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この世界はどんな風に見えている?〜若手アーティストの公募展〜

若手アーティストによる個展形式の展覧会「TWS-Emerging 2015」第5期が9月26日より、トーキョーワンダーサイト(TWS)渋谷で始まる。

TWS-Emerging 2015は、若手アーティストの登竜門として、東京都とTWSが主催する公募展「トーキョーワンダーウォール(TWW)」と連携したプログラム。TWWでは、毎年多数の応募者の中から約100人を選出。入選作を東京都現代美術館で展示している。TWS-Emerging2015は、TWW2014の入選者を対象に希望を募り、審査で選ばれたアーティスト21人を7期に区分し、今年の4月11日から第1期の展示がスタート。今までに第4期までが終了し、さらに来年1月24日までの期間をかけて計7期の展示を行っていく。これから世に羽ばたくであろう、まだ無名ながらも豊かな才能を持つ新人アーティストたちを、いち早く発見できる場といえるだろう。

今回のレポートでは、9月13日まで行われていた第4期の展示を取材し、その模様をご紹介したいと思う。参加アーティストは1989年生まれの江藤佑一さん、1990年生まれの豊田奈緒さん、1987年生まれの石川里美さんの3人。インスタレーション、絵画、生け花というそれぞれの手法で、フレッシュな作品を披露していた。
江藤佑一「漂流シマ」より

会場入り口に構える竹馬型オブジェとそれに乗った男性の映像は、江藤さんの作品。代々木公園で踏んだ足下を会場であるTWS渋谷に持ってくることがテーマで、展示されている竹馬に乗って、江藤さんが代々木公園から会場まで歩みを進める様子を上映。
江藤佑一「漂流シマ」より

ほかにも足下にエアポンプを敷き詰めた体験型作品や、日本と地球の裏側であるブラジルの記録映像など、地面を歩くという行動そのものが、地球を素材とした彫刻活動といえるのでは?という思いを発端に生まれた意欲的な作品群が並んだ。
豊田奈緒「MISS SCORUPIUS」より

豊田さんは、幅5メートルを超える壁いっぱいの絵画作品4点を展示。すね毛の伸びた足、心臓や鳥の頭など、グロテスクなモチーフがピンクや紫といった明るい色彩で描かれる。キャンバスの多くを占める「余白」とモチーフとのコントラストも印象的だった。
石川里美「錯覚の生」より

石川さんは建築科を卒業後、「型」にとらわれず自由な表現を求めるいけばな草月流に師事。植物を「生き物」として、都市で人工的に生かされた植物と都市に生きる人間の姿を重ね、建築資材や輸血パックを組み合わせた生け花の構造物を展開していた。

ある人が世の中をみて、そこで感じたものを伝える。会場に並ぶのは、そんなシンプルな衝動を発端にした作品の数々。みるものはその作品に共感したり、作品を通して新しい物の見方を持つことができたり。現代アーティストという肩書きは、職業であるほかに生き方であり、世界に対するものの見方でもあると思う。アーティストが私たちの心に隠れている感性や視点を呼び起こしてくれる水先案内人であるかぎり、それは私たちの豊かな人生にとってなくてはならない存在の一つになるだろう。

さて9月26日(土)より始める第5期の展示は、1987年生まれの大人倫菜さん、1985年生まれの木浦奈津子さん、1987年生まれの野島良太さんの3人が参加。木浦さんは「目にとまった一瞬の景色の印象」をキャンバスに焼付け、野島さんは「普段のいろいろな何かを無かったことにしないため」に描かれた油彩を発表。大人さんは個人的体験から生まれる制作活動に「物語性」を加えることで作品として自立させることを目指すという。同年代の画家たちが、それぞれの視点から発展させた絵画などの表現について共通点や違いを探りたい。

会期は2015年9月26日〜10月25日まで。

さらに今後のスケジュールは、渡邊拓也さん、北村拓之さん、黒河 希さん(以上第六6期2015年11月7日〜12月6日)、朴 ジヘさん、福本健一郎さん、大岩雄典さん(以上第7期 2015年12月19日〜2016年1月24日)の展示が続く予定。いずれも展示初日には、各アーティストと美術分野で活躍するゲストを迎えて、各作品を回りながらそれぞれの作品や制作について話を行う。

アーティストとして生きるということー彼らはその険しい道程のスタートラインに立ったばかり。同展を通して彼らの取り組みを応援しつつ、その瑞々しい世界への眼差しに刺激を受けてみてはどうだろうか?

TWS-Emerging 2015 【第5期】
〇開催:2015年9月26日(土)〜10月25日(日)
〇時間:11:00-19:00(入場は閉館30分前まで、月曜休館)
〇会場:トーキョーワンダーサイト渋谷
    渋谷区神南1-19-8 渋谷区立勤労福祉会館1F
〇料金:入場無料
〇公式:http://www.tokyo-ws.org/shibuya/index.html

編集部・横田

1980年生まれ、神奈川県在住。大学進学を期に上京して以来渋谷はカルチャーの聖地です。現在は渋谷文化プロジェクト編集部に所属しながら、介護士として働くニ足のわらじ生活です。

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