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新生パルコの起爆剤は「食」、カオスからインバウンドまで

いよいよ新生「渋谷パルコ」が11月22日にオープンする。2016年8月の一時休業から、実に3年3カ月ぶりの復活となる。ここ数年、渋谷の再開発と言えば、駅周辺にどうしても話題が集まっていたが、今年早々に渋谷区の新庁舎が開庁、10月に「LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)」が開業、さらに新生パルコのグランドオープンが続き、公園通りにも活気が戻りそうだ。

新生パルコの中で、特に目が離せないのは地下1階の「CHAOS KITCHEN(カオスキッチン)」と7階の「RESTAURANT SEVEN(レストランセブン)」だ。今まで渋谷パルコといえば、「ファッション」「カルチャー」をメインに展開する商業施設というイメージが強かったが、新生パルコでは「食」を重要なテーマとして捉えている。そこで今回は開業を控え、新生パルコの「飲食フロア」に注目して紹介したいと思う。

| 「猥雑」と「個性」があふれる地下飲食街、立ち飲みから昆虫食まで

地下1階の「カオスキッチン」は一般的な商業施設で見られる「オシャレ」なレストランフロアや、昭和レトロが漂う「疑似横丁」とも一線を画する飲食店フロアといえるだろう。まるで新宿のゴールデン街、新橋のニュー新橋ビル、中野のブロードウェイのような「猥雑さ」と「個性」があふれる店舗がそろう。

地下街の環境デザインは建築家・藤本壮介さんが担当。天井と床には鏡面素材を使い、各店舗から漏れる照明やファサードなどが映り込み、アジアっぽい繁華街の雰囲気を演出する。
通路の奥には、カオスの「C」を意識して、旧パルコで使っていたロゴ「C」を設置するなど、遊び心に富んだ装飾も見どころの一つだ。

早速、個性派ぞろいの各店舗を紹介していこう。

一番の驚きは、何といっても鳥獣虫居酒屋「米とサーカス」だろう。高田馬場に本店を構える同店は、ジビエ(野生鳥獣)と昆虫をメインに提供する。入口のファサードは、高田馬場本店の「裏路地のサーカス小屋」の雰囲気を引き継ぎ、“迷い込んだ路地裏の妖しい料理店”をイメージ。
▲右上=6種の昆虫食べ比べセット 右下=タガメがのった「虫パフェ」 左上=カウンターにはハブ酒やサソリ酒などが並ぶ。 右下=オオグソクムシ

主なメニューは、米とサーカス獣肉盛り3種・5種・7種、6種の昆虫食べ比べセット、獣肉鍋(鹿/猪/熊/穴熊)、BUGバーガー(蟻)、虫パフェ、オオグソクムシラーメンなど。

同じく“妖しさ”といえば、新宿2丁目からLGBTなどセクシャリティ何でもありのミックスバー「Campy!bar(キャンピーバー)」がやってくる。二丁目で活躍する女装ウエイトレスたちと、お酒を飲みながら会話が楽しめる。営業は19時〜翌朝5時まで。昼間は純喫茶「はまの屋パーラー」として営業し、昼と夜の二毛作で展開する。

▲「MENSHO」のサンフランシスコ店は、ミュシュランガイドサンフランシスコ版でも紹介される人気店。

本格的な飲食では、ミシュランガイドビブグルマンで紹介される代官山「Ata」の新業態で、渋谷系ビストロをテーマとする「Ata’s(アタズ)」や、スパニッシュイタリアン「CARNICERIA(カルニセリア)」、ワンハンドスタイルのラーメン器で提供するラーメン店「Jikasei MENSHO(ジカセイ メンショウ)」、「韓国家庭料理 妻家房」がプロデュースする韓国ビストロカフェ「nyam2(ニャムニャム)」、福岡発の人気ハンバーグ店「極味や(きわみや)」、創業70年の老舗「寿し常」が手掛ける回転寿司「廻り寿し 渋谷寿し常(シブヤスシツネ)」、大阪スタイルの串カツ専門店「串カツあらた」、美竹公園前から移転したカフェ「ON THE CORNER(オンザコーナー)」など。

▲恵比寿の人気立ち飲み店が、新業態でパルコに出店。

また、五反田の人気うどん店「うどん おにやんま」や、恵比寿の立呑み天ぷら「喜久や」が手掛ける女性も入りやすい「KIKU」など、立ち食い業態も充実。
▲ビール瓶ケースのテーブルがシンボルの「立飲みビールボーイ」▲渋谷クラブクアトロが運営するバー「クアトロラボ」

さらに日本酒とペアリングフードが楽しめる「未来日本酒酒店/KUBOTA SAKE BAR」、クラフトビールの居酒屋「立飲みビールボーイ」、英国風パブ「HUB+82」など立飲み業態のほか、約4000枚のレコードをそろえるミュージックバー「QUATTRO LABO(クアトロラボ)」、ビアレストラン「シュマッツ・ビア・ダイニング」と気軽にお酒が楽しめるお店が並ぶ。

もう一つ、カオス地下街の特徴は、飲食以外の店舗をあえて混在させている点だ。

▲レコードジャケットでファサードをつくる「ユニオンレコード」。▲パルコ運営の「ギャラリーエックス」。オープニングは4階「PARCO MUSEUM TOKYO」と連動して「AKIRA ART OF WALL」のインスタレーションを開催。

宇田川町エリアは、かつて「宇田川レコード村」と呼ばれたが、そのイメージを踏襲するアナログレコードショップ「ユニオンレコード」や、パルコが運営するギャラリースペース「GALLERY X(ギャラリーエックス)」、原宿のコンドーム専門店「コンドマニア」、フジロック・オフィシャルショップ「GAN-BAN/岩盤」、アンダーパンツなどを販売する「HIP SHOP」、マッサージ店「QOHS(クオース)」が各飲食店の間に出店。
▲原宿・コンドーム専門店「コンドマニア」。店外には自販機も設置。

食・音楽・カルチャー・健康・エロなどが交じり合う、ある意味、リアルな繁華街に近い小さな街が形成されている。

パルコが提案する新しい地下フロアは、決して万人受けするものではないかもしれないが、かつてないチャレンジングな試みとして、とても興味深い。

| 「寿司」「天ぷら」など、インバウンドを狙う「レストランセブン」

7F「RESTAURANT SEVEN(レストランセブン)」は、飲食業態7店舗がならぶレストランフロアだ。「寿司」「ラーメン」「天ぷら」から「ヴィーガン」まで、インバウンド需要を意識した店舗がそろう。

地下街にはPARCOロゴの「C」があったが、レストランフロアの同階にはRestaurantの「R」ロゴを設置。旧パルコのロゴ電飾を環境デザインに上手く活用している。

高級回転寿司で人気を博す回転寿司店「金沢まいもん寿司」が渋谷に登場。日本海の新鮮な魚介はもちろん、赤、金などを基調とした華やかな内装も目を引く。
▲高級焼肉店「KINTAN」。個室からカウンター、テーブル席までシーンに合わせた使い方が可能。

恵比寿や代官山などで高級焼肉店を展開する「KINTAN」の渋谷店は、30日間熟成した牛タンや、和牛のユッケや牛肉寿司など、肉職人の目利きで仕入れた最高級の肉を提供する。「寿司」「焼肉」に続き、「天ぷら」は福岡発祥の天ぷら専門店「博多天ぷらたかお」が出店。渋谷パルコ店では日本酒やサワー、ハイボール等も数多くそろえ、天ぷらをつまみにお酒を楽しむ事もできる。

▲中華そば 田中そば店▲松尾ジンギスカン

そのほか、足立の博多長浜ラーメン「田中商店」創業者が立ち上げた姉妹ブランド「中華そば 田中そば店」、北海道のジンギスカン専門店「松尾ジンギスカン」、道玄坂でイタリアンを展開する「goo ITALIANO(グーイタリアーノ)」、ヴィーガン料理専門店「FALAFEL BROTHERS(ファラフェルブラザーズ)」と計7店がラインナップ。各地のソウルフードがこのフロアで楽しめる。

翌年開催される五輪を控え、今後、渋谷へ来街する外国人旅行者がますます増えていくが、ここに来れば、クオリティーの高い日本のフードが安心して味わえる。

▲パリ・サン=ジェルマンのオフィシャルカフェ(1F)。3階には公式ストアも。 ▲スターバックスコーヒー(5F)。壁面には「渋谷スクランブル交差点」を中心に渋谷の街がペイント。

地下1階、7階のほか、1Fに日本酒スタンド「HUMANMADE(ヒューマンメイド)」、サッカークラブ「パリサンジェルマン」のオフィシャルカフェ「PRIS SAINT-GERMAN CAFE(パリサンジェルマンカフェ)」、フレンチカフェ「Café Marly(カフェマルリー)」、2階にカフェギャラリー「OIL by 美術手帖」、3階にカフェ「Saturdays New York City(サタデーズニューヨークシティ)」、4階にタイ料理店「chompoo(チョンプー)」、5階に「STARBUCS COFFEE(スターバックスコーヒー)」、6階にコラボレーションカフェ「TOKYO PARADE goods & cafe」、eスポ―ツカフェ「GG Shibuya mobile esports cafe&bar(ジージーシブヤモバイルイ―スポーツカフェ&バー)」など。各階にカフェや飲食スペースを設け、来店客が居心地の良い空間に仕上げている。

「食」が新生パルコの起爆剤になるのか? 「カオス地下街」のようなチャレンジは、吉と出るか凶と出るかは定かではないが、「従来の商業施設の飲食フロアにはない、全く新しいものをつくりたい!」という心意気は十分に理解できる。常に新しいカルチャーを発信し、時代をけん引してきたパルコらしさにあふれた試みとも言えるだろう。いよいよ22日にグランドオープンするパルコの今後の動向から目が離せない。

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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