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工芸と美術の間にあるもの─
「ギャラリーエス」閉廊

去る10月7日をもって、青山にあるギャラリー「ギャラリーエス」が閉廊しました。10年間親しまれてきた画廊の最後を飾った展示は、ギャラリーを運営してきたみつま・ゆかりさんが代表を務めるyukari-artに所属する若手作家、田代裕基さんによる「HARMONY」展。





田代さんは東京造形大学の彫刻学科を卒業し、学生時代からアジア諸国をバックパックで回ったという経験を活かしたエネルギッシュな木彫を得意とする作家で、今回の展示では、大学の卒業制作展で賞を受賞するなど非常に評価の高かった巨大な木彫りのニワトリ作品をバージョンアップさせた「炎天華(えんてんか)」を中心に展示していました。細部まで手を抜かずに綿密に彫られたニワトリの木像は、ややグロテスクなまでに皺やトサカなどの部分部分が誇張され、リアルなだけの巨大フィギュアとは違う、オブジェクトを越えた崇高な何かとしての存在感を十分にはなっていました。壁面にはヴィヴィッドでサイケデリックな色調で描かれた動物のドローイング約60点が一挙に公開され、彫刻の主なモティーフにしてきた「動物」という存在自体の不思議さ、輪郭や形態など、造形の美しさを改めて知らしめるような意図が感じられました。





元々この場所は1994年に「ミヅマアートギャラリー」として活動をスタートし、1997年より「ギャラリーエス」として、主に若手アーティストの育成・支援を目的とした展示や企画展を展開してきました。公式サイトに「『工芸』『現代美術』という既成のジャンルにとらわれない新しいアートフォームを追求している」と記述されていた通り、これまでも純粋なファインアートやペインティングよりも、どちらかというと今回の展示のように工芸やインスタレーション寄りの作品を展示する機会が多かったような印象があります。(「ギャラリーエス」の過去の展示一覧はこちら


(写真は全て「HARMONY」展展示風景)


今後は「ギャラリーエス」の終盤で数々の展示を行ってきた五十嵐公、いしかわかずはる、大畑伸太郎、川本史織、施井泰平、田代裕基、南条嘉毅、吉田朗、淀川テクニックという若手アーティストたちとともに、10月25日に「YUKARI ART CONTEMPORARY」として、目黒区鷹番にオープンする予定だそうです。みつまさんと若手作家の方々のさらなる発展を期待しています!

みつま・ゆかりさんのインタビュー記事

編集部・M

1977年東京の下町生まれ。現代アートとフィッシュマンズと松本人志と綱島温泉に目がないです。

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