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震災、原発問題に揺れる日本
いま観るなら、映画「四つのいのち」だ!

5月7日、GW最中の土曜日に渋谷では1万人規模の「反原発デモ」が行われ、各メディアで大きな話題となった。東日本大震災に伴う福島第一原発の事故に端を発し、原子力エネルギーの停止を求める声が日増しに大きくなっているように感じる。とはいえ、その一方でクーラーがないと困るけど、原発も怖いし、CO2も増やしたくないし、電気代も安い方が良い・・・みたいな、私たち現代人は大きなジレンマを抱える。

こうした原発、代替エネルギーへの関心が高まる中で渋谷の映画館では、それに関連した作品に人気が集まっている。ドキュメンタリー映画『100,000年後の安全』と『ミツバチの羽音と地球の回転』だ。

まず、映画『六ヶ所村ラプソディー』(2006年)で大きな注目を集めた鎌仲ひとみ監督の最新作『ミツバチの羽音と地球の回転』は、「原発建設問題」に直面する山口県・祝島で暮らす島民たちの姿と、スウェーデンの先進的な取り組みする人びとの両方を捉えた作品。ユーロスペースでの上映は一旦終了しているものの、反響の大きさから6月からアンコール上映されることが決定している。次に『100,000年後の安全』はフィンランドの高レベル放射性廃棄物の最終処分場に実態を取材した作品で、原発から出る廃棄物の行方を問題提起するもの。配給するアップリンクでは当初、今秋に公開を予定していたが、震災後の原発問題を受けて急きょ前倒し4月から公開に踏み切った。つい数日前から、日本の放射性廃棄物の処理場をモンゴルに建設するだの、岐阜・瑞浪に決まっただのというニュースが飛び交い、一層、廃棄物処理の問題がクローズアップされ始めている。いわば、建設でも、処分でも問題を抱え、まさに袋小路状態。とてもサステナビリティ社会とは縁遠い。私たちはこの2つの作品から何を学び、そしてどんな結論を導き出すのか。

『ミツバチの羽音と地球の回転』公式HP
『100,000年後の安全』公式HP

ちなみに映画『100,000年後の安全』は明日(5/13)、ニコニコ動画にて有料生配信されるそうです。映画館に行く時間のない方はネットでご鑑賞されてはいかがでしょうか。
*ニコニコシアター http://live.nicovideo.jp/gate/lv48994804

またこの2つの作品以上に、こうした時期だからこそ「必ず観て欲しい作品」といえば、これです。そう、イメージフォーラムで公開中の映画『四つのいのち』です。「老人(人間)→仔山羊(動物)→木(植物)→炭」へと生命のリレーが淡々とバトンタッチしていく様を、小さな村を舞台に描いた地球規模の壮大なドラマ。山羊の群れを追う年老いた牧夫が死に、そして翌朝に仔山羊が生まれる。季節は変わり、山中の大木は数百年も続くお祭りの象徴として切り倒され、お祭りが終わると炭焼き職人の手で木炭に加工される。そして木炭は売られ、煙突から煙として舞い上がっていく・・・。南イタリア・カラブリア地方では数百年もの間、何も変えず何も変わらず生命の連鎖が続き、人も動物も植物も・・・すべてが同列に扱われる。 一切の台詞を排除し、余計なカット割りを控え、まるでドキュメンタリーを観ているかのような臨場感でついつい作品中に入り込んでしまう。一見、長回しのルーズな映像かと思いきや、山羊が悪戯して車止めを外してしまうシーンなどでは、綿密な計算によって作品づくりが行われていることがうかがえる。特にストレートな社会批判や文明批判はないものの、観ているだけで癒され、こうした自然と調和したプリミティブな生き方こそが人間の本来あるべき姿なのではないだろうか、と納得されられてしまう。

表現が適用ではないが、とにかく観た後に先祖供養でお墓参りした後のような、爽快感をなぜか感じる。そんな作品です。

『四つのいのち』公式HP

<クレジット>
写真(1番目):
ミツバチの羽音と地球の回転 2010年/日本/135分/配給=グループ現代

写真(2番目):
2009年/79分/デンマーク、フィンランド、スウェーデン、イタリア/
配給・宣伝:アップリンク

写真(3番目):
2010年/イタリア、ドイツ、スイス/カラー/88分/配給:ザジフィルムズ/
©Vivo film,Essential Filmproduktion,Invisibile Film,ventura film.

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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