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五輪を控えて変わる!? 渋谷の最新ホテル事情

|「民泊新法」「ラブホ条例規制緩和」でホテル開発は加速するか?

2020年東京五輪に向け、訪日外国人観光客の受け入れ体制の強化が叫ばれている。交通インフラや標識、英語対応など、数をあげればきりがない。中でも渋谷の一番の問題は、やはりホテルや旅館などの宿泊施設の客室数の不足だろう。2016年3月時点(出典:福祉・衛生統計年報)の調査によれば、都内のホテル施設数は、台東区(76軒)、港区(71軒)、中央区(64軒)に次いで渋谷区(56軒)は4番目。ところが、客室数では港区(19,649室)、中央区(11,334室)、千代田区(11,032室)、新宿区(8,359室)、品川区(7,123室)、台東区(6,677室)、江東区(5,754室)に続き、渋谷区(4,994室)は8番目と大きく順位を下げ、大都市ながら観光客を受け入れるキャパシティーの乏しさが浮き彫りとなった。

こうした背景には、2006年に制定された「渋谷区ラブホテル建築規制条例」の影響があると言われている。もともと円山町エリアに集積するラブホテルの新規建設を抑制するために制定された条例であったが、同時に一般の観光やビジネスホテルの新規建設も妨げるという結果を招いていた。東京五輪に向けて急増する外国人観光客の受け入れ環境を整えるため、渋谷区では2016年10月に条例を改正し、「ホテルのフロントやロビーは1階に配置する」などの規定を削除。100室以上の大規模な宿泊施設の新設については、この規制から外すという緩和措置を実施するなどして対策を図ってきた。

さらに2017年12月、ゲストハウス・民泊需用の拡大から、旅館業法の一部を改正する法律が成立し、2018年6月15日よりホテル・旅館および簡易宿泊所の営業許可取得に対する大幅な規制緩和が行われた。それに伴い、渋谷区でも改正法との整合性を図るために「渋谷区ラブホテル建築規制条例」の一部見直しを行った。今まで障害となっていた「18平方メートル以下の一人部屋の床面積の合計が、全客室の床面積の合計の3分の1以上である」、「ダブルベッド(幅1・4メートル以上)を備えた客室の数が総客室数の5分の1以下である」などのルールが条例から削除され、今後、渋谷区内でのホテル・旅館等客宿泊施設の開発がだいぶ容易となりそうだ。その一方で、ラブホテルの再定義を行い、規制緩和で新規建築を促進させないための厳格なルールも定めた。

現在の渋谷駅周辺のホテル・旅館、簡易宿泊施設、民泊等の分布状況を、グーグルマップにまとめてみた。ホテルの全体像を俯瞰して捉えるべく、ぜひ参考してみてほしい。
渋谷駅周辺には、「ホテル」(赤いアイコン)、「簡易宿泊施設・ドミトリー・カプセルホテル」(青いアイコン)などの宿泊施設が集積している。一方で駅からやや離れたエリアには、「民泊」(黄色いアイコン)が広く分布していることが分かる。今までは無届営業(ヤミ民泊)が横行していましたが、6月15日以降は民泊事業を行うために行政への届出が必要とされ、以前よりも民泊事業のハードルが一気に高まった。ちなみに15日までに、渋谷区に届出のあった住宅数は129件を数えた(黄色いアイコンは、届出のあった住宅をプロットしている)。

|異業種からホテル事業へ参入

この1年間に渋谷で開業したホテルを見てみると、2017年5月13日に神宮前に「TRUNK HOTEL(トランクホテル)」、2018年2月9日に公園通りに「hotel koe tokyo」(ホテルコエトウキョウ)、3月1日に神南一丁目に「HOTEL EMIT SHIBUYA(ホテルエミット)」、3月15日に神南一丁目にカプセルホテル「The Millennials(ザ・ミレニアルズ)」など、五輪を控えた旺盛な宿泊需要を背景としてホテル新設が相次いでいる。
特に最近の傾向としては、婚礼大手のテイクアンドギヴ・ニーズが運営する「トランクホテル」や、アパレル大手のストライプインターナショナルが運営する「コエトウキョウ」など、ホテルを本業としない異業種からの参入が目立っている。物販や飲食、イベント等と複合するなど、他の事業で培ったノウハウや資産を活かし、単に「滞在」を目的とした宿泊施設に留まらない、新しいホテルづくりに意欲的に取り組んでいる様子がうかがえる。

|今秋、渋谷のB面地帯「南東エリア」に2つのホテルが誕生!

グーグルマップ内の紫色のアイコンは、今後開業を予定しているホテルだ。今秋に開業を予定する大規模複合施設「渋谷ストリーム」の中層部に「渋谷ストリームエクセルホテル東急」(運営:東急ホテルズ)、同じく東横線の線路跡地で建設が進む新複合施設「渋谷ブリッジ」にバックパッカーなどの単身旅行者向けの宿泊施設「マスタードホテル」(運営:THINK GREEN PRODUCE)、さらに2019年開業予定で三井不動産が宮下公園にホテルを建設することが決まっている。グーグルマップを見れば分かるように、いずれの新規ホテルも渋谷駅の東側に集中。中でも東横線線路の跡地の再開発となる南東エリアに、個性の異なる2つのホテルが新たに誕生する。
渋谷の北西部、道玄坂・公園通り方面を渋谷のA面とすれば、南東部はまさにB面地帯で、これまであまり脚光を浴びてこなかったエリアといえる。今秋に2つのホテルが生まれることで、渋谷から代官山、渋谷から恵比寿方面への注目度が高まっていきそうだ。

新オープンするの2つのホテルの施設概要を、具体的に見ていこう。

9月13日(木)に開業する「渋谷ストリーム」と同時にオープンするのが、「渋谷ストリームエクセルホテル東急」だ。
地上35階建ての4階・9階〜13階のフロア部分に入居する同ホテルのトータルの客室数は177室。駅直結の渋谷マークシティ内にある「渋谷エクセルホテル東急」が408室であるため、規模は約3分の一程度とやや小ぶり。「渋谷から世界へ 感性の刺激するホテル〜LITYTHE SHIBUYA SENSIBILITY」をコンセプトに、常に新しい文化を発信し続けている渋谷らしい価値観や感覚を、ホテルのデザインに取り入れて宿泊する国内外の旅行者の感性を刺激するホテルを目指すという。スクランブル交差点に面している、渋谷マークシティ内のエクセルホテルは、光が注ぐ明るい「表の渋谷」をイメージさせる一方で、渋谷ストリーム内の「エクセルホテル」は、アーティスティックでよりこだわりの強い「裏の渋谷」「アンダーグランドな渋谷」のイメージが漂う。
フロア構成は中層階の4階にフロント、9〜13階に客室を配置。ホテルの玄関口となるフロントは、アイランド式で宿泊客を個別に案内するオシャレな造り。同じ4階にはロビー、ラウンジ、Bar&Diningも設けられ、宿泊客のほか、オフィス、ホール利用者などの賑わいがあふれるコミュニケーションを促進するパブリックゾーン。14〜35階にはグーグル日本法人の入居が決まっており、オフィスのエントランスとも重なる同フロアは、きっと国際色豊かな人びとが行き交う場となることだろう。

Bar&Dining「TORRENT(トレント)」のシェフには、ボルドーの二つ星レストランや、パリやブルゴーニュの三つ星レストランで研鑽を積んだ永妻信人さんが担当。海外から宿泊者を意識して「日本を感じさせる」スタイリッシュな料理を提供していく。
9〜13階の客室は「Wao!を感じるクリエイターのレジデンス」をコンセプトに、「ヴィンテージモダン」を表現した独創的なデザインで空間を演出する。「ファッションクローク」は、ファッション文化の聖地・渋谷のアパレルショップのディスプレーをイメージし、見せるクロークが特徴。シングル・ダブルルームが124室、ルインルーム50室、デラックスルームが3室。宿泊料金は時期や曜日でも異なるが、お一人1泊2万円〜。

加えて、同ホテルの新たなユニークな試みとして、各フロアのエレベーター前には「マイスタールーム」が設けられる。例えば、9階に「サイクルマシン、ストレッチマット」、10階に「靴磨きグッズ、フットケアグッズ」、11階に「ランドリー、アイロンなど」、12階に「自動販売機」、13階に「電子レンジ、トースター、シンク」と、貸出し備品等のシェアができるという。アイテムを求めて各階への移動を促し、ホテルでの新しい過ごし方を提案していくという。

公式ウェブサイトではすでに宿泊予約を受け付けている。
https://www.tokyuhotels.co.jp/stream-e/

|バックパッカー向けのドミトリータイプのホテル

渋谷ストリームから代官山方面に渋谷川沿いに伸びる遊歩道を600メートルほど進んだ先に、もう一つの新複合施設「渋谷ブリッジ」がある。3階建てのA棟と、7階建てのB棟の2棟の建物から構成。A棟には保育所型認定こども園、B棟にはバックパッカーなどの外国人旅行者の宿泊施設となるホテル「MUSTARD HOTEL(マスタードホテル)」が開業するほか、オフィスやカフェなどが入居することが決まっている。
東横線の線路跡地を利用して建てられた同ホテルの幅は約10メートル。このタイトなスペースこそが、かつて東横線の上下線が走っていた高架橋をイメージさせる。「街のかくし味のような存在へ」をコンセプトとし、単なる「宿泊する場」に留まらない、「街を楽しむための場」としてのホテルづくりを目指すという。運営はTHINK GREEN PRODUCE(シンク グリーン プロデユース)」。シェアオフィス「THE SCAPE (R)」(渋谷・東)やベーカリーカフェ「GARDEN HOUSE CRAFTS」(渋谷・代官山)、キッチンスタジオつきのシェアオフィス「COOk&Co」(渋谷・神宮前)など、渋谷を拠点に数多くのスペースの建築計画から店舗運営までを一手に行っている。ハードとソフトの両方をこなすポリバレントな注目企業の一つだ。

客室はツイン・ダブル64室(2人/部屋)、デラックス2室(4人/部屋)、ドミトリー6室(6人/部屋)、ファミリー3室(4~6人/部屋)、アクセシブル1室(2人/部屋)の計76室(182人)。料金はドミトリー4,200円〜、ツイン7,350円〜、デラックス10,800円〜など、渋谷エリアの中で、非常にリーズナブルが価格設定となっている。各客室にはテレビ、湯沸かしポット、冷蔵庫、ドライヤー、Wi-Fiが完備のほか、ズボンプレッサー、電気スタンド、アイロン、加湿器、車椅子などの貸出も可。朝食は自家製のパンとコーヒーが無料提供される。

マスタードホテルも予約を受け付けている。
http://www.tgp.co.jp/

「渋谷ストリームエクセルホテル東急」と「マスタードホテル」は、それぞれカラーが大きく異なり、用途に合わせて使い分けられる点もうれしい。現在、渋谷のホテルの宿泊客の約半数は外国人だと言われている。おそらく20年の五輪開催時期には7、8割まで比率が上がっているに違いない。現在、渋谷の観光名所といえば、「忠犬ハチ公像」と「渋谷スクランブル交差点」「SHIBUYA109」など、「ハチ公前広場」側に集中しているが、南東エリア、渋谷川沿いに2つの新ホテルが誕生することで、観光客の街の回遊パターンに何らかの変化を与えるのではないだろうか。

高級ホテルからビジネスホテル、ドミトリー、カプセルホテル、さらに民泊営業を行う個人の住宅に至るまで、渋谷における宿泊施設の選択の幅は一気に広がりそうだ。

<関連情報>
コミュニティーFM局「渋谷のラジオ」で、隔週水曜日15時半〜16時にお届けしているラジオ番組「渋谷文化プロジェクト」。6月6日(水)OAの番組ゲストに、今秋に開業を予定する「渋谷ストリームエクセルホテル東急」を運営する東急ホテルズの担当者を迎え、新ホテルに関する情報を聞きました。より詳しく情報を知りたい方はこちらもお聴き下さい。
「渋谷のラジオ」スマホ公式アプリのダウンロードは下記です。
iOS 版:urx.mobi/tpcS
Android 版:urx.mobi/tpd1

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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