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渋谷でAIファッションショー開催 過去のファッションデザイン約1万点を学習

AIがデザインしたファッションショー「SHIBUYA RUNWAY(シブヤランウェイ)」が3月19日、渋谷ヒカリエ9階ヒカリエホールで開催された。

「渋谷ファッションウイーク(SFW)2023春」(3月11日〜31日)のメインイベントとして開催された同企画。2014年3月にスタートしたSFWは春と秋の年2回開催され、今春で19回目を迎える。これまでメインイベント「シブヤランウェイ」は、渋谷のストリートや神社境内、再開発中の工事現場、渋谷スクランブル交差点などで実施するなど、「渋谷らしさ」を発信する新たなチャレンジをし続けている。

今春のシブヤランウェイでは、創立100周年を迎える「文化服装学院」とコラボレーションし、過去100年間の「日本のファッションシーン」を紐解き、その情報を基に「AIで再解釈された新たなデザインを生み出し、ファッションショーを行う」というユニークな取り組みが行われた。言うまでもないが、文化服装学院といえば、コシノジュンコや高田賢三、山本耀司、金子功、高橋盾、丸山敬太など、日本を代表するファッションデザイナーを多数輩出してきた学校として知られる。いわば、「日本のファッションの歴史=文化服装学院」と言っても過言ではないだろう。

▲左=実行委員長・大西賢治さん 右=ファッションディレクター・山口壮大さん

同企画・制作を手がけたのは、文化服装学院出身でファッションディレクターとして活躍する山口壮太さんが主宰する、文化服装服装学院の学生有志によるゼミ「CULTURAL LAB.」。創立100周年の節目に、偉大な先輩らが生み出してきたファッションデザインやブランド、コンセプトなどの歴史を振り返り、現在の学生たちが「そのデータを基にAIで再解釈し新たなアウトプットで表現する」という極めてアカデミックな挑戦だ。

では、AIを活用したファッションデザインは一体どのように生み出されたのだろうか?

その手順について、山口さんは「オープンソースである画像生成AI「Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)」をファインチューニングし、今まで日本のファッションデザイナーがアウトプットしたファッションスタイルなど約1万点を追加学習させ、ファッションに特化したシステムを作り上げるところから始めた」と話す。年代、デザイナー、デザインの特徴など、入力した言語からAIが自動でデザインを生成していく。そのアプローチを学生たちと繰り返しながら、徐々に解像度を高めていった。最終的に視覚表現や、ファッションショーの演出として違和感のないチュー二ングを施し、約3カ月間の制作期間を経て、計28点の新しい衣装が完成したという。

AIがアウトプットした新しい衣装とはどんなものだろうか? 28点の作品の中からいくつかピックアップして見てみよう。
渋谷のギャル風、女子高生のセーラ―服風など、「渋谷カルチャ―」をイメージさせるデザインのほか、著名なファションデザイナーのテイストを彷彿させるデザインも見られた。
どこか懐かしいような、それでいて斬新で新しいような、そんな新しさと古さが共存するデザインこそが、AIの特徴といえるかもしれない。

今回のショーでは衣装ばかりでなく、会場内の空間演出にもこだわった。ヒカリエホール内にランウェイを行う小高いステージと、その背景に白いクロス(約6メートル×12メートル×2面)を上部から吊った大型のスクリーンを設置。
衣装やモデルたちのウォークの歩調、音響に合わせて大型スクリーンに映像を投影し、日本のファッション史を俯瞰するにふさわしい迫力ある空間を演出した。

▲1万点のデータを学習し、AIが生み出すファッションデザインの数々。

デザインの世界におけるAIの存在感は日に日に増している。短時間でアイデアを量産するなど、ある部分では既に人間の能力をはるかに超えているに違いない。データを基に最適解を導く能力に長けているAIは、ある意味、論理的で知性的である。一方で人間は感性的で情緒に影響されやすいと言えるだろう。互いにないものを補完し合える関係が築ければ、人間とAIとの協働も成り立つのではないだろうか。今回のAIと学生の協働によるファッションショーを見ていて、そんなポジティブな未来を垣間見ることができた。

▲ショーの最後に、AIが生成した「未来の渋谷の姿」も映し出された。

ショーに登場したAIデザインの衣装は3月21日~27日まで、西武渋谷店 B館1階で展示。アーカイブ動画は3月31日から公式YouTubeチャンネルで配信を予定する。

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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