラップスタア誕生!シーズン2」(2018)で優勝した経験を持つ、10代ラッパー Leon Fanorakis。(レオン・ファノラキス)さんが登場するなど、良質なイベントが予定されている。
▲夜間はライトアップで来場者を迎える

2.6ヘクタールの「広大なまち」がもう間もなく、消え去ろうとしている。豪華アーティスト参加によるアートイベントを楽しみながら、渋谷・桜丘町やヤマハの記憶を各々の中にしっかりと刻み込んでほしい。

入場料は1,000円(税込、事前登録制)、会期は12月2日まで。

arigato sakuragaoka by art photo Tokyo
〇会期:2018年11月17日(土)〜12月2日(日)
 木・金・土・日曜 開催(※月・火・水曜は休館)
 12:00〜20:00
〇会場:ヤマハエレクトーンシティ渋谷跡地(桜丘町8丁目27)
〇入場:1,000円(公式サイトから事前サイト登録制)
 ※高校生以下、60歳以上は入場無料
〇特別協力:
 渋谷駅桜丘口地区市街地再開発組合
 株式会社東急不動産
〇後援:渋谷区
〇主催:ARIGATO SAKURAGAOKA 実行委員会
〇企画制作:エーベックス・エンターテイメント
〇公式:https://www.artphototokyo.com/

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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