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★ひらのりょう監督『パラダイス』★

今年のイメージフォーラムフェスティバル2014で審査員をしましたが、アニメーション作家のひらのりょう監督『パラダイス』がコンペ部門に入っておりま した。私はすごい並々ならぬ才能だと思って一人で彼を押しましたが、ホセ・ルイス・ゲリン監督と朝日の小原さんはイマイチとのことでした。笑
賞は逃しましたが素晴らしい作品と世界観です。

宇宙葬儀ステーションで、鼻を切断された熊と葬儀屋でバイトをする黄色い帽子をかぶる男が出逢う。
猿人、戦地の兵士、歯の着ぐるみを着た人物(女性)、そして、陰毛、電波、歯などが呪物のように飛び交い、肉体を消失し、過去や未来や記憶が埋没し、そして浮かび上がります。。。

震災における身元不明者の特定をする歯の報道、カブールでアルカイダによって鼻を切断された熊たちのエピソード、アイヌのイオマンテ儀式、カムイ・ホプニ レ、ユーコン川領域のアタバスカン族の熊との婚姻物語、異種婚姻譚、戦地の弾除けの御守りとしての恋人の淫毛、第二次世界大戦の歴史を土地の記憶に含む南 国のリゾート地、、、それらがi-phone紛失という最も現代人の等身大の呪物の欠如のエッセンスが入り、逃亡者、恋の始まりや失恋の破綻などを通して 過去の絶望と未来に開かれた希望とが作者自身の飾り気ない言葉(感覚)によって表現されます。

昨夜まで渋谷のアップリンクにて『ひらのりょうまんがまつり』開催しておりました。昨夜はライブ音付きのオリジナル新作紙芝居2本付き。こちらの作品も素晴らしい出来でした。 『パラダイス』はブック付きのDVDが発売されております。DVDではひらの監督自身の両親のコメンタリーも上映とともに付録として入っており、監督の肉 体性やDND的固有性も見られます。愛情に溢れ、両親の芸術的な温かい不理解は大変おかしく、そこにはひらの自身の「不在」と周囲の愛情の「存在」という 一見相反する二つが同時に「共存」しています。。
愛情とはその対象物が損失しているときにこそ、最も輝くものであるという証明がそこでは見ることができます。 大学の卒展?の『河童の腕』や『ホリディ』も秀作。
自身を投影したい系のモノや超越した存在、フォクロア的にも日常庶民的にも描く内容です。

http://www.uplink.co.jp/movie/2014/33646
http://ryohirano.com/

ヴィヴィアン佐藤(非建築家)

非建築家、アーティスト、ドラァククイーン、イラストレーター、文筆家、パーティイスト、、、と様々な顔を持つ。独自の哲学と美意識で東京を乗りこなす。その分裂的・断片的言動は東京では整合性を獲得している。。。なんちゃって。

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