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独断と偏見で「2015年の渋谷」を振り返る

明けましておめでとうございます。 本年も渋谷文化プロジェクトをよろしくお願い申し上げます。

毎年恒例となりましたが、昨年(2015年)の渋谷の大きなニュースをランキング形式で振り返ってみたいと思います。なお、ランキングの順位は、独断と偏見で決めたものですので、やや偏りや違和を感じる人もきっと多いかもしれませんが、ご容赦ください。

<独断と偏見で選ぶ!2015年、渋谷ニュースランキング>
1位:若きニューリーダー長谷部区長の誕生−渋谷がどう変わるのか!?
2位:駅周辺に続き、公園通り一帯の建て替え計画が発表
3位:全国で初めて「同性パートナーシップ条例」の成立
4位:駅再開発、230メートルの超高層ビル屋上に展望施設
5位:公園通りに「渋谷モディ」開業&HMVの復活
6位:渋谷に溢れるハロウィン仮装の人びと−清掃ボランティアも出動
7位:渋谷のラジオ開局−野宮真貴さんら豪華パーソナリティ発表
8位:東急プラザ渋谷、49年の歴史に幕−建て替え工事始まる
9位:ミニシアターブームの火付け役、「シネマライズ」閉館
10位:東急東横線の線路跡地に商業施設「ログロード代官山」開業

1位:若きニューリーダー長谷部区長の誕生−渋谷がどう変わるのか!?
昨年4月の渋谷区長選で、無所属立候補ながら初当選を果たした長谷部健さん。元広告マンというクリエイティブなセンスに加え、体力とやる気がみなぎる43歳の若きニューリーダーの誕生を歓迎する声が目立っている。「100年に一度」といわれる大規模開発が進む渋谷駅周辺や、2020年の東京オリンピックの開催など、渋谷が大きな転機を迎える中で、新区長である長谷部さんの真価と力量が大いに試されるところだ。2年目を迎え、長谷部区長のカラーが出始める今春以降、渋谷区がどう変わっていくのか目が離せない。

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長谷部健区長インタビュー(2015/09/28)

2位:駅周辺に続き、公園通り一帯の建て替え計画が発表
新しいパルコの完成予定イメージ

2位は「駅周辺に続き、公園通り一帯の各施設の建て替え計画が発表」。渋谷駅周辺の大規模開発に注目が集まる一方、かつてパルコや丸井を中心とする若者のトレンド発信地であった「公園通り」の衰退が懸念されている。こうした中で、渋谷パルコ PART1(1973年開業)、PART3(1981年開業)の建て替えを含む「宇田川町 15 地区開発計画」が発表。来春(2017年)3月から東京オリンピック開催を控えた2019年9月までの工事期間を経て、高さ約110メートル、地上20階建ての複合商業施設の開業が予定。物販や飲食のほか、劇場、クリエーター育成施設、事務所などを含む同施設は、ファッションやアートなど、80年代に隆盛を誇った「公園通りカルチャー」の復活のトリガーとして期待される。
左)2階エントランス前より渋谷区新庁舎を見上げる(イメージ) 右)公園通りより新渋谷公会堂を見る(イメージ)

さらに1964年(昭和39)年に建設された渋谷区総合庁舎と、渋谷公会堂の両施設の建て替えも発表。すでに昨秋(10月9日)から旧東京都児童会館跡地、渋谷区立美竹公園の一部に建てられた仮設庁舎へ移転し、建て替えに向けた準備が整う。そのほか、2020年の東京オリンピック後の着工を目指し、NHK新放送センターの建設も予定されており、駅周辺の再開発と共に「公園通り」を代表するランドマークが次々に生まれ変わる。

3位:全国で初めて「同性パートナーシップ条例」の成立
左)2015年10月に渋谷区旧庁舎で開催されたアートイベント「シブヤのたまご」。LGBTの象徴である6色のレインボーカラーで、旧庁舎の窓ガラスがペイントされた。右)11月5日、「パートナーシップ証明書」の初交付を受けた女性カップル。

長谷部区長らを中心に条例の可決に漕ぎ着けたのが、3位「全国で初めて『同性パートナーシップ条例』の成立」。昨年11月5日、同性カップルに男女の婚姻関係に相当する関係を認める「パートナーシップ証明書」の交付を開始。それに同調する形で、他の自治体でも証明書発行を検討する声が出始めているなど、渋谷から国内外に向けて刺激を与えるニュースとなった。「ダイバーシティの推進」を掲げる渋谷では今後、LGBTに限らず、性別や人種、障がい等を超えた施策の具現化に期待が寄せられる。世界の先進国から見れば、日本のダイバーシティの取り組みは遅れているが、東京オリンピックの開催に向けて、渋谷がダイバーシティをリードする街として、揺るぎないポジションの確立を目指してほしい。

5位:公園通りに「渋谷モディ」開業&HMVの復活
「マルイシティ」から業態変換し、2015年11月オープンした「渋谷モディ」。

「公園通り一帯の建て替え計画」に続き、5位にも「公園通りに『渋谷モディ』開業&HMVの復活」がランクイン。パルコなどの建て替えに先立ち、昨秋(11月19日)に「マルイシティ渋谷」が新しい商業施設「渋谷モディ」に業態転換し、大きな話題を集めた。またモディの壁面に新設された500インチの大型ビジョンは、渋谷駅前のQ-frontにも匹敵し、公園通りの麓(ふもと)の新たな顔として確かな存在感を示す。
中でも注目は、5〜7階フロアにオープンした「HMV&BOOKS TOKYO」だ。ピチカートファイヴやフリッパーズギターなど、90年代の音楽シーンをけん引した「渋谷系(サウンド)」、そのブームの火付け役となったCDショップとして知られたのが「HMV渋谷店」である。CDからダンロードへと音楽市場が激変する中で、2010年に惜しまれつつ閉店した同店であるが、5年ぶりに渋谷の地に帰ってきた。従来のCDやDVDに加え、雑貨やイベントを展開するスペースが加わるなど、複合的なエンタメショップとしてパワーアップしている点は見逃せない。昨今、音楽市場は定額制に押され気味であるが、はす向かいに店舗を構えるタワレコと共に、「リアル店舗」ならではの出合いや魅力をどこまで提案できるか、それが大きな課題となりそうだ。

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未来型書店HMV&BOOKS TOKYO その1.〜複合エンタメショップの誕生(2015/12/23)
未来型書店HMV&BOOKS TOKYO その2.〜店長インタビュー(2015/12/25)

4位:駅再開発、230メートルの超高層ビル屋上に展望施設
10位:東急東横線の線路跡地に商業施設「ログロード代官山」開業
地上230メートルからスクランブル交差点を見下ろせる展望施設。

渋谷駅の大規模開発は、2020年の東京オリンピックの開催決定の有無にかかわらず、計画が進んでいた。ところがオリンピックの開催決定に伴い、工期の短縮化や新しい観光資源となる目玉を検討する動きが出始めている。その一つが、4位「230メートルの超高層ビル屋上に展望施設」だ。渋谷ヒカリエの向かいに高さ230メートル、地上43階建ての東棟の建設が予定されているが、オリンピックによる訪日外国人などの観光客の増加が見込める中で、新しい観光コンテンツの一つとして、その最上部に展望施設の追加が決まった。新宿の高層ビル群や富士山など、渋谷随一の高さ(地上約230メートル)からの眺望は言うまでもないが、その眼下には「スクランブル交差点」を見下ろすこともでき、渋谷の新しい観光名所として注目を集めそうだ。
上)新宮下公園イメージ 左下)多目的広場イメージ(南側・渋谷方面) 右下)運動施設イメージ(北側・原宿方面)

オリンピックを控え、渋谷区立宮下公園の整備も予定。今のところの案では、3階建ての商業施設の屋上にスポーツを楽しむことが出来る公園(バスケやフットサールコート、クライミングウオールなど)が設置され、その公園に隣接して17階建てのホテルの開業も計画されている。かつて1964年の東京オリンピックは、高速道路や国道246号線、渋谷川の暗渠、下水道整備によるトイレの水洗化などのインフラ整備に一役買ったが、今回も同じく2020年のオリンピックに向け、渋谷の街が大きく変わりそうだ。

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東京五輪を控え、渋谷に地上230mの大型屋外展望施設が完成(2015/12/17)

東横線の線路跡を利用した商業施設(代官山から渋谷方面の風景)。中央の長い煙突は渋谷清掃工場。

そのほか、開発関連では昨春(4月17日)、代官山の新名所となる新商業施設「LOG ROAD DAIKANYAMA(ログロード代官山)」がオープン。東横線の地下化に伴い、代官山駅近くの旧渋谷第一踏切から渋谷方面に向かって、全長220メートルの細長い線路跡地を開発したもの。クラフトビールを提供するブリュワリーやカフェ、米ロサンゼルス発のセレクトショップ「フレッド・シーガル」など、5棟の低層の商業施設で構成。緑の多い敷地内は都会とは思えぬ、ゆとりと贅沢さを感じる場所となっている。今後、駅周辺の再開発と共に、東横線の線路や高架線跡地の活用計画も気になるところだ。

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新商業施設「ログロード代官山」開業− 代官山産のクラフトビールを飲もう!(2015/04/16
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「代官山ログロード」プロデューサー・柴田陽子さんインタビュー(2015/05/18)

8位:東急プラザ渋谷、49年の歴史に幕−建て替え工事始まる
9位:ミニシアターブームの火付け役、「シネマライズ」閉館

左)東急プラザ 閉店以前の姿 右)取り壊し工事(2015年12月撮影)

建て替えやニューオープンというニュースの影で、惜しまれつつ長い歴史に終止符を打った商業施設やお店も少なくありません。昨春(3月22日)、約半世紀の歴史に幕を閉じたのは「東急プラザ渋谷」。渋谷駅西口、中央街の入り口のシンボルとして知られる同施設は、渋谷という土地ながら地下1階に八百屋や魚屋、肉屋、豆腐屋など、庶民的なお店が軒を連ねる丸鮮渋谷市場が広がり、高い人気を博していた。閉店に伴い、毎日の買い物に困っているという人もきっと多いことだろう。跡地には2018年度、高さ約120mのビルが建つ予定。1階部分には空港リムジンバスの発着場を含むバスターミナルが設けられるなど、「都市型観光の拠点」としてのカラーを打ち出していくそうだ。
そのほか、約30年営業を続けてきた老舗のミニシアター「シネマライズ」も、今年1月7日で営業を終了することが決定している。「アメリ」や「トレインスポッティング」「ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ」など、同映画館の上映をきっかけに大ヒットした映画は数知れない。ミニシアターブームの火付け役として、確固たる地位を築き上げてきたシネマライズの消滅に驚いた人もきっと多いに違いない。かつて公園通りにあった「ジァンジァン」が閉館したときと同じく、一時代の終焉を感じる大きなニュースといえるだろう。

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フーチャーシブヤ特集:渋谷駅道玄坂街区(2014/02)
さよなら 東急プラザ渋谷(写真アーカイブ)


6位:渋谷に溢れるハロウィン仮装の人びと−清掃ボランティアも出動開発関連のニュースが目立った一方、渋谷の若者文化として見逃せないのは6位「センター街に溢れるハロウィン仮装の人びと−翌朝に清掃ボランティアも出動」。一昨年、ハロウィン翌日にセンター街を中心に、散乱するペットボトルや衣装の残がいなどのゴミが大きな問題とされた。昨年のハロウィンではゴミ対策として、センター街に「ゴミ箱」や「ゴミ集積場」を臨時で設置するなど、行政や商店街が若者たちの仮装に対して「寛容な態度」を示していた点が印象的であった。さらに翌朝には、仮装をしながら清掃ボランティアに参加する若者たちの姿も多く見られ、賛否はあるものの、新しいイベント(お祭り)と街との共存が進みつつあることがうかがえる。今後、渋谷の街とハロウィンがどう共生していくのか、興味が尽きない。

<関連記事>
渋谷のハロウィン2015、五郎丸など世相系の仮装も(2015/11/01)
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7位:渋谷のラジオ開局−野宮真貴さんら豪華パーソナリティ発表
中央は寄藤文平さんによる「渋谷のラジオ」のロゴ、左は渋谷道玄坂商店街振興組合 理事長・大西賢治さん、右はクリエイティブディレクター箭内道彦さん。

今春の一番の楽しみといえば、クリエーティブディレクター箭内道彦さんらを中心に開局するコミュニティーFM局「渋谷のラジオ」。かつて渋谷には「SHIBUYA-FM」があったが経営上の理由から、2013年1月11日の放送で休止。以来、渋谷の街からコミュニティーFM局が消えていたが、今春からラジオ局が帰ってくる。同ラジオ番組のパーソナリティには、音楽家・谷村新司さんをはじめ、90年代渋谷系アーティストの野宮真貴さんやホフディラン・小宮山雄飛さん、画家・奈良美智さん、HKT48・指原莉乃さんらが名乗りを挙げるなど、ローカル局とは思えぬ、豪華なメンバーがそろう。昨今、ラジオは電波のほかネット放送でも聞ける時代を迎え、やり方次第ではキー局にも匹敵する可能性を秘める。しばらく開発が続く渋谷の街を盛り上げる、新しい文化発信基地として大いに期待したい。

2015年(平成27年)の渋谷のニュースを振り返ってきました。駅周辺の再開発に続き、パルコ、渋谷区総合庁舎など、公園通り一帯の建て替え計画も発表。2020年の東京オリンピックまでに見慣れた渋谷の風景は、大きく様変わりするだろう。2016年〜2020年までの期間、渋谷の街は建設ラッシュで沸き立ち、少々騒がしくなるだろうが、それも街の活気としてポジティブに受け止めたい。100年に一度と言われる「渋谷の大改造」の瞬間に立ち会い、徐々に変貌を遂げていく街の姿が見られるのは、今だけの楽しみといえるだろう。

今年一年が渋谷にとって、皆様にとって良い年になりますようにお祈り申し上げます。

<過去の関連記事>
「独断と偏見で「2014年の渋谷」を振り返る」(2015年1月3日)
「独断と偏見で「2011年の渋谷」を振り返る」(2011年12月31日)
「独断と偏見で「2010年の渋谷」を振り返る」(2011年1月7日)
「ゆく渋谷ゼロ年代、くる渋谷10年代」(2009年12月29日)

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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