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偉大なる写真家サルガドの
写真展「アフリカ」開催
−名作から新作まで100点展示

偉大なる報道写真家といえば、ロバート・キャパ、アンリ・カルティエ=ブレッソンを瞬時に思い浮かべるかもしれない。神と崇められる彼らと肩を並べ、60歳を過ぎた今なおもフィールドワークを続け、第一線で活躍する報道写真家といえば、セバスチャン・サルガドの他には考えられない。
右:セバスチャン・サルガド氏。サルガド氏の右写真は「食糧の配給を待つ女性。砂嵐と慢性の眼病によって視力を失っている。マリ、グンダム地区、1995年」

アフリカの飢餓の様子を撮影した写真集「サヘル」や、苛酷な環境下で働く肉体労働者たちを捉えた「WORKERS」など、彼の作品に初めて触れたときの衝撃は相当なものだった。それまで私にとって報道写真とは、現地の人びとの苦しさ、惨たらしさを生々しく伝えるものであって、芸術とはかけ離れたものと考えていた。ところが、サルガド作品との出合いは、私の乏しい感性を一変させた。彼の作品の多くは、飢餓、貧困、紛争や労働者や移民など、社会的弱者をテーマとしていながらも、その作品に決してネガティブな印象は与えない。むしろ、マイノリティーな人びとの未来にひと筋の希望の光が見えるような、そんな優しさに満ちた作品が多いように感じる。さらに貧困や飢餓に苦しむ悲惨な状況下の中で、時折、おどけた子供たちや、逞しく生きる母たちの姿が垣間見える。「報道」というジャンルの写真でありながらも、どこか微笑ましく、そして完璧なまでに美しい。
左)「ワド・シェリファイ・キャンプの難民家族。スーダン、1985年」、右)「ティグレからスーダンに脱出する人たち。所持品をすべて身に付け、機銃掃射をしかける偵察機に目を光らせる女性。エチオピア、1985年」

サルガドは「アフリカ人も、ブラジル人も、日本人にも違いはない。すべて地球に住む唯一の人間である」と繰り返す。国の経済発展に違いはあれど、いまこの同時代に生きる私たち人間に違いはないと。卑下したり、同情するのではなく、彼らが直面する政治的、社会的な様々な問題を同じ目線で考えることがとても重要なのだろう。

セバスチャン・サルガドの写真展「アフリカ」は10月24日より、東京写真美術館でスタートした。同展はアルガドが33年間に亘って、何度もアフリカへ渡航して撮影を行ってきた作品100点を展示する。1991年、「WORKERS」シリーズで撮影した茶畑で大きな籠を肩まで担ぎ上げてイキイキと働く女性を捉えたものや、その一方、1994年に起こったフツ族とツチ族間での大虐殺後のルワンダの姿を写した作品など、「人間とは?」という生命の根源に挑む。さらにサルガドが人生を賭け、現在も進行中のシリーズ「GENESIS(起源)」から、人間同様にアフリカの大地で生きる野生動物や、美しい自然の姿をを撮影した最新作25点が並ぶ。過去の名作から新作まで一堂に揃う同展は、まさに写真家サルガドを知るにはまたのない機会と言えるだろう。
手前写真)「ケイ放牧キャンプのディンカ族の男。牛の糞を焼いた灰で体を覆って、虫や寄生虫から皮膚を守る。南部スーダン、2006年」

なお、シリーズ「GENESIS(起源)」は、映画監督ヴィム・ヴェンダースによって映画化が進行しているそうだ。2012年にニューヨークでプレミア試写を予定し、日本国内での上映はおそらく2013年ごろになる見込み。サルガドとヴェンダースの夢のタッグは、2人を敬愛する私にとって、この上ない喜び!!

■写真展:「セバスチャン・サルガド アフリカ 生きとし生けるものの未来へ」
■会 期:2009年10月24日(土)〜12月13日(日)
■休館日:毎週月曜日(休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日)
■会 場:2階展示室
■料 金:一般 800円/学生 700円/中高生・65歳以上 600円
■URL:http://www.syabi.com/details/sarugado.html

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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