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【レポート】今でも本当に渋谷は”若者のまち”か?

9月27日に「エリアマネジメントシンポジウム@Shibuya まちの個性×担い手からエリアマネジメントを考える」(会場:渋谷ヒカリエホールA)が開催された。多様なクリエイターやスタートアップが活躍する「渋谷」を題材とした同シンポジウムでは、オープニング、セッション1、セッション2の3部構成でプログラムが組まれ、様々な形で渋谷に関わるキーパーソンが登壇しトークを展開した。今回のレポートでは、批評家・宇野常寛さんがコーディネーターを務め、「タイムアウト東京」代表の伏谷博之さん、國學院大學経済学部教授・田原裕子さん、明治大学理工学部建築学科専任講師・門脇耕三さんと共に「渋谷らしさ」をテーマに熱い議論が繰り広げられた「セッション1」の内容について詳しく紹介したいと思う。

80、90年代に「ファションのまち」「サブカルチャーのまち」「若者のまち」として輝きを放った渋谷は、今も変わらず若者から憧れられるまちなのだろうか? 

エリアマネジメントシンポジウム@Shibuya
〇日時:2018年9月27日(木)
〇会場:渋谷ヒカリエホールA
〇登壇:
コーディネーター/宇野常寛さん(批評家・PLANETS 編集長)
パネリスト/伏谷博之さん(タイムアウト東京代表)、田原裕子さん(國學院大學教授)、門脇耕三さん(建築家、明治大学専任講師)

|7割の学生が「渋谷は居心地が悪い」と回答

宇野:僕らが「若者」と呼ばれていた頃の渋谷は、今も存在しているでしょうか? 答えは否だと思います。世界中のレコードや映画が集まり、最先端の文化が生まれ、日本中の若者が渋谷に憧れていたのは、もう20年前の話です。では現在、どう「渋谷らしさ」を再発見して、それを伸ばしていけばいいのでしょうか?

門脇:渋谷の特徴は「襞(ヒダ)」というキーワードで語れるかなと思う。僕は高校時代から渋谷で遊んでいたんですけど、渋谷は思ったところに行けないんですよね。前行った面白いお店に、女の子を連れてデート行きたいと思っても、なかなか辿り着けない。当時はグーグルマップもない時代ですから、焦るわけですが(笑)。その後、建築を勉強してからよくよく考えてみると、「道が入り組んでいる」「谷地形である」「いろいろな路地が走っている」など、川が谷をうねうね走っていて、全体的にヒダヒダの空間ができているのが分かる。これは水が削って出来た自然の地形なわけですが、このうねうねのせいで道が入り組んでいて方向感覚を失わせる要因となっている。

ヒダは、都市空間の中で「先が見通せない」効果を生み、これが渋谷の持つ大きな強みといえます。ショッピングモール設計の第一人者で、米・建築家のジョン・ジャーディは「なんばパークス」や「六本木ヒルズショッピング棟」などを手掛けていますが、ヒルズもそうですが、モールが曲がっていて先が見通せない。曲がった先にお店が現れたり、自分が動くことでいろいろなお店が見えるため、自然と街の回遊性が増します。実は渋谷・スペイン坂も、何もせずともほぼ同じような空間性を持っていて、ジョン・ジャーディが考えた設計を先取りしているわけです。これはすごい強み。いわば、小規模の様々なお店や事業者の集積に適した地形であり。ショッピングとか文化を産み出すことに利があります。

その一方で、これから高齢化社会が進む中で、バリアフリーの観点から見ると分が悪い。だからこそ、再開発でエレベーター、エスカレーターなどを整備して、いかに坂をスキップできるかを考えているわけです。これからの渋谷は空間性を活かしながらも、様々な人びとに優しいバリアフリーの特性を持つことが大事かなと思う。

田原:渋谷の再定義で一番言いたいのは、「渋谷=若者のまち」という全国的に流布したイメージがありますが、「今でも本当に渋谷は若者のまちか?」ということ。というのも、新入生とのコミュニケーション、アイスブレークのために「渋谷のどこに遊びに行っているの?」と聞くと、「渋谷はほとんど行きません。大学に行ってそのまま駅に帰ります」みたいな声がすごく多い。ただ、感覚的ではまずいので、ここ数年間、授業の履修者にアンケート調査を行っているのですが、 一昨年に「渋谷をどのくらいの頻度で利用しますか?」と聞くと、買い物・食事を合わせても「年に数回以下」という声が3、4割程度。「えっ」と思い、もっとストレートに「渋谷は居心地がいい?」と聞いてみたところ、なんと7割の学生が「居心地が悪い」という声。「人がごみごみしている」「物が高い」「居場所がない」……。今の若者は、渋谷を「自分のまち」だと思っていないのかな。

田原:マクロで考えれば、「ネットの進歩で渋谷に来なくなった」「若者のファッション離れで、買い物に来なくなった」という声はよく聞きますが、ミクロの話でいえば、私たちが学生時代のような溜まれる場所がないなと思う。何時間でも居ていい喫茶店や、学食よりも安い定食屋などは最近ない。何が起こっているかといえば、おじちゃん、おばちゃんがやっていた定食屋が街から無くなり、ナショナルチェーン、グローバルチェーンの飲食店が増えたから。だから居場所がない、学生からすれば、渋谷も他と変わらない単なる大都市になっているのでしょう。また最近、クリエイティブシティの本を読んでいると、これは渋谷のことを書いているんじゃないかと思うことがよくある。リチャード・フロリダ氏が「職住近接」と言っているが、渋谷で働く人の中で、渋谷に住む人の割合は他のエリアよりも多い。クリエイティブクラスの人は職住近接を好み、そういう場所に働く場を求める傾向があります。なので、「職住近接」もキーワードになると思う。

|80、90年代の亡霊に囚われた「中高年の街」!?

宇野:田原先生から問題提起のあった「渋谷は若者のまちか?」という点を考えていきたい。僕もね、違うと思う。はっきりいえば、80年代、90年代の若者だった僕らの世代が「思い出を若者に押しつけているまち」ですよ。日本のポップカルチャーはこの20年ウェブからしか出てきていない。もう街から文化を発信する力はだいぶ弱まっていて、それをもろに受けているのが渋谷。國學院の学生が「渋谷が好きじゃない」という話しと、最近のクリエイティブクラスに「都心回帰」「職住近接」が増えているというのは、すべて繋がっていると思う。かつてのホワイトカラーは、東京を西へ西へと広げてきました。それが池袋であり、新宿であり、ここ渋谷は私鉄沿線に乗り換えるターミナル駅として、「働くエリア」と「暮らすエリア」の結節点とされてきました。ところが現代的なクリエイティブクラスは、共働きで、職住近接で、都心へどんどん回帰している。かつて東京の西は若くて、中心部や東はおじいちゃんだったわけですが、最近ではそれが徐々に逆転しつつあるわけです。結果、渋谷も「僕ら中高年の街」になっているんじゃないかと。

田原:賛成できる部分と、出来ない部分があります。2000年に開業した渋谷マークシティは「渋谷は大人になる日」、今回のヒカリエも30、40代の女性をターゲットにしていて、過度に大人をターゲットにしたまちに変わろうとしているのかなと思う。そういった意味では「若者が居場所を感じられない」「自分たちが主役になれない」と感じているのかなと。もう一つは年齢階級的に若い人達が、どこに住みたがるかを調べてみると、女性たちには「渋谷」が大人気なんですね。若い女性が住みたがるまちという意味で、若い人達をひきつけない、歳をとっていく街とも言い切れないと思う。

宇野:昔ながらの手法で「若者のファッションを語る」ということはもう出来ない。僕は大学で教えていて、学生たちに君たちのお父さん、お母さんの世代や、僕らが学生の頃は「センスの良いものを見つけて、それを身に付けること、所有することが知的で文化的な証だった時代がある」という話をすると、学生達は愕然とするんですよ。物の消費で自己実現することは、今とてもカッコ悪いことになっています。よく「モノ消費からコト消費へ」言われますよね。かつての商業施設は、モノを買うとかモノを所有するとか、人びとが街に出て行くこと、それが公共空間を作るという基本的な発想でやってきたと思う。それが通用しなくなった結果が、今の渋谷なんだと思う。ゲームチェンジをしていかないと、たぶん僕らはいつまでも80年代、90年代の亡霊に囚われ続けて生きていくんじゃないかなと思います。

90年代の渋谷は「若者のサブカカルチャーのまち」でしたが、じゃあ2010、20年代の渋谷は何なんだろうと。例えば、僕は若い現役世代のライフスタイルの街であってもいい。そういうふうに渋谷のまちを再定義していくことが必要なんじゃないかと思う。

門脇:再定義というよりも、新しいものが上書きされて、別々の層が両方いるというほうが、戦略としては合っているかなと思う。

伏谷:そうですね、渋谷は「多様性のまち」。タイムアウトで「日本の魅力的なものを世界に伝えていくましょう」というお題をやっているのですが、日本の魅力は海外から見ると「多様性のある文化」と言えます。でも多様性って、伝えるのがすごく難しい。なぜなら、「多様性」だから。かつて渋谷は「ギャル文化」「ガングロ」や「渋谷系」などいろいろな流行がありましたが、そういう形での情報発信はもう時代的にあまりない。多様な思考の人達が様々なところでチャレンジしているので、かえって個々が目立たなくなっている状況があるのかなという気がしています。

|渋谷の住宅は都心三区のタワマンとは違う面白さがある。

宇野:僕は、渋谷に常に「現役のまち」でいてほしいと思う。街の規模、地理的な条件的にも。「あのころの日本(渋谷)すごかったね」という体でオールド・サブカルチャー・テーマパークになっていくと、「プチ浅草」みたいになっていくしかないと思う。それは渋谷にとっては不幸なことじゃないかと。クリエイティブクラスの「職住近接」「都心回帰」が進んでいると言われていますが、でも大丸有の近くに住めるかといえば、それはなかなか難しいですよね。それに比べて渋谷は比較的に住みやすいと思う。駅前から半径3、5キロ程度を「渋谷圏」と考えれば、クリエイティブクラスの住宅エリアに生まれ変わってもいいと思う。戦後の私鉄沿線が、ホワイトカラーのお父さん、専業主婦のお母さん 2×4の建て売り住宅買って……、というクレヨンしんちゃん的な「幸せのひな形」であるとすれば、これからの「渋谷圏」はクリエイティブクラスのライフスタイルを実現していく……というシナリオがあったらいいと思う。

田原:「住」という点で話をすると、都心三区(千代田区・中央区・港区)は都心回帰でタワーマンションなどがどんどん出来ていて、人口がどんどん増えている。でも、渋谷の場合は、それとは違う住宅のリソースがあります。本当にバスで5分、10分行くと、たとえば富ヶ谷方面に行くと、「わぁ渋谷にこんなところがあるんだ」という昭和チックなところも多い。そう思えば、松濤の豪邸があったり、アパートがあったり、モザイク状にいろいろな住宅ストックがあるのが渋谷の魅力。若い人達が住める住宅も少なくなく、都心三区のタワマンとは違う面白さがある。

門脇:もう一点ですけど、多様性というと「ダイバーシティ」ですが、おそらく渋谷のまちづくりを考えたときに重要なのが「ミクスチャー」。ダイバーシティはプラットフォームの中にいろいろな主体が参加している感じですが、ミクスチャーはごちゃまぜ感だと思う。ヒダ上の地形で先が見渡せない渋谷は、ごちゃまぜ感が担保しやすいまち。それが、大丸有にはない強みだと思う。

宇野: 門脇さんのお話しの中で、「渋谷はヒダのまち」であって、奥まったところがあって、個人商店があったりとか、街の構造としてローカルな空間が発生しやすいという話がありました。言い換えるとね、日本の大都市、繁華街を現代化していこうというときに、どこも「ミッドタウン化」、どこも「大丸有化」していくことだけが正解ではないという話ですよ。渋谷の「渋谷性」を残したまま、どうまちづくりを考えていくかが大事だと思います。

門脇:90年代、代官山は輝いていたじゃないですか。ところがいつからか魅力を失っていく。それは駅前の大規模再開発のせいで、あれがあって文化がのっぺりしたと思う。 これは日本のまちの大きな特徴で、たいがい小さな商店が集まって文化的な発信をしているところになると、地価が上がって、再開発が起きて、家賃が上がって、今までそこにいた人達が周辺に移っていく。これが何度も繰り返されて、渋谷があって、原宿があって、代官山があって、中目黒があってみたいな……。ただ、渋谷は面的な再開発に左右されないというか、そのまま小さな商店が入れる構造を保つんですよね、僕はそれがとても興味深いなと思うのですが、それが「ヒダ空間」の特徴に依るものだなと思っています。

一方で、「ヒダ空間」はバリアフリーではありません。「モノを買うことじゃない」クリエイティブクラスの合理的な生活様式の実現には、この地形はめちゃ面倒臭くて、嫌じゃないですか。現在、進行中の駅前再開発は、この谷地形を乗り越えるためのもの。完成すれば、合理的な生活が実現するでしょう。

|モノからコト消費へ−「レジ前ポップ」からの脱却がカギ

宇野:買い物、消費行動を中心に考えるまちづくりは、もう負けるだけ。昔と違って、買い物しないほうがスマートだし、インテリで文化的でアンテナの高い人間はもう変わってきています。人びとが買い物に求めるものは、圧倒的な品数の多さと手軽さだけなんですよ。それを言っちゃうと、渋谷は新宿の伊勢丹とビックロ東口には絶対に敵わない。だから、渋谷は「コト」で戦わないといけない。買い物や商店ではなく「働くこと」とか「住むこと」とか。渋谷のヒダ状地形や文化的な蓄積をどう使っていけるのか、ということに論点があると思う。

伏谷:ヒダ状とか、いろいろなストリートがあるというのは、非常に魅力的で。東京を訪れる外国人観光客たちも中目黒みたいなところが好きなのは、歩いていて、古いものと、新しいもの、オシャレなカフェと古い建物が交互に出てくるのが面白いから。渋谷は確かにそういうストリートがいろいろあって面白いですが、結構広くて歩くのが大変なので、もう少し歩きやすいストリートや街並みを設計していただけたらいいなと。

宇野:特に北側に集中しすぎていますよね。僕は休日の渋谷駅の北側にいくのが、世界で一番嫌いなんです。だって、渋谷くらいの乗降客数になれば、もっと南エリアを使うべきなんですよ。そういう基礎的なことが意外に出来ていない。

門脇:再開発で南側に「渋谷ストリ−ム」が出来て、今後徐々に分散されていくと思いますけど。ただ、メインストリートのキャパシティが歩行者の人数に合っていないから、確かに歩きづらいですよね。

伏谷:でもだからこそ、渋谷スクランブル交差点があれだけの人数で渡れる芸当があると、世界では絶賛されているんですけどね(笑)

宇野:渋谷に限らず、日本の都市は「駅ビルの時代」なんだと思う。ストリートの力が落ちてきて、人びとが消費に便利さとコストパフォーマンスしか求めていない。「駅ビル」というのは、最適解なんですよね。最適解をやりすぎたために「街が死んでいる」というのが今なんですよ。「買い物で人びとを街へ連れ出す」という発想がある限りは、駅ビルの時代が続く。

伏谷:この例えが良いか分からないが、前職のタワレコでCD売場を作る時に、店長はフロア全体を俯瞰して見てお客さんの回遊を考えるわけですが、各仕入れ担当は自分たちの商品を売りたいから、人が一番集まる場所や行き来するところに商品を持っていてポップを設置するわけです。だから、入口やレジ周りにばかりポップがずらっと並ぶ。結果、お客さんもフロアの奥まで行かなくなり、いくらレジ前の売上げが上がっても、店全体の売り上げは上がらない。とても坪効率が悪いわけですね。で、駅前中心の再開発の姿を見ると、店頭前にずらっと並ぶポップと重なるなと感じる。「これだったらここしかお店いらないじゃん、何のためにこんなに広い売場を借りているんだよ」と言っていた時代を思い出すんですよね(笑)。

宇野:それって、僕の考えでは物を売っている以上、レジ前にポップを置くしかないし、駅前に駅ビルを建てる以外ないんですよ。でも一方でCDの売り上げは落ちているけど、握手会の売上げは無限に伸びていますよね。だから、モノではなく体験やコトみたいなものに価値を見出して、それで人を集めるというゲームチェンジをしないと、僕らは絶対に「駅ビル≓レジ前のポップ」から抜け出せない。「職住接近」という視点で考えれば、渋谷に職場があって、2〜3キロ離れたところに家があっても余裕で歩けますよね。「この道が楽しいから、この街が好き」という発想に立たなければダメだと思う。

伏谷:タイムアウトはロンドンが拠点ですが、ロンドンの街って歩いているだけでも、街並みが魅力的ですよね。長谷部区長が「ロンドン、パリ、ニュ−ヨーク、渋谷区」とよく言っていますが、実際にロンドンのまちを歩いてみると、真ん中のセントラルは完全に「観光地化」していて。ロンドンに住む人びとは、休日にセントラルに行くという感覚は全くありません。ところがその周辺に行くと、新しいクラフトのお店とか、高架下のパン屋さんとか…、行ってみたらすごく賑わっている。世界の都市の多くは、真ん中の観光地化、ドーナッツ化が進んでいます。

|渋谷を「自分が主役になれる”職住近接”のまち」に変える!

宇野:「観光地の渋谷をどう向き合うか?」という議論を僕らは忘れがち。ただ本当に、ワールドワイドで考えたときに外国人から見れば、渋谷は完全に観光地ですよ。街って住んでいる人だけの街じゃない。思い切って、スクランブル交差点やハチ公広場は外国人にあげちゃいましょう。で僕らは駅前じゃなくて、その周辺の「渋谷圏」を職住近接のまちに変えていこう、という価値観があってもいいのかなと思う。渋谷ヒカリエやストリームに歩いていけるところに住むというストーリーが作れると、一気に変わると思います。

田原:実際に千駄ヶ谷あたりから、自転車でピューと渋谷まで来ている人もいますよ。

門脇:その暮らしが、まだブランディングされていないだけだと。そのイメージが伝わるとすごく変わりそうですね。

宇野:埋め立て地のタワマンに住んで大丸有で働くのが最強だとすれば、それだとあまりにも味気ないと考える人達もきっといるはず。そういう層は、渋谷に住めばいいと思う。

門脇:僕はこの話をしていて、渋谷に住みたくなってきましたよ(笑)。

宇野:「ショッピングモールと駅ビルの間を往復して生きる」ってことが、果たして豊かなクリエイティブクラスの生活なのでしょうか。その答えを渋谷が導けたら、それはとても素敵なことだと思う。

伏谷:本当の意味で若い子達が渋谷をぶらぶらしたり、遊んでいるかといえば、そうじゃないと思う。うちの事務所は今、広尾にあるのですが、スペースが手狭になったので「次に何処行こうか?」と、先日うちの若いエディターたちと話をしていたのです。僕は当然、ずっと渋谷なので、渋谷の中で引っ越したいと考えていたのだけど。でも彼らからは、いくら待っても渋谷という名前は一向に出ず、上野とか東東京とか、池袋とかが上がってくる。僕らの時代と、今の若者たちの東京の見え方が明らかに違うなと感じています。

宇野:80、90年代、僕らが背伸びしてあんなに買い物をしていたかといえば、その瞬間だけ「主役」になれたからですね。その力が相対的に弱くなってしまった時、自分が主役になれる一番の瞬間は「住むこと」と「働くこと」なんだと思う。そのモデルをどう渋谷というまちを中心に作っていけるか、今はそのバリエーションがまだ少ないだけ。東京の中で渋谷がそのロールモデルになれれば、今離れている若者たちにリーチすることにもつながると思う。

田原:「若者が主役になれる」ことがとても大事なんだと思う。暮らし、働くことで、まちづくりの担い手として期待されることが、渋谷を好きになるきっかけになるのでしょう。

編集部・フジイタカシ

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