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渋谷パルコで「牧野植物園がやってきた展。」 渋谷にゆかりのある植物学者・牧野富太郎とは?

「高知県立牧野植物園(高知市)」を紹介する企画展「牧野植物園がやってきた展。」が現在、渋谷PARCO8階「ほぼ日曜日」で開催されている。

「日本の植物学の父」と呼ばれる牧野富太郎博士の業績を伝える施設として、1958年(昭和33)年、高知市五台山に開園した「県営牧野植物園」。大きさは17.8ヘクタールで、東京ドーム約4個分に相当。園内には、牧野博士が全国を自ら歩いて調査した植物などを含め、野生植物など3000種類以上が植えられ、四季折々の植物が楽しめる施設として知られる。

牧野博士の出身地は植物園のある高知県であるが、実は渋谷との縁も深い。30,40代、駒場・東大の東大理学部植物学教室で助手として働いていた時代、渋谷・大和田小学校(現、文化総合センター大和田、東急セルリアンタワー)あたりに住んでいたという(駒場東大まで徒歩30分以内)。

▲牧野博士が東大植物学教室の助手時代に住んでいた渋谷区立文化総合センター大和田近く。現在、同エリアは「桜の名所」として知られる。

ちなみに渋谷・桜丘町のさくら坂は現在、ソメイヨシノ名所として知られる。「ソメイヨシノは都会にふさわしい桜」と評した牧野博士の想いが反映され植えられたものではないと思うが、不思議な縁を感じさせる。2023年4月からは、牧野博士をモデルにしたNHKの連続テレビ小説『らんまん』の放送も始まり、今後、牧野博士への注目度は益々高まりそうだ。

さて、渋谷パルコで現在開催中の同展は、高知県の大自然の中に広がる動植物園の素晴らしさを紹介するとともに、牧野博士の人物や膨大な仕事の一端が垣間見られる企画となっている。

▲牧野式植物図 複製50点が会場に掲出されている。

牧野博士は「植物画の名手」としても知られる。植物をかたちづくる器官やこまかな毛、ときには細胞まで、その細部にわたる精密さは学術的な価値はもちろん、「ボタニカルアート」としても高い評価を得ている。博士が残した植物図は約1,700点に上る。実物は約100年以上前のもので、資料保管の観点から同展での展示は難しいが、今回は50点以上の複製 を掲出。図録や本に収録されていない植物図を含めて選出され、貴重な植物画が見られる。優れた観察眼と知識をもって緻密な線で描かれた植物図は、見れば見るほど新たな発見があり、そのすごみが複製からも伝わる。

▲「牧野博士の植物標本×写真家・菅原一剛さんの撮影」が融合した標本写真。標本写真を収めた作品集「Makino」も刊行。

博士は日本全国で植物採集をおこない、約40万枚もの「植物標本」を作製。会場では写真家・菅原一剛さんが撮影した植物標本の写真が展示されている。菅原さんは2021年11月から、牧野植物園の協力のもと牧野博士が採取した植物標本を被写体に作品づくりを進めている。約100年の年月が経っているにも関わらず植物はうつくしい姿をとどめており、15Kという高精細カメラが捉えるその姿は「アート作品」と言っても過言ではない。

▲牧野博士が愛した「バイカオウレン」の苗も会場で販売する。梅に似た白い花から「バイカ」と呼ばれる。

そのほか、会場では牧野博士が愛した「バイカオウレン」の苗や、博士ゆかりの植物をつかったブレンドティー「Makino original blend tea」などの販売も行う。自生する山野草を手摘みし釜炒り製法のお茶などをブレンドし、すべて手作業でつくられる「摘み草ブレンドティー」は和のハーブティーといえる味わいで、植物園の人気土産の一つ。会場内の喫茶スペースでブレンドティーを提供し、博士の愛した植物や高知のゆたかな自然に思いをはせながらティータイムが楽しめるという趣向となっている。

牧野富太郎という名前は知っていても、その業績や人柄まで知っている人はそう多くないだろう。渋谷にもゆかりのある牧野博士の業績や、高知県立牧野植物園について、改めて学び、知る機会になりそうだ。

会期は3月5日まで。

「牧野植物園がやってきた展。」
〇会期:2023年2月1日(水)〜3月5日(日)
〇時間:11:00〜20:00
〇料金:入場無料
〇会場:渋谷PARCO8階「ほぼ日曜日」
〇公式:https://www.1101.com/hobonichiyobi/exhibition/5633.html

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