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【レポート】渋谷の未来が〇〇に変わるかも!? 渋谷フューチャーセッション

<イベント概要>
未来の渋谷の可能性をひろげるシンポジウム
「Making Maybe.“かも”づくりフューチャーセッション」
〇開催:2015年10月8日(木)18:30〜21:30
〇会場:渋谷ヒカリエ9階 ヒカリエホール ホールB
〇主催:渋谷区
〇共催:東京急行電鉄/東京地下鉄/京王電鉄/東日本旅客鉄道

未来の渋谷の可能性をひろげるシンポジウム「こんな渋谷、いい『かも』、くる『かも』、できる『かも』 Making Maybe.“かも”づくりフューチャーセッション」は10月8日(木)、渋谷ヒカリエで開催。渋谷に関心を寄せる一般参加者200人が、長谷部健区長らと一緒にこれからの渋谷の可能性を探った。

「100年に一度」といわれる大規模開発が進む渋谷駅周辺。この再開発にあわせ渋谷はどのように変貌を遂げるのか? 渋谷の未来の可能性から今なすべきことは何かを考えようと、渋谷区が企画した同イベント。事前に参加者から「渋谷で叶えたい”〇〇かも”」をテーマに渋谷の未来像を募集し、長谷部区長と渋谷にゆかりのあるゲスト、一般参加者で“渋谷らしい暮らし方、遊び方、働き方”を語り合う形で進められた。
フューチャーセッションズの野村恭彦さんがモデレーターを務め、長谷部区長、渋谷商店会連合会の大西賢治会長、渋谷に拠点を置くロフトワーク代表の林千晶さんと、サイバーエージェント・クラウドファンデイングの坊垣佳奈さんがゲストとして登壇した。

未来を意識してか、区長は電動立ち乗り二輪車「セグウェイ」に乗って現れた。

■「渋谷川でボート運行」「スクランブル交差点でビアガーデン」
初めに一般参加者から事前に寄せられた独創性あふれる「渋谷で叶えたい”〇〇かも”」を、音楽や祭り、アート、スクランブル交差点、渋谷川などとジャンルに分けて紹介された。具体的なアイデアの一部を見ていこう。まず、1回の青信号で約3,000人が通行する「スクランブル交差点」で実現したいアイデアでは「毎晩ビアガーデンにする」や「NYタイムズスクエアのようなカウンダウンイベントをやっちゃう」「パブリックビューイング」など、渋谷駅前という好立地かつ広い空間を贅沢に使ったイベントを提案する声。映画や音楽、ファッションなど、様々なエンターテイメントが集まる渋谷らしいアイデアとして「まちなかで自由に音楽を奏でる」「センター街でファッションショー」「日本のブロードウェーに」など、渋谷の街全体が文化の発信となる意見が数多く出された。
面白いものでは多種多様な国籍の人々が暮らす点に注目し、「区内の大使館などと定期的に民族文化祭をやる」「渋谷の公用語を英語にしちゃう」という意見や、たくさん訪れる人をエネルギーに変える「歩行者の力で発電」や「騒音をエネルギーにする」など、猥雑した渋谷の街をうまく活用する方法なども紹介された。

そのほか、渋谷3丁目エリアの再開発で渋谷川の水辺空間が整備されることに伴い、「渋谷川の活用」を期待する声も目立った。かつて渋谷川に流れ込んでいた支流は、唱歌「春の小川」のモデルともいわれているが、現在は水量が少なくその面影は全くない。再開発による水辺空間の復活により、「蛍が見られるスポットに」や「メダカの学校の復活」など水質改善を望む声や、「ボートのバス運行」ができる水量を期待する声などが寄せられた。すぐに実現できそうなものから、奇想天外なアイデアまでが次々と読み上げられ、会場内の参加者たちが渋谷の将来に想いを馳せた。

■クラウドファンディングで資金を集めて、アイデアを実現化していく
これらのアイデアを受け、渋谷商店会連合会の大西さんは「実は、(毎年)音楽祭や芸術祭をやっている。この渋谷という箱のなかで、実現の高いものをどんどんやればいいと思う」と感想を述べ、林さんは「商店会は一番クラウドファンディングが上手な人たちだと思っている。たとえば、祭りでは金1万などと(寄進者の名前を貼り出しており)、それをオンラインでやればいい。サポートした人の名前が掲載され、『俺がサポートしているぜ』となる」と商店街とクラウドファンディングの意外な親和性を見出す。

区長も「(寄せられた)“かも”を10個ぐらいに絞り、クラウドファウンディングで資金を集めて、上位3つを必ずやるとかいいかもしれない。渋谷に住んでいない人であってもお金を出すことで意思表明したということになる。イベントにお金を出すことは投票にも近い」とし、坊垣さんも「お金が集まる分だけ共感も集まっているということ。そう意味では、みなさんの意思を反映しながら(アイデアを)実現していけるといういい仕組みだと思う」と後押しした。

そんな中で、大西さん自身が真っ先に実現したいのは「スクランブル交差点での盆踊り」だという。銀座や新宿、秋葉原など都内の繁華街で歩行者天国を実施している前例を挙げ、「(歩行者天国が)渋谷にないのはおかしなものかなと。それも過去に実績のあることなので、区長にお願いしてやりたい。これにクラウドファウンディングを加えたい」と区長に直談判する一幕も。寄せられた“かも”は渋谷の繁華街でのイベント開催にまつわるものが多く、「歩行者天国」の実現に伴い、そのアイデアの具現化が一気に近づく。かつてのホコ天の復活が“かも”実現の一つのキーと言えそうだ。

区長は「企業、行政、商店街、区民とそれぞれに得意分野がある。今日ここにいるゲストだけでも役割分担できており、たとえば坊垣さんにファンドレイジング(寄付金を集める)をお願いして、林さんと企画を一緒に考えて、商店街の大西さんには現場で頑張ってもらう。そして、僕は行政として規制緩和とか仕組みづくりする」と語り、よいアイデアはどんどん取り入れ、渋谷の未来をつくっていきたいという姿勢を示した。

常に自動車が行き交うスクランブル交差点の歩行者天国化。国道246号や明治通りの主要幹線道路、宮益坂、道玄坂など渋谷駅周辺は交通量が非常に多く、単純に交通規制をすれば良いというものでもなさそうだ。まだまだクリアしなければならないハードルは高そうだが、あの繁華街ど真ん中のスペースでのイベントは盛り上がることだろう。
和気あいあいとした雰囲気の中で、様々なアイデアが次々に出てきた。

■渋谷愛にあふれる区外の人びとが参加できる『渋谷民』の仕組み
後半の質疑応答では壇上の盛り上がりに触発され、一般参加者からも様々な意見や感想が寄せられた。渋谷道玄坂商店街からの参加者は「地元が一番悩むお金づくりは(先ほどから話に出ているクラウドファンディングを使えば)できそうだし、(私たちも)アイデアはたくさんある。こんな絶好のチャンスはない。普通は規制に回る区長さんも『やれやれ』と言っているので、このせっかくの機会に地元から湧き上ってくるものを実現していきたい」と熱く語り、桜丘町からの参加者は「つながることがいま大事だと思う。渋谷はいい会社、人材がたくさん。その情報をつなげて可視化していくことで、ものすごいパワーが出てくるはず。それには、渋谷オフィシャルのコミュニティFMをつくることで、情報がひとつにまとまって繋がっていくのではと思う。2年前になくなったコミュニティFMの再開を後押ししてほしい」と地域メディアの復活を強く願った。

続いて東横線沿線の在住者で、渋谷でよく遊ぶという参加者は「自分は渋谷区民でもなく、渋谷で働いているわけでもない。行政にお願いしたいのは、『ふるさと納税』ではないが、お金を払って『渋谷民』みたいな住民票を発行してほしい。渋谷に対する郷土愛を育めるようなものがほしいなと思う。渋谷でいろいろ実現するための力を集める仕組みがあると嬉しい」と渋谷に対する思いを語った。

質問に対し、区長は「ちょっと近いことを考えている。目的を持った、例えばこれだけIT企業が(渋谷に)あるが、行政はやっぱり住民側を向きやすく、IT企業のためにできていることはそんなにない。IT企業がこの街で活き活きと仕事をするために『ファウンディングしてください』というお金の集め方もある。当然、渋谷区外の人たちがファンディングする形になるだろう」と区民以外の参加を含めて、様々なアイデアを温めていることを明かした。
「渋谷民」の仕組みに関しては、林さんも提案。「私も気持ちは渋谷民だが、住んでいるのは目黒になる。渋谷はそういう人たちを『あなたは渋谷民です』と認め、その人たちのためにも政策をつくってほしい。私みたいに人生のほとんどを渋谷で過ごしている人を渋谷民に入れてほしい」と語り、区長も同調した。「今まで行政は投票者(住んでいる人)に向いてしまう。だけど、この街が成り立っていて文化が発信している人もそうだけど、ここが好きで働いている人、遊びに来る人などいろんな人たちが価値をシェアしたりだとかしながら文化が出来上がっている。ゆえに、区民憲章とは別に、『渋谷人』でもいいかもしれないがいいなと思う。いま、渋谷区の基本構想をつくっているので加えてもいいかも」と述べた。

渋谷の未来は、大規模開発によるハード面だけでなく、住む人、働く人、遊ぶ人など渋谷を訪れる人たちのアイデアや行動でも、大きく変貌を遂げることだろう。渋谷に対する愛であふれる人が集ったフューチャーセッションの様子を目の当たりにし、これからの渋谷がさらに楽しみになった。また、クラウドファンディングの活用が多く出たこともあり、坊垣さんは自社で運営するクラウドファンディング「Makuake(マクアケ)」に渋谷の“かも”を実現するための特設ページを作ることを約束した。

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渋谷区長・長谷部健さんインタビュー(2015.09.28)
「渋谷駅の開発」と「パラリンピック」は、渋谷のダイバーシティ推進に大きなチャンスだと思う。

重野マコト

社会部記者として新聞社に入社後、イベントプランナー、コンテンツディレクター、飲食店経営を経て、現在はフリーライター。インタビューやイベントレポートなどの現場取材をメインに活動する。

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