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KEY PERSON キーパーソンが語る渋谷の未来

渋谷を中心に活躍する【キーパーソン】のロングインタビュー。彼らの言葉を通じて「渋谷の魅力」を発信します。

プロフィール

1970年、山口県生まれ。九州大学工学部を卒業後、住友海上火災株式会社に就職。経営企画部で5年の実務経験を経たのち、長年の夢でベンチャーを目指して2000年に退職。渡米してthunderbird大学院経営学修士(MBA)を取得後、シリコンバレーで技術系ベンチャーを支援するハンズオンビジネスを展開。帰国後、いち早くEV分野の成長を予見し、2010年にEVベンチャー「テラモーターズ」を創業。今後、渋谷を拠点として、アジア、世界への進出を目論む。

化石燃料の枯渇、地球温暖化などを背景として、世界的にEV(電気自動車)化への動きが進む。こうした中、テラモーターズ代表の徳重徹さんは、渋谷発の「電動バイク」の普及を目指して奮闘を続ける若きベンチャー起業家の一人。シリコンバレーでの経験を生かし、従来型の日本企業のやり方に風穴をあけ、閉塞感が漂う日本経済に新風を送り込む。また先月発生した震災に伴うガソリン不足や高騰から、この1ヶ月間は通常期の3倍の販売台数を記録したという。さて今後、電力不足などが懸念される中で「電動バイク」は定着していくのか、そしてその勝算とは・・・。

日本には成長して雇用を生んで、国をけん引するようなベンチャー企業がない

--大手損保会社を辞めて、一念発起して渡米したそうですが・・・

大学卒業後は住友海上火災保険に5年ほど務めましたが、「ベンチャー企業をやりたい!」という強い思いから退職。ちょうど29歳、「渋谷ビットバレー」と言われた時期でした。それで渡米してMBAを取得し、そのままシリコンバレーで仕事を始めたんです。当時は技術系のベンチャーとして、デジタル放送の音声や映像のアルゴリズムとか、セキュリティーの暗号などITとも違うコアなものをやっていました。シリコンバレーでは社長1人とか、エンジニアが1人で営業とか、そういう小さな企業が多かったため、ベンチャーのハンズオン支援として、僕もほとんど社員の一人のように入り込んで働いていました。

--日本とアメリカのベンチャーに違いはありましたか?

日本にも数多くベンチャーがあるんですが、なんていうのかな、成長して雇用を生んで国をけん引するような会社がないんですね。ところがシリコンバレーでは、ヒューレット・パッカード、オラクル、アップル、Yahoo!(ヤフー)、Google(グーグル)など、もう世界を代表するような企業ばかり。最近ではFacebook(フェイスブック)もそうですね。トヨタ、ソニーをはじめ成熟した大企業は日本にもありますが、問題なのは急進的に伸びているベンチャー企業が存在しないというところ。そういう会社を創っていかないと雇用も生まれないし、日本全体に何か閉塞感が漂い始めているような気がしています。

--起業に興味を持ったのはいつ頃からですか?

日本有数の石油化学コンビナート地帯である山口県の「周南コンビナート」

高校時代から、それこそ盛田昭夫さんとか本田宗一郎さんとか、シャープの早川徳次さんの書いた本を読んでいました(笑)。きっとうちのおじいさんが起業家だった血なんでしょうけど。木材業をやっていて、石炭から石油に流れが変わる中で倒産してしまったらしいんです。ちょうどオヤジが中学時代でえらい目に遭ったらしくて、それで僕は子どもの頃から「絶対、事業を興すようなことはやっちゃいけない」と言われてきました(笑)。とにかく良い大学、良い会社、大企業へ行けと。大学時代は応用化学専攻でしたが、別に化学が好きで行ったわけじゃなくて。地元、山口県には化学会社が多くて就職に有利だという親の意向で渋々決めたんです。とはいえ、僕は仕事で試験管を振る気なんて全くありませんでしたから、結局一悶着あった末に海外でも地元でもない「大阪」で、本意にも親の意向にも反した「金融系」に就職しました。まぁ中途半端でしたね。僕は親の影響で2回ねじれているんですよ、大学もそうだし、就職も。だけど就職後も「何か違うんじゃないか」と常に頭の中にあって(笑)。仕事内容は決して悪くはなかったのですが、1年ぐらい悩んだ末に「自分が好きなこと、心からやりたいと思うことをやろう」と決心して、会社を辞めることにしました。

--なぜ、アメリカに残らず、帰国してベンチャーを立ち上げようと考えたのですか?

日本が嫌で渡米したんですが、イチローさんとかもそうかもしれないけど、かえって愛国心が生まれてくるんですよね(笑)。だからシリコンバレーで成功する人たちを見て、何か悔しかったりするわけです。日本人はポテンシャルがあるんだけど、みんなが大企業に行っちゃっておかしくなっちゃう。中には「インキュベーションとか、ベンチャー産業を成長させなきゃいけない」という人もいるんですけど、ほとんどが実務家じゃない。例えば、儲けることばかりで(笑)、国のことや広いことを考えられない人や、もしくは国のことをいろいろ考えているんだけど、ベンチャーのことはさっぱり分かってない人とか。どっちかなんですよ。僕は一応両方を理解しているので、そのへんでは変わっているというか、ユニークなのかなと思っています。

「Designed by TerraMotors in Shibuya」にしたいと思ってるんです

--なぜ、EV事業だったのですか?

目指すは日本発で世界と勝負できる企業を創ること。もともとは日本のコア技術にこだわっていましたが、そういった分野は大体が大学教授みたいな技術者がやっているため、ビジネスにならないんです。そんなときにシリコンバレーの連中に「今、何をやっているんだ?」と聞いたら、今から3年前ぐらいですが当時から「EV事業」をやっているという声が目立ちました。正直、初めはピンと来ませんでしたが、いろいろと調べていくうちにその面白みや興味が湧いてきたという感じでしょうか。

--EVの魅力を教えてください。

簡単にいえば、アナログのカメラがデジタルになるようなものです。10年ぐらい前、僕ら応用化学出身者にとってフィルム会社は超優良企業でした。ところが現在、ほとんどがデジタルに変わっている。今までフィルム会社が断トツだったものが、2割とか3割ぐらいはゴロッとプレーヤーが変わってしまった。いわゆる、「破壊的技術」と言われるもので、これは新参者にとっては、すごくチャンスがあることなんです。長い間、自動車業界はエンジン技術などの産業障壁が高く、アメリカでもヨーロッパでも上場した新規参入企業がありませんでした。要するにグループ企業だけで商品開発・生産・販売を行う「垂直統合の擦り合わせ」という型が主流のためなんですが、これがEVになるとノウハウが全く要らない。

例えばホンダ、トヨタで、機械工学の大学院まで出て設計・エンジン開発に携わっていたプロは必要がなくなってしまう。さらに販売チャネルも自動車販売店だけではなく、家電量販店など、売るところまで変わってきてしまう。トヨタとかホンダにしたら、これはすごい脅威なはずですよ。でも、今まで蓄積してきた資産や人材を考えると、簡単にはEVへ移行するわけにもいかない。ところがシリコンバレーや中国ではベンチャー企業が次々にEV参入を表明していて、きっと数年後にはこの中からすごい企業が出てくることでしょうね。じゃあ、日本の大企業はどうかといえば、10年ぐらいあれば、機械系を減らして電気系を増やすとか、雇用も調整できますが、時代は10年も待ってくれない。そうすると日本が世界シェアを持つ自動車産業ですら、その間に中国とかアメリカの会社にやられちゃう可能性が十分あるわけです。

--生産工場はどちらですか?

EVは従来の「垂直統合の擦り合わせ」ではなく、「水平分業型」がメインです。典型的なのはパソコン。CPUはインテルから、OSはマイクロソフトから、それをパッケージにすれば出来ちゃうというのが水平分業。そこでの勝ち組はデルやエイサー、コンパックとか、また最近ではアップルです。そこで当社も自社工場を持たず、ファブレスみたいな形で中国に協力工場を持っています。そこに技術者を2人ほど派遣し、一般向けは中国工場で、業務用は日本で製造しています。だから、「made in Japan」というよりも、「Made by Japan」かもしれない。人に話すときに僕はiPhone、iPodの裏をよく見せているんですが、そこには「Designed by Apple in California」と書いているんです。さらに「Assembled in China」。うちはこれを「Designed by TerraMotors in Shibuya」にしたいと思ってるんです(笑)。それがブランドなんですよ。

--どこでもつくれ、参入障壁が低いということは、一方でライバル会社が多数出現してくることが予想されますが、どうのように対抗していこうと考えていますか?

ITの世界ではグルーポンみたいなもの、いかに早く導入して、お客さんの声をどんどん聞いて良くしていくか、というスピードです。もちろんEVは走る物なので、品質とかメンテナンスとか、そういうことをキッチリとやっていくことも大事です。前者は従来の大手自動車会社に対して、後者は中国勢などに対抗する日本人ならではの品質管理の高さが物を言います。さらにもう一つはイメージです。次に当社から発表するモデルは、デザイン、ブランドを大事にして、もっと斬新で未来感のある乗り物にするつもりです。つまり、渋谷に本社を置く価値がそこにあります。若者とか、ファッションとか、ギャルとか、渋谷にはそういうイメージがたくさんあるじゃないですか。渋谷の女の子のファッションは、アジアの人たちにも注目されていますし。日本で市場を取っているとか、流行っているということが、とてもバリューのあることだと考えています。

--市場での反応はいかがですか?

現在は新しい物好きなアーリーアダプターがメイン。まだ試乗できる場所がないのですが、乗っていただくとその良さを十分理解してもらえるはずです。従来のガソリンバイクと比べても乗り心地に違和感がなく、音が静かでクリーン。最近では原付バイクが目の前を通るだけで、もううるさくてしょうがないぐらい音に敏感になってしまいました(笑)。それから業務用では新聞販売店向けの需要が広がりそうです。朝4時、5時の配達なので、やっぱり音を気にする人が多いからでしょうか。ヨドバシカメラさんやビッグカメラさんのような家電量販店のほか、こうした販売チャネルの開拓も徐々に動き始めています。

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